第二十九話 不当の印象
「まさか、あの白い手でも可能だったとは…」
二つも出した救済の手を駆使して、ようやくアカラスタに触れられた、と思ったら魂のカケラと魔力が手に入った。
それも属性は今まで見た事が無かった種類だった。
てっきり闇属性の魔力を得るものとばっかり思っていたので驚きだ。
もしかしたら、魔力は人によって数種類、存在するのかもしれない。
途中、肉スライムの妨害を受けてしまった為、何度も失敗したけどね。
この肉スライム、意識があると思う。
アカラスタに救済の手が伸びると、私の拘束を維持したまま、白い手に触れてアカラスタの方に向かわないようにしてたからね。
先に肉スライムに使ったから触れたモノを強い力で引っ張るという効果を分かっているだろうし。
何に触れれば出した所へと戻る事も見抜かれたようだし。
脳なんてありそうもないのに学習能力はあったという訳だ。
人一人を拘束して、仲間を危険から遠ざけ、敵の動きを察知して妨害する。
なんだよ、この謎生物。
魔法で作られた人工魔法生物と言われても疑問にも思わないだろうさ。
私は変身能力で手足を拘束されてても道具を出して這いずり回った。
この時、私はフック付きワイヤーを発射して部屋のどこかに引っ掛けてワイヤーを巻き戻すとそっちに移動するような道具を変身能力で体中に出した。
周りはゴミで構成された部屋。
引っ掛けられるモノには困らない。
いくつも移動する前に肉スライムに止められたが、私の目的は注意を分散する事。
移動に失敗しても良いし、それを消して次の機械を出せば良いのだ。
注目が救済の手から離れれば良いのだから。
肉スライムも私の全身を包み込むほどの容量はなかった。
広げ過ぎれば私の力でも拘束を抜け出す事はできた。
脱出できたのは一度っきりで1秒にも満たなかったけどね。
救済の手を一本、囮に使ってもう一本で本命のアカラスタにようやく触れる事ができたのだった。
ハハッ!
私の勝ちだ!
…私はなんで、こんな体を張ったゲームをやっているのだろう?
これ、物理無効が無かったら私、傷だらけだわ。
しかし、アカラスタの様子がおかしい。
救済の手はアカラスタの背中に触れた。
私が転げ回った床へと引っ張られているのに、スリープタッチで夢の中であるアカラスタの頭や手足は天井にぐわんと伸びている。
まるで落とした人形を持ち上げているのを逆さまにしたように見える。
本当に天井に糸や魔法でも使って張り付いていたのだろうか。
私はアカラスタが落ちるだろう位置にマットを用意したが、本当に下に落ちるのだろうか。
私が訝しげに見上げていると、救済の手が出た所へと辿り着いた。
「あ」
そして、アカラスタは…重力に逆らって上へと上がっていった。
ドチャ、ベキ、とも聞こえた生々しい音と共にアカラスタは天井に張り付いた。
その様子は上下逆さまという点を除けばまるで糸が切られた操り人形のようだった。
…頭の辺りから緑色の液体が天井に広がってる?
もしかして、あれって血じゃね?
私の体の自由が戻った。
壁を伝い天井へと移動する肉スライムが見えた。
どうやら、優先順位が敵の拘束から仲間の安否を確認する事に移ったようだ。
…流石に、私を魔眼で殺しに来たとは言え、相手はノイマンの母親だ。
流石に知り合いの母親を殺してしまったとなっては私も思わない所がないでもない。
救済の手をアカラスタの方へと伸ばして触れる。
肉スライムは白い手も気にせず、アカラスタにくっついていた。
再度、床に近付いてくるアカラスタを変身能力を使ってくっついている肉スライムごと柔らかい毛布で身動きが取れない程度に拘束してマットに括り付ける。
露出している部分に魔眼の刺青は見当たらない。
少しは安全だろう。
…どうやら、重りが有れば天井には向かわないようだ。
緑色の血液がどんどん流れる。
頭と口から。
もしかしたら内臓に骨でも刺さったのかも。
タッチ系をスリープからヒールに変えるとアカラスタが呻き声を上げた。
痛みで意識が覚醒しつつあるようだ。
私はアカラスタの髪のない頭部をペタリと触れる。
肉スライムが毛布の隙間から這い出て私の手へと向かってくる。
私はそれを無視してアカラスタに触れ続ける。
《力属性の魔力を入手しました》
ヒールタッチの発動は突然だ。
なんの前兆もなく、機械的な女性の声が頭に響いてアカラスタの傷が塞がっていく。
珍しい力属性の魔力を入手した。
アカラスタは苦しそうに呻いている。
うん、ヒールタッチって発動すると痛いもんね。
《魂のカケラを入手しました》
《無属性の魔力を入手しました》
そして続け様に魂のカケラと魔力を入手した。
なるほど、眠らない肉スライムも癒せば魂のカケラを得られるようだ。
私は手を引くと難なく肉スライムから離れた。
どうやら肉スライムも私を捕まえる意思はないようだ。
『…うぅ。
はっ!
アレはかいぶ…!?』
アカラスタは何かを叫ぼうとしたが私を見ると信じられないと言わんばかりに目の玉が落ちてしまいそうなほど見開いた。
あぁ、本当の目の色はノイマンと緑色なのか。
まぁ、殺そうとした相手が目の前でピンピンしてて自分は拘束されてるのだから、そりゃ驚くか。
「おはようございます。
とても得難い体験をさせてもらいました。
おかげで新たな力を得る事ができました」
魔眼で殺されるなんて前の世界じゃ到底、味わえないからね。
おかげで二つも無効化スキルも手に入ったし。
新しい属性も見つけられたしね。
やられた事はアレだけど、私にはメリットがあったからね。
思いっきりの笑顔でお礼を言った。
言葉が伝わらないせいか、アカラスタの顔が強張っていく。
うーん、笑顔が足りなかったかな?
『私を…私達をどうするつもりだ、怪物。
あの時と…あれらと同じように…皆殺しにするつもりか?」
うん、その印象はおかしい。
いや、皆殺しって何をどういう考え方をすればその答えに辿りつくのか。
自慢じゃないが、私は前世を含めて人を殺した事なんて一度もないぞ?
『しかし、それも無意味だ。
マール、未来が変わった。
襲来日は…十日後に早まった。
もう、終わりだ。
私達も、お前もだ!
はは、ははは』
アカラスタは元気がなく笑う。
その言葉を聞くな否や、肉スライムはブルリと震えて床に落ちた。
そのまま、溶けたように消えていった。
アカリ
Lv3(388/400)
HP80/80
【ヒールタッチ】《選択中》
【スリープタッチ】
【救済の手】
【物理無効】(1/10000)
【無属性耐性】(298/1000)
【火属性耐性】(42/1000)
【水属性耐性】(24/1000)
【風属性弱点】(26/100)
【雷属性弱点】(1/100)
【土属性弱点】(53/100)
【光属性耐性】(90/1000)
【闇属性無効】(1/10000)
【力属性弱点】(2/100)
【状態異常無効】(1/10000)




