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私は彼女に恋をした  作者: まどるか
9/30

◆5月 撮影旅行.お土産

朱音 好きな季節 冬

月葉       冬

 随分と、空に雲が多くなった。

 昼を食べ終えて、そのあと、私と月葉が次に来たのはお土産屋さん。

 一泊のこの旅行なら一日目になにか買っても、消費期限とかの問題はあまりない。

 それに、お土産屋さんで自分用を買うのもありだ。


「月葉は何を買いたいんですか?」

「家へのお土産だよ。お父さんとお母さんでしょ。お姉ちゃんにもだし、それに八尋にも」

「たくさん買わないと、ですね」


 楽しそうにお土産を選ぶのは、私には少しわからない。

 土産選びは億劫だと思うこともある。


「どれがいいかなぁー。やっぱり食べ物?」


 でも、今日は月葉と一緒。過ぎる時間の全てが楽しい。

 さて、私も買ってしまおうかな。


「えーと……」


 店内を見渡すと、アクセサリーやこの場所限定のお土産のお菓子とか、ここに行ってきたよという報告にぴったりなお土産が陳列されている。 


「いろいろな物があるんだねー」

「ですねー」

「特にお菓子!」


 月葉は新しいものを見る小さな子供のように目を光らせている。

 いや、実際そうなのか。

 見ていて気になったものを、手に取ってみようか。

 梅干しサイズの置物が1000円もする。お土産屋さんは少々お高い。

 これは、手拭いかな?

 薄い緑をベースにして、青い花が描かれている。小さく折り畳んであるから、全体は掴めない。

 それでも、とても気に入った。

 月葉にも見せてみよう。

 後ろでお菓子を見ていた月葉の横に並び、月葉の顔を覗く。そうすると、月葉がなにか悩んでいるということに気がついた。


「どうしたんですか?」


 ぽんと、月葉の肩に手をのせて、私は尋ねてみる。

 ちょっとだけ驚いた様子で、月葉は身を震わせるが、月葉は私に気づくと、すぐに口を開いた。


「どっちを買おうかな~、って悩んでたの。こっちの抹茶クッキーか、それかこっちのチョコレートお菓子かで迷ってて」


 家族のお土産か。どちらも月葉の好むものだから選んだのだろう。家へのお土産なら、月葉自身も食べられるし。


「うーん。どっちがいいかな……。朱音はどっちがいいと思う?」

「私……ですか?」

「うん」


 どっちがいいといわれても困る。

 私に聞かれても……という点でもそうなんだけど、私的には、どちらも好きなものだし、お土産にする上で障害があるものでもないから。

 強いて言えばチョコは溶けるかもといった辺りだけど、冷やせば問題はないだろう。

 でも、月葉の家でということを考慮すると‥‥‥


「うーん、チョコの方が良いのではないですか? 抹茶苦手な人っていませんでしたっけ?」

「そうだっけ?」

「ほら、たしか月葉の弟が……」

「え? 八尋って抹茶だめだっけ? なら、チョコ一択だね」


 そう言って、月葉はチョコのお菓子の方を手にとった。


「ありがとうね。……朱音はなにか悩んでいないかい? 私でよければ相談にのりますよ?」


 月葉は少しおどけた調子でそう言う。


「なら、相談ではありませんが、私の気に入った物を見てもらいたいです」


 私は月葉に、買おうと思って持っていた手拭いを見せた。

 きっと、月葉はいいねと言ってくれる。私と月葉の趣向は似ているから。

 やはり、私は予想と大差ない反応を受け取り、私は笑って言葉を返し、月葉もいい笑顔を私にくれた。

 嫌なぎこちなさはすっかりどこかへ去っていき、私たちは、二人のいつもを取り戻した。


 でも、私の望みはそんないつも通りじゃない。

 月葉と過ごす時間は、私が大好きな時間だから、余計に躊躇ってしまう。

 前に進むにはあまりにも、私の勇気が足りなさすぎる。

お土産選びはいつも悩んでしまいます

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