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帰国チケット手配

 俺はSun社の中にいるが、場所に居させてもらっているだけだ。

 すなわち、Sun社と仕事をするわけじゃなく、日本の開発をするだけという奇妙の環境だ。

 Javaのことについて質問することはできるが、開発は一人で黙々を実施するため非常に効率がいい。


 ここの環境で電話がかかってきたことは二度しかないが、必ず俺宛なので楽だ。

 問題は俺は電話がかかってきた瞬間に受話器を取るというのが体に染み付いてしまっているので、相手は電話がまだ繋がっていないと思っているのに、俺の声がするので驚くことになる。


 電話を瞬時に取るという特技が身についてしまったのには理由がある。

 日本では、部署にかかってきた電話は必ず2コール以内で取る必要がある。

 電話が鳴る。位置を確認して在席していなければ自席の受話器を取る。

 この作業を2コール以内で行う。

 グループピックアップが設定されているので、部署内は自分の席の電話で取れるからできる芸当だ。

 で、電話の相手がいないから、伝言を記録するが、理不尽にも怒る相手もいる…


 俺は開発に集中できる環境で開発ができた。

 残りは過負荷試験の準備だけだ。

 MondexがICカード同士の通信で、ダミーを作れないから実際にICカード同士の環境で過負荷試験が必要だ。

 日本と協議した結果、金庫を繋いだサーバー VS 金庫を繋いだサーバーで行うことになった。

 すなわち、2台の金庫が必要ということだが、ここには1台しかない。

 そう! 日本で行う必要があるから、日本に出張だ!


 俺は、愛さんに連絡して航空チケットを取ってもらうために、沖芝Americaに行った。


「愛さん、航空チケットを取ってくれませんか?」

「わかりました。そうね。お土産は植物物語の石鹸でいいわ。植物物語の石鹸はヤオハンで売っていないのよ」

 お土産を指定されたことはあるが、石鹸は初めてだ。


「…」

「こっちの石鹸は合わないのよねぇ。個数はできるだけ多くね。代金は支払うわ」

 愛さんにはお世話になっているから、できるだけ買ってくるか。


「お土産ですから、代金はいらないですよ。そういえば、俺もホテルのシャンプーで髪がゴワゴワになったから、日本からシャンプーを持ってきてたのですけど、なくなったからこっちのシャンプーを買ったんです。使ったら、シャンプーの香料がきつくてむせるし、マジックリンが入っているのか?と思うぐらい髪の毛の油分がなくなりました」

「ふっ! マジックリンというのは言い過ぎかもしれないけど、匂いがきついのも多いわね。あっ、もしかして、Weeklyを買ったんじゃない?」


「Weekly? 週に一度?」

「週に一度のケアで高洗浄力ということらしいけど、こっちの人はあまりシャワーを浴びないのよ。リアルに週に一度ということもあるみたい」


「それって、本当ですか!?」


「本当よ。その証拠にDailyと書いてあるシャンプーはほぼないわよ。あっ、チケットは3日後には届くと思うから、ここに来てね」

「よろしくお願いします」


 俺はマジックリン入りシャンプーは使えないから、Dailyのシャンプーを探しにCVS Pharmacyに行った。

 シャンプー売り場にはかなりの種類のシャンプーがある…

 PANTENEとか知っているものがある。

 だが、ピカピカのスキンヘッドで白い太い眉で左耳にイヤリングで白Tシャツで腕を組んだキャラクターが描いているシャンプーがある。

 そういえば、このおっさん洗濯洗剤でもいたなぁ。

 有名メイカーかもしれないけど、スキンヘッドのおっさんのシャンプーって買う人がいるのか? ハゲそうじゃん。

 だから、ハゲおっさんシャンプーはパス。


 俺はシャンプーを手に取っては裏のラベルを見る。

 確かに愛さんが言うようにDailyがない。


『何かお探しですか?』と店員に話しかけられた。

 ラベルを凝視している外人が不審だったのかな?

『Dailyのシャンプーを探しています』


『Dailyはないです』

『えっと、髪に優しいのはどれですか?』


『そうですね… これは私が使っています。髪に優しいですよ』

 店員が指し示したのは俺が使っているマジックリン入りシャンプーだった。

 がっかりだ。

『ありがとう』

 あのシャンプーだったら、ボディーソープを使った方がマシと思い、買わずに帰った。


 3日後、チケットを取りに愛さんのところに行って、この話をした。


「店員が話しかけることなんてないわよ」

「そうなのですか? スーパーの店員や、テイアウトする時にもよく話しかけられますよ」


「え? ほんと? だって、お金にならないから話しかけないでしょ?」

「確かにスーパーの店員やテイクアウトする人にチップを渡さないですね」


「それって、女性?」

「そうですね…」


 愛さんが俺の顔を見る。

「もしかして、長谷川さんってモテる?」

 モテる?って聞くってことは『モテないと思えるのにおかしいなぁ』と言っているのと同じだから!

 自分では普通だと思うけど、「モテないですよ…」と答えた。

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