機内
頭が重い…
クラクラする…。 ここはどこだ?
隣には5歳ぐらいの女の子が座っている、その隣は女の子のお母さんのようだ。
可愛いな。ま、俺の子の方が数万倍可愛いけどね。
「もう直ぐ着くよね」
「あと、30分ぐらいね」
「パパは迎えにきてくれているよね?」
「ええ。空港で待ってくれているはずよ」
親子の会話を聞きながら、ここがどこかを確認する。
窓は楕円… 俺は通路側の席だから風景はあまり見えない。
俺はジャケット着ていて、内ポケットに違和感がある。
取り出すと、パスポートと搭乗券と白い紙があった。
パスポートを開くと、長谷川 健一と書かれていた。
顔写真は… 俺だよな。
VISA… 就労VISAだな。だから、緑じゃなくて、I-94の白の紙か…
あれ? 入出国カードがデジタルじゃなくて、紙?
搭乗券を見ると、成田発でサンフランシスコ着だった。
搭乗券には1996年と記載されている。
1996年?
国際線の飛行機だなと思った瞬間、飛行機がガクっと揺れて、足に何かが当たった。
足に当たったのはバッグだった。
手を伸ばして持ち上げようとすると、想像の倍は重い! 鉄アレイが入っているのか?と思うぐらいだ。
バッグにはIBMのロゴの刺繍が入っている。
IBMの純正? 俺の荷物だな…
カバンのジッパーを開けると、中身は黒い3cmほどの厚みがあるA4サイズの物体だった。
取り出すと、IBMとロゴが付いている。
ノートパソコンだよな?
ノートパソコンを開けると、キーボードの奥が5mmほど浮き上がった。
熱を逃すための機構?
思い出した!
最新で、最高級の思いっきり贅沢なものを要求したら、アメリカに行かなくて済むと思って上司に交渉したんだった。
「アメリカでプログラムを組むのに、まともなPCがないと無理です」
「どれが必要だ?」
「そうですねぇ。ThinkPad 760XDにメモリを足して、64MBにしたものが必要です」
「いくらだ?」
「だいたい本体70万で増設メモリが30万ですね」
「…承認するから、稟議を書け」
こんな贅沢な機体を承認するのか!?と思ったが、稟議はすんなり通った。
俺はノートPCをじっくり見る。MMX Pentium… CD-ROM… それにイーサコネクタにしては小さい… 電話コネクタか!? RS-232C…って、シリアルポート!? それにPCカードスロット…
最高級?で、最新?だよな…
俺がノートPCの周りを確認しているのを隣に座っている女の子がジッと見てる。
変な人って思われたかな…
キーを押したが、スリープを解除しない…
電源が落ちている?
俺は、ノートPCの電源を入れる。
Windows95と表示されるのを見て、不思議な気がした。
ログインすると、直ぐにバッテリーの残量が低下のアラートが出るので、シャットダウンする。
そう言えば、2時間もバッテリーが持たなかったな…
俺がPCをバッグに戻していると、見回りをしていたスチュワーデスに『もうすぐランディングです。バッグはコンパートメントか足元に置いてください』と言われたので、俺は足元にバッグを置いた。
機内には、現在の高度、カリフォルニアの気象情報がアナウンスされる。
快晴か… ま、年がら年中、快晴だからな…
俺は以前に一度、カリフォルニアに来たことがあったが、どうして、年がら年中快晴と思ったんだろう?と考えているうちに、飛行機は着陸した。
親子は優先で先に出れるらしい。
俺は、隣の親子のバッグをコンパートメントからおろすのを手伝う。
女の子は俺に小さく手を振って、降りていった。
翔は小さいし、通院もあるから仕方がないな。




