エバンズ伯爵家へ
読んでいただきありがとうございます。
少し長くなりすみません。
私とイオは次の日の朝早くにバーンズ公爵家を出発し、馬車で2日かけてエバンズ伯爵家へたどり着いた。
「お父様、お母様ただいま戻りました~」
玄関オールで大きな声で帰宅を告げる。
「リノア!もうあなたという子は~」
お母様がプリプリと怒りながら飛び出してきたが、隣のイオに気がついて固まる。
「エバンズ伯爵夫人。
お眼にかかれて光栄です。
私 ルアナ王国、バーンズ公爵家が長子イオと申します。
この度は急な訪問となりましたこと恐れ入ります」
イオは丁寧に礼をする。
いつみてもイオの礼は無駄がなく美しいなぁ。
イオに見とれていると母に応接に案内された。
「バーンズ公爵令息、ご挨拶が遅れました。リノアの母マチルダでございます。主人も直ぐに参りますのでまずはこちらに」
「夫人。バーンズ公爵からの心ばかりの手見上げがあるのですが、どちらに運べばよろしいでしょうか?」
手見上げ!馬車一台分もあるあの贈り物……。
グレースお母様は一晩のうちにもの凄い量の果物から高価な工芸品までいろんなものを馬車に詰め込んでいた。考えてみればお返しはどうしたらいいのかしら……と心配になる。
「お気遣いありがとうございます」
「テオ。いただいたものを運んで頂戴」
母はついてきたテオに指示を出す。
応接室に着くと既にノア兄さまとお父様が待っておりイオを歓迎した。
「遠くまでおいでいただきありがとうございます。エバンス伯爵家当主ロバートと申します。こちらは嫡男のノアです。
バーンズ公爵令息、この度は我が家の娘が大変お世話になり、なんとお礼をお申し上げればよいか」
「エバンズ伯爵並びにエバンズ伯爵令息。お会いすることが出来て嬉しいです。お二人のことはリノアから話を伺い、早くお会いしたいと思っておりました私はバーンズ公爵家が長子、イオと申します」
「イオ様はリノアの事情を既にご承知の様ですね……。」
「はい」
イオが深くうなずく。
「ミラ。マチルダと私の執務室にある書類を持ってきてくれないか」
お父様がミラに目配せする。
「はい。畏まりました、奥様行きましょう」
「ええ。ミラだけで取りに行けるでしょ、私はイオ様とお話がしたいのよ」
「奥様、私一人で執務室に入るのは困りますからお願いします」
「もーしょうがないわね」
ぶつぶつ言いながら、お母様とミラが部屋を出ていく。
「さて、立たせたままですみません、どうぞお掛け下さい」
お父様とノア兄さまの向かいに私とイオで腰かける。
「時間がありませんので単刀直入にお伺いします。リノアに何が憑いているのか、バーンズ公爵閣下は承知でおられるのですね」
「はい。バーンズ公爵家では、両親と私、信頼のおける使用人と私の従者をしてくれているフロスト伯爵の5人のみですが、リノアを守り抜く覚悟です」
イオはお父様から眼をそらさない。
少しの間、沈黙がありお父様は頷いた。
「イオ様の熱意、受け取りました。エバンス伯爵家では、私とノア、仕様人でもともとリノアの側に置いていた、ミラとテオの4人のみがドラゴン憑きであることをしっています」
「夫人は知らないのですか?」
「お恥ずかしいことですが、マチルダはしゃべらずにはいられないたちでして……。」
「イオ様、釣書のことはリノアの事情を知ったうえで利を得るための申し出ではありませんよね」
ノア兄さまの顔が怖い。
「ノア兄様」
イオが私の手を握る。
「リノア、家族に愛されているね。ノア様は心配して聞きにくいことをあえて聞いたんだよ」
私の方を向いていたイオが、お兄様に向き直る。
「ノア様。たとえリノアがドラゴン憑きでなかったとしても私はリノアに心を奪われたでしょう。最初は私の目の前に天使が舞い降りて来たと思うほど一瞬で目を奪われました。
銀色に輝く羽と風に揺れ、光の加減で赤紫に変わるあのふわふわの髪。
振りかえりほほ笑んだ紫の瞳に魅了されました。見た目が好きだけではないのです。一緒に過ごす時間の中で、リノアの純粋な心や魔道具への熱意とアイデア、独創性。しっかりしているかと思うと少し抜けたかわいらしいところもあって、何より一緒にいると楽しいのです。この間など……。」
「わ わかりました。イオ様の気持ちは十分に私達に伝わりましたからリノアが意識を失う前に、重要なお話を」
お父様がイオ様の言葉をとめる。
隣の私はイオのとめどなくあふれる言葉に全身が赤くなり、すでに意識を失いかけていた。
褒められることに免疫がない……。
「リノア」
「……。」
「リノア!しっかりしろ」
お父様の声に我に返る。
「はい」
「リノアはイオ様のことをどう思っているんだい?」
私はイオとつないで手をぎゅっと握る。
「お慕いしています」
イオの手にも力が入る。
お父様はやさしい眼差しで私達を見て話し始めた。
「マチルダの所に、コアナ王国の王妃殿下より声がかかった。
リノアが学院を飛び級で卒業したことで、同年代の物との関りが薄くなり孤立するのを心配してと、取ってつけたような名目で……。
第二王子と騎士団長のご子息を会わせるのはどうかと打診された。
騎士団長の息子はリノアには劣るが、魔力が強い事で有名だ。どこまで王家が情報を得ているかわからないが、一介の伯爵令嬢にその二人を会わせると王妃が直々に言ってきているのだ、王宮に取り込むつもりだろう。もともとリノアは魔道具作りの才能でも、目立っていたからなぁ」
「今は、療養のためルアナ王国に行っていると話しているのですが……。リノアが戻ったと知れば会わせろと言って来るでしょう」
ノア兄さまが疲れた様子で肩を落とす。
「マチルダはいい嫁ぎ先が見つかるかもしれないとご機嫌だが、私はイオ様をリノアの正式な婚約者として一緒にその場に立ち会っていただきたいと思ています」
「私達の婚約をお認めいただけるのですね」
「先ほどの熱意も受け取った。そしてリノアが信じた人だ、私達も信じよう」
お父様とイオが立ち上がり固い握手を交わす。
私も立ち上がりお父様に抱き着いた。
「ありがとうお父様」
「ほんとうにお前には驚かされるよ……。ドラゴンの次は婚約者を連れて来た。」
お父様はそう言って私を優しく抱きしめた。
(*^-^*)




