第62話 ご懐妊
四月六日 九時
今日は【D132】三十一層からの攻略になる。
TBと雪を先頭に隊列を組み進む。
ドロップの出現率もそこそこだ。
【リミット解除】を速攻でポイント使ってレベル十まで上げた甲斐が合ったな。
この日は六十階層まで進んでまだ十三時だった。
「颯太今週のダンジョンだが【D86】は日光だぞ、スタンピードはピョンヤンだから手の出しようが無いけどな」
「現れるだけなら六週間は対処に問題ないから【DPD】と【PU】に対応を任せる。北朝鮮はケソンのスタンピードでほぼ壊滅してるし、ピョンヤンもどうしようも出来ないな。こっちで討伐したら向こうのダンジョンは消えるで間違いないよな?」
「それで間違いないはずだ」
「ロシアと北朝鮮とエルサレムは、向こうでは今更協力を要請出来ないだろうから、こちらで勝手に討伐するしかないな」
「解った。今日は時間余ってるしもう少し進むか? 後二十層くらいなら行けそうだぞ」
「そうだな、進もう」
◇◆◇◆
そこから六か月をかけてユーラシア大陸、グレートブリテン島、アフリカ大陸、オーストラリア大陸と順にクリアして行った。
残すは、南北アメリカ大陸と南極大陸のみだ。
ダンジョンをクリアしていった地域に関しては藤吉郎の統治も平行して進み、正式にこの世界を統べる国として【理聖教連邦国】を建国し、これまでの世界にあった国は王族は全て解体され各連邦所属国が民主制で首班を指名し、大阪城において合議制の政治が行われる事となる。
基本の憲法が
①身分による差別を許さぬ事
②人種による差別を許さぬ事
③すべての民に平等に教育を受けさせる事
④やりたい仕事を目指させる事
⑤人身の売買の禁止
⑥身寄りの無い少女は、すべて成人するまで大阪で暮らさせること
以上の六つしか定められていないために、各所属国である程度の自由な法律、統治が認められている。
しかし紛争や揉め事に関しては、藤吉郎が直属の精強な軍を派遣し、先に攻め入った国の軍を解体させる事を徹底しているために、他国では全く揉め事をおこせない状況である。
◇◆◇◆
十月十四日 九時
今日は【D113】千葉ダンジョンの発生予定日である。
既に藤吉郎の世界での討伐がかなり進んできたために、毎週の発生ではなくなってきており、討伐は余裕が出ている。
それに伴い国内だけでは無く、海外でも日本の主導で、防衛都市の設置が進み始めている。
【DG】カードの登録者数も伸び続け、全世界で二十億人の登録がなされ、現在の世界人口の五割を超えている。
そこから産出される魔核の量も莫大な数に上るが、スタンピードで拡がったモンスターの数が、いくら狩っても全く減ってきていない事が、現状で大きな社会問題となっている。
その為に今のこの世界では、討伐者が最も稼げる職業である。
日本では【PU】もしくは【DPD】に所属する以外は、全てが自己責任の大変過酷な職業であるが、それに見合うだけの見返りがある。
レベル百を超える討伐者の年収は二千万円を超え、更に生産技能を高める人物は大きな収入を得る事も出来る。
翔、省吾、萌、桜の四人のパーティは今や民間探索者では国内のトップに君臨する。
この春に高校生活は三年生になり、後半年で卒業だが、就職をする予定も、進学をする予定も無い為、ほぼ毎日を狩りで過ごしている。
「省吾は今後の予定とか考えているのか?」
「色々ありすぎてさ、今はこのレベルだろ。就職はありえないよな? もっと強くなるためには【PU】に所属するのもありなんだろうけど、今更規律の厳しい中でやっていくのは自信が無いしな」
「先にパパたち見ちゃったから、自分が凄く弱く感じちゃうけど、民間探索者でSランクを達成してるのは私たちを含めて世界中で二十名しか居ないからね」
「今のレベルが五百三十でランキングが五万位台だから、【PU】と【DPD】の所属者と世界中の軍と警察組織の所属者があわせて百五十万万人居る中で考えても、決して低くは無いんだけど、取り立てて凄いわけでもないからね」
「なんか中途半端だよな。お金に困る事もないし、不満ではないんだけど何かやり遂げたいよな」
「翔は武器生産のほうはどうなんだ? URは出来たのか?」
「いやまだSRまでだな。URは最低素材に一つはUR素材を使わないと、確率がありえない低さにしかならないからな、それでもSR武器は値段が二千万円以上で取引されちゃうんだよな」
「でもさ、その武器でも父さんの使ってる武器とか見ちゃうと、恥ずかしくてアドバイス貰いに行くのもできねぇよ」
「MRだっけ、神話武器だもんね、前に島長官から聞いたらさ、値段つけたら5兆円超えるとか言ってたよ」
「討伐班は、武器も防具も成長タイプしか使ってないらしいですよね」と、桜が口にした時にやっとピンときた。
「それだ! 成長タイプの装備を作る方法をみんなで考えようよ。マスター装備が必須だって事だけど、それ以外にもヒントがあるかもしれないぞ、ドロップリストのデータベース検索してヒントを探そう」
「しょうがねえな、協力してやるよ。萌と桜はどうする?」
「面白そうだから良いよ」
「私もOK」
◇◆◇◆
十月十四日 二十時
「久しぶりに国内のダンジョン討伐だよな、明日一気に六十一層から最後まで行っちゃうけど、大丈夫か?」
「問題ないな」
「颯太と一緒に潜るのは半年振りか? 最近はずっとダンジョン毎に交代だったからな」
「おかげで私は総合三位まで上がれましたから、ちょっと嬉しいですけど、島長官は成長チートあるから絶対追いつけないですけどね」
最近の日常になってる、全国から送られてくる名産品を使った食卓の用意も出来上がり、真壁さんが説明を始めてくれた。
「今日は、千葉繋がりじゃないけど、銚子沖の釣り金目が届いてるから酒蒸しと、塩焼きを用意しましたよ。十月に入ると脂も乗って来ますので美味しいですよー」
「ダンジョン内の海環境で、旬の魚を育てると、一年中、旬の状態の美味しい魚が獲れる様になりますから、美味しい魚も来年には一年を通して楽しめますよ。既に需要の多いうなぎとマグロはダンジョンでの完全養殖に成功していますので、他の食材も楽しみです」
すると鹿内さんが「私は、今日はちょっと体調が優れないので先に休みますね」と、言ってきた。
「あ、鹿内さんもしかして?」
「まぁそんな感じかな?」
「おー子供出来たのか? やったなー」
「おめでとう、っていうかありがとうかな?」
「沙耶香さんと桃子さんに続いて三人目ですねー来年はベビーラッシュが凄そうですね」
「私たちも、もっと頑張んなきゃね」
と、東雲さんと山野さんが決意を固めていた。
「……お手柔らかにお願いします」
◇◆◇◆
「でも討伐班は、全員レベルも千百を超えて来たからそれぞれが国へ帰っても、もう【DIT】を頼らなくても大丈夫だろ? みんなはどうしたいんだ?」
「OSAMUが言ってたじゃないですか? ダンジョンで終わりじゃないって。ここまで来たら真実をちゃんと自分の目で見届けたいです」
他の外国人メンバーも頷く。
「まー明日の討伐が終わったら三週間程、俺はちょっと開発に専念するからな。その間に他のメンバーを鍛えてやってくれ。恐らくだが今の俺たちが千人以上居て、やっと対等に渡り合えるかどうかの相手になると思う。自分が強くなれば強くなるほど、まだ足らないって言う気がして来るんだよな。これはきっと思い過ごしなんかじゃないと思う」
◇◆◇◆
十月十五日 八時
千葉ダンジョンに向かうためにマンションの前の広場に集合していると、誰かがこちらに向かって歩いてきている。
……あれは
「西山だな……今は【D9】コアか」
「【D1】マスターお初にお目にかかります。私を連れて行って頂けますか?」
「ちょっと待ってくれ」
『ナビちゃん。ちょっといいかな』
『いかがなさいましたか? 理様』
『見たとおりの展開なんだけど、どう判断したらいい?』
『今になって現れたということは、何かを掴み、その為に同行する必要があると判断したはずです。コアがマスターと融合してますので、私との融合は出来ません、そのまま連れて行くことをお勧めします』
「解った。一緒に行動する事を許す。ただし戦闘もしてもらうぞ」
「解りました。便宜上マスターの名前、西山でお呼び下さい」
一応【鑑定】をかけてみる 【unknown】
鑑定できんな、まぁいいか。
【D9】コアこと西山を加え千葉に向かった六十一層からのスタートだ。
モンスターが現れると西山は素手でモンスターに触った。
するとそのまま手にモンスターは吸い込まれていった。
「私以下の強さのモンスターは全て吸収できます。ドロップは出ませんが魔核を造れます」
経験値はちゃんと入るみたいなのでそのまま行動させる事にした。
百十階層の中ボスは吸収できなかったみたいなので、千百以上千六百五十以下の実力だな、ほぼ俺たちと同じか。
そして討伐を終えて地上に戻った。
明日からは三週間、開発専念だな。
西山は三週間後に又来ると言って立ち去っていった。




