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65 決闘は1対1だが1対1にあらず 後編

 アデランとの決闘前日の夜、俺はギルド長の家にお邪魔していた。

 これは歓待を受けるためとかではない、ギルドが可能な限り協力するとのことだったので前日夜にはギルド長の家に泊まることを了承させたのだ。

 ギルド長は当初は自分の家に俺を泊めるのを当然嫌がった。

 しかしギルドとして可能な限りの協力を約束してくれていたので、物理的にも資金的にも時間的にも不可能ではないこの要請は受けざるを得なかった。

 この行動は別にギルドに対する嫌がらせという気持ちは全く、完全に、本当に0であり、明確な理由がある。

 俺に対する闇討ちや集団による不意打ちなどの妨害を防ぐ狙いがあるのだ。


 軍がどの程度の裏工作を行うか分からないが、俺が1人になった瞬間に軍とは無関係な一般人を自称する軍人達に襲撃されないとは限らない。

 だから1人になる時間を無くすために決戦前日からギルド長と共に行動することで自称一般人から身を守る。

 名づけてギルド長メイン盾作戦を取ることにしたのだ。

 これであれば自称一般人達も手出しは出来ない。

 俺を襲えばそれは俺の傍にいるギルド長を狙った行動だとみなされてしまう。

 そうなってしまえば人材交流はもちろん協力関係どころではなくなってしまう。

 だから偶然を装って俺を襲撃することは不可能なのだ。


 もちろんギルド長の家にいる俺を襲うのも論外だ。

 警備もいるしギルド長の命を狙った連中の仕業と公言されてしまえば、襲撃と同様全ての関係が破綻してしまうからだ。

 だから安心して眠ることができるのだが、何故か頑丈な扉のある地下室というかシェルターのような場所に入れられたけどこれって嫌がらせですかね?

 確かに一番安全そうな場所だけど、俺の行動をギルド長への嫌がらせだと思われていないかちょっと心配。

 本当に一番良い選択を考えた結果なのに、これでは危険人物を監禁しているみたいではないか。


 さて決闘当日、ギルド長メイン盾作戦を発動しながら決闘会場に入った。

 決闘会場は軍の管理する訓練場で、ギルド長などの偉い人が座るための椅子が置かれている。

 決闘開始時刻まであと30分、身体を動かしながらアデランや他の軍関係者を待つがずいぶんと遅いな。

 俺達よりも早く来て出迎える必要は無いんだけど、そろそろウォーミングアップくらいしたほうが良い時間だ。

 予定の時間まであと15分も無い、さすがにそろそろ会場に来てもおかしくないのだが。

 会場此処であってますよね、と訓練場まで案内してきた男に確認したがやはり間違い無いという、何かのトラブルだろうか。

 予定時間まであと10分を切ったところでようやく軍の偉い人達が会場に入ってきた。

 ギルドで口論していた人も何人かいるがアデランの姿が見えない。

 軍の偉い人達はギルド長達の方へ赴き挨拶をしたのも束の間、ざわめきが起こった後、ギルド関係者から俺にちょっとこっちに来てくれと言われた。


 挨拶かな、と思いながら偉い人の集団の輪に入ったところ、驚くべきことに、なんと軍は、決闘の延期を願い出てきたのだ!

 何があったのか聞いたところ、決闘相手だったアデランが急な体調不良によりとてもじゃないが決闘できる状態ではないというのだ。

 いやいや、決闘の延期など不可能だ、ギルドも俺も予定がある。

 この無駄な決闘が終わったらSランクの依頼を受ける予定が入っている、延期されてはギルドとしても支障があるんだぞ。


 では代理の者では駄目かと聞いてくるが、最初に約束したよね。

 日時厳守予備日無し、代理禁止としっかりとルールに明記されているはずだが?

 ルールには従いましょうって軍では教えていないんですかね。

 他人にはルールを守れと言うのに自分はルールを守らないんですか。

 俺達の主張はただ一つ、軍側の不戦敗、こちら側の勝ち、これ以外の主張などありえない。

 もう帰っていいかな、決闘時刻の10時も回ったからさ、僕達もギルドの皆さんも暇じゃないんですよ。


 しかし軍の人たちはこれはおかしい、こんなタイミングで急な体調不良など不自然すぎると言ってくる。

 そんなこと言われても、そちらの不手際を俺達に言われてもどうしようもない。

 それとも何だ、まさかギルドの誰かや俺が。


 アデランに毒(ノロウィルス)でも盛ったとでもいうのか!


 全く、軍の人達は意味の分からないことを言ってくる。

 俺とアデランは2週間ほど前に挨拶で会ったきりでそれ以降一度たりとも接触していない。

 まさかとは思うが、数日前にサキュバスに化けた俺がアデランにバーで接触して、アデランがトイレに行っている隙に毒(ノロウィルス)をワインに混入させたなどという支離滅裂な出鱈目を唱えるつもりではあるまいな。


 もっともそんなあるはずもない戯言が軍から出るわけも無い。

 俺も相手側を煽っても良い事が無いので、確認ですが俺の勝ちでいいですねということと、アデランが快方に向かうといいですねとだけ会話して解散となった。

 にしてもアデランも大変だな、こんな面倒なことに巻き込まれてしまって。

 幸いなことに妻子は別の街にいるので家庭内での二次感染はしない。

 軍内部ではどうなるかまでは保証しないけど、トイレやタオルには気をつけろよ。


 後日Sランクの仕事もちゃちゃっと終わらせて面倒臭い仕事もこれで終わり。

 長かったがここからついに本題だ、これでようやく本格的にターゲットの討伐を開始することができる。

 でももし可能ならば神様から、これを使えば簡単に殺せるよって武器とか渡してくれないかな。

 例えばチェーンソーとか、そんな都合の良い武器ありませんか?

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