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34 恋愛というより繁殖要素

 皆、久しぶりだな。

 俺だよ、レピィだよ、レプスキー=ダンプさ。

 何の用事で出てきたのかって?

 今は春、つまり繁殖の季節だ。

 これは成人したとはいえまだまだお子様のフィヨルドには任せるわけにはいかないからな、立派な大人の俺様の登場ってわけだ。

 アイツはこれから数多くの見知らぬモンスターに戦いを挑まなくちゃいけないんだが、そんなことやってたらいつ死ぬもんだか分かったもんじゃねえ。

 いつ死んでもいいように自分の子孫を残すことも自分が生きるくらい大事なことだと俺は思っている。

 だからというわけじゃねえんだが、俺は夜の街の女やセクシーな服を着て立っている女に一晩どうだいって声をかけたんだ。

 でもあいつら金、金、金って口を揃えて言いやがる、オウムですらもうちょっとは言葉の種類知ってるぜ。

 ひどい連中だらけさ、俺が街の中や外で出会った鳥獣類のメス達は誰も金なんか要求しなかったってのによ、なんて強欲な奴らだ。

 そんなことがあって俺は理想の女を捜すために世界中を旅することにしたんだ。

 世界中のメスが俺を呼んでいる、いざ繁殖の旅にスタートだ!



 まずは普段行く事ない場所にやってきたぜ。

 ここは海の向こうの地の果て、氷の大地だ。

 見渡す限り何もねえな、いるのはコウテイペンギンだけさ、モンスターすらこんな場所には住み着かねえ。

 そう、俺が今日ナンパする相手はコウテイペンギンさ。

 もちろん俺も今はコウテイペンギンになっているぜ、ちゃんとドレスコードは整えねえとな。

 コウテイペンギンの群れに近づいていくと温かく迎え入れてくれたくれたんだ、この氷の大地じゃ皆で力を合わせて温め合わないと死んじまうからよ。

 どんな奴でも受け入れるサラダボウルのような深い心があるんだと思うぜ。


 幸い今日は晴れていて暖かいからフィーリングの合うメスを探すにはぴったりな日だ。

 ヘイ彼女、俺と一緒に魚でも取りにダイビングに行かない?

 そう気軽に声をかけたら怒られちまった。

 ペンギンは集団行動することで生き延びているんだ、ソロプレイなんてしたらすぐシャチやアザラシに食われちまうんだとさ。

 つまりフィヨルドの野郎がコウテイペンギンに転生していたらあっという間にあの世行きってわけだな。

 転生先が人間で命拾いしたなハハハッ。

 

 気を取り直して別のメスとの交流を図るぜ、今回は女を落とす必殺のアイテムを持ってきたからな、コイツを使えばどんな女もイチコロよ。

 やぁ彼女、俺と一緒にハドル(たくさんのコウテイペンギンが身を寄せ合って寒さをしのぐ固まり)を完成させるくらい子供を作らないかい?

 声をかけた彼女はまあ素敵なお方、と好感触だ、よしここで必殺のアイテムを懐から取り出すぜ。

 その必殺のアイテムとは石ころ、なんの変哲もない山から拾ってきた石ころだ。

 確かペンギンは石で巣を作って卵を寒さから守る生態があると前世で聞いた覚えがある。

 どうだいこの立派な石ころは、これなら卵をしっかり守れるぜ、どんなハリケーンが来ても安心さ。


 ……興味ない? なぜだい? 石で巣を作るのはアデリーペンギンだって?

 こいつはとんでもない間違いをしちまったぜ。

 どうやらこのコウテイペンギンには石はただの石の価値しかねえみてえだ。

 まあ人間だって結婚するときに贈って喜ばれるのは、地域によって札束だったり土地だったり家畜だったりで違うからな、今回は俺のミスチョイスだ。


 これは嫌われたかと頭を抱えそうになったが目の前の彼女は面白い方ね、と俺に好ましい反応を見せてくれる。

 なんて優しいペンギンだ、まるで慈愛の女神のように見えてきそうだ。

 そんな彼女だったが、でもあなたと子育てをするのは不安なの、と言われちまった。

 君のためなら俺は何でもできるんだぜ、と言ったんだが彼女から、あなたは私の卵を2ヶ月以上飲まず食わずで守ってくれる? と言われて絶句しちまった。

 これは比喩じゃなくてマジだって分かった俺はさすがに怖気づいちまった。

 ちょっと考えさせてくれと言って俺はすぐに氷の大地から離れたね。

 苛酷な環境だとは聞いていたが繁殖すら命がけだなんて恐ろしい場所だぜ。

 マフィアのボスの女を抱いているところを見つかった時のほうがまだ安全に思えるくらいさ。

 俺はもうちょっと軽い気持ちで女の子と遊びたいんだ。

 次は暖かい場所に行くぜ、暖かい場所は女の子のガードも緩いイメージがあるしな。

 硬いパンも温めれば食べやすくなるようなものさ。



 次にやってきたのは低い草が生い茂る砂地、良く言えば温暖、悪く言えば乾燥気味な大地だ。

 今回のお相手はハイエナ、とても親近感を感じて仕方ないぜ、フィヨルドの親戚みたいなものだからな。

 こんにちはメスのハイエナさん、俺と一緒に他者が必死に捕まえた獲物を略奪しにいかない?

 あらいいわね、とハイエナさんも乗り気な感じで一緒に歩いていると、ちょうどインパラを仕留めたヒョウに出会った。

 ちょうどいいタイミングだ、オーブンに入れて焼くだけの肉をサービスされたような気分だぜ。


 おう、お前ウチのファミリーのシマで強盗とはいい度胸してるじゃねえか、とヒョウに因縁をつける。

 自分で言っておきながらこりゃあひどい言いがかりだ、ポリスを騙るほうがよっぽど健全に思えるくらいにね。

 獲物置いていけや、と言わんばかりに俺達は近づいていくが、ヒョウは未練があるのか中々動く気配が無い。

 やれやれ、どんなナイフ持ってるか知らねえが怪我しちまうぞ。

 たかがネコがいい気になってんじゃねえぞ、ネコらしく三味線にでもしてやろうか、と脅迫したところ、渋々ヒョウはインパラから離れて、覚えてやがれと言い残して去っていった。


 やれやれ、弱い犬ほど良く吠えると言うがネコも大差ねえな。

 次来るなら復讐じゃなくて恩返しに来てくれよ、恩を売った覚えはねえけどな。

 インパラを仲良くシェアして食べながら、年頃の彼女に、俺と一緒にクラン作らない? と尋ねると悪くないわね、と満更でもない様子だ。

 どんな敵が来ても君を守るよ、と愛の言葉を並べると相手もその気になってきたのだが、でも私怖いの、と急にしおらしくなった。

 何がそんなに怖いんだい、何も心配することは無いよ、と囁くがそうではないらしい。

 初産だとね、半分くらいの割合で子供が死んじゃうの、と言われてちょっと引いちまった。

 それにね、子供を産むとだいたい5回に1回くらいの割合で私が死んじゃうの、と言われて大きく引かざるをえなかった。


 おいおいおいおい、子供も自分も死んじゃうのってどういう生物なんだよ……コイツが何か悪いことでもしたっていうのかい。

 子供を育てるのは難しいなんてレベルじゃねえぜ、神様もう少しだけメスのハイエナに優しくしてあげてもよかったんじゃねえか?

 でも私、貴方のために死ねるわ! なんて言われちまったが、男冥利に尽きるよりさすがにそこまでの度胸は俺に備わっていないぜ。

 そんな台詞は舞台(ブロードウェイ)で聞くだけで十分なんだからよ。

 いきなりシングルファーザーになる心構えなんて俺どころか世の男の何割が持っているんだ?

 ちょっとこの話無かったことにしてくれねえか、命は大事にしたほうがいいぜ。


 あっ、あそこに弱ったバッファローが!

 と気をそらした瞬間に俺は逃げちまった、メスはつええなぁってこの時ばかりは思ったね。

 ペンギンにしろハイエナにしろ命懸けしすぎだって。

 もうちょっと気楽に生きていこうぜ、嵐の後には凪が来るんだからよ。



 まったく、出会うメス出会うメス重たい奴が多すぎるぜ、俺は悲劇の物語の主人公じゃないっつーの。

 通りがかりのゾウにどう思うよ、と聞いたら自然は厳しいんだぞう、でもきっと良い出会いがあると思うんだぞうと慰めてくれた。

 さすがマイフレンド、この程度でくじけてちゃいけないな、ガッツが出たぜ。

 次はもうちょっと楽しそうに生きてる子に出会いたいもんだ、そう思った俺は新たな大地に降り立ったんだ。


 今回は俺の自慢の肉体を堪能してもらおうと、美しい羽を持つ鳥になってメスを誘惑してみるぜ。

 羽を広げれば色とりどりの羽がパッと扇状に開き、目玉のような模様が特徴のクジャクさ。

 クジャクの羽の模様を作るのが大変でちと不揃いだったり数が少なかったりするが、羽以外の肉体は他のクジャクより立派だと自信があるぜ。

 どうせ羽の模様なんて繁殖にはなんの影響もねえ、どんな立派な服を着ていようがだらしない体が出てくれば魅力は半減しちまうからな。


 イカしたメスのクジャク発見、ヘイ彼女、俺と一緒にこの目玉模様と同じくらいの視線を集めないかい?

 レディは俺をチラりと見て、小声で30点と呟きやがった。

 30点(Fランク)!?

 ちと採点厳しすぎないか、こんなんじゃ留年者が続出して学校がパンクしちまうぜ。


 どこがそんなに駄目なんだい、とレディに聞いたところ、羽の模様が時代遅れね、羽の模様も汚いし目玉の数は少ないし、鏡を見てから出直してきなさいというマスタードのように辛い言葉が飛んできたんだ。

 そんな辛口なレディに、でも俺の肉体は他の男よりも立派なんだぜ、と反論したが、一番重要な羽をおろそかにして何の意味があるのかしら、とブリザードのように冷たい反応をされちまった。


 そもそもこんな目立つ羽何の役にも立たねえよ、何がそんなに重要だってんだ、逆に目立つせいで敵に襲われやすくて仕方ねえぜと不満げに漏らすと、だから意味があるんじゃない、とレディが言ってくる。

 どういうことだ、と尋ねると、貴方が敵に襲われている間に私と子供が逃げるんだから、目立たなきゃ意味がないじゃない、なんて恐ろしいことを平然と言ってきやがる。


 俺はスケープゴートかよ!

 とんでもねえことを平然と言いやがって、ここは俺に任せてお前は逃げろだなんて作り話の中だけで十分だぜ。

 お前らそれでいいのか、と通りすがりのオスのクジャクに聞いたら、まあそういうものですし、と達観したような顔をして平然と答えやがる。

 神父でももうちょっと神に訴えたりするぞ。


 駄目だ駄目だ、見た目でしか判断しないわ俺を利用して使い捨てる気しかねえわ、こんなメスとなんて一緒に過ごせねえよ。

 まだ素性不明のピエロの横の方が安心して寝れるってもんだ。



 はぁ、散々な結果だったな、人間に生まれて良かったと心から思っちまったぜ。

 こう考えると遊ぶなら人間の女が一番楽だな。

 何時でも金で買えてその後何かあっても逃げれるし、子供を産むために2ヶ月断食しろとか20%で死ぬとか無いからな。


 それに人間も見た目の差別、例えば一晩一緒に過ごす金額が変わったりするのはよくあることさ。

 同じ女に3種類の顔で話しかけたら全部金額が違ってて思わず笑っちまったこともある。

 ちなみに同じ女を3度別々の顔で買ったら行為が終わった後、貴方みたいな人初めてって3回とも言われちまったこともある。

 あれにはソーセージにかけるケチャップが無かったくらいショックを受けたよ。


 神様からの依頼を終わらせるまでは適度に遊ぶくらいで十分だな。

 いつ突然死するか分からねえ状況じゃ結婚はおろか恋愛すら安心して出来やしねえ。

 だがまずは……もう少し服装に気を使ってみるか。

 レディの言葉は思ったよりも深く俺の心を抉ったからだ。

 見た目で赤点付けられる人生は2回も歩みたくねえからな。

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