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26 メタルホーンラビットとの死闘 後編

 怒りに震える俺は1匹の鳥に姿を変えた。

 メタルホーンラビットの武器は長い耳を使った敏感な聴覚による索敵能力の高さである。

 つまりこちらはその聴覚の感知範囲よりも静かに近づいて仕留めればよい、うってつけの奴がいるぞ。


 通常大きな体に見合った大きな羽は羽ばたき音が大きく、また風を巻き起こすのでメタルホーンラビットに察知されてしまうため捕えることは難しい。

 しかし今の俺には他の鳥にはない特徴として風切り羽の先に小さなギザギザがついており、これが今回の最大の武器となる。

 一般的に鳥が羽ばたけば大きな羽ばたき音が出る。

 この大きな羽ばたき音の正体は翼全体で生み出される大きな空気の渦の音だが、俺はこの小さなギザギザのおかげで羽ばたいても小さな空気の渦にすることで音を立てずに飛ぶことが出来る。

 もちろん羽ばたくほど僅かではあるが音が出るので羽ばたく回数は少なく、小さく羽ばたいて獲物に接近する。


 これこそがフクロウの忍者スタイル、空から静かに忍び寄る猛禽類である。


 そしてフクロウは集音機能をもつ特徴的な顔と人間より大きな耳の穴のおかげで人間より遥かに聴覚は優れている。

 具体的に言うと数メートル先の雪の中のトンネルを移動するネズミの足音が聴こえるくらいである。

 なのでメタルホーンラビットから離れた場所でフクロウになった俺だが、メタルホーンラビットを探すことは全く苦にならない。

 奴は今、外敵が立ち去ったと思って安心して足元の新芽を食べているその姿を、俺の両目は今バッチリ捉えているのだ。


 そして長い耳の弱点、それはどちらの方向からの音の感知を重要視しているかバレバレな所である。

 耳の穴が向いている方向が警戒区域、耳の位置を確認しながら狙うのだ。

 タイミングを待つ、少しづつ動きながら草を食べている……背中がこちらに向いた、耳も前方を向いている、ここだっ!

 樹の上から滑空するように近づくフクロウ、全く気付かれることなく射程圏内に入り、自慢の鉤爪でがらあきの背中をガッチリと掴む!

 掴まれてから暴れてももう遅い、両足8本の爪はもう離さないぞ。

 このままひっくり返して剥き出しの腹を啄《つい》ばんでくれるわ!



 俺はメタルホーンラビットをひっくり返そうと羽ばたいた、力ある限り羽ばたいた。

 しかしメタルホーンラビット、こいつ重いぞ、普通のウサギと違ってモンスターだからか金属の毛皮が重たいのか、フクロウのパワーでは持ち上げることが出来ない。

 バタバタ暴れるメタルホーンラビットを掴み続けることはできるがその後がどうにもならない。

 くそっ、ここまで来て駄目なのか、無念であるが俺はメタルホーンラビットを逃がさざるをえなかった。


 腐ってもモンスターか、フクロウに狩られるほどの弱者ではないらしい。

 ほぅほぅなかなかやるじゃないかと思っていると、メタルホーンラビットはこちらを馬鹿にするかのように再度プークスゥプークスゥと鳴き出した。

 勝利の雄たけびのつもりか……このままでは終われない……お前の刈り取る爪はまだ残っている、俺の遺伝子の中にまだ残っている!


 俺はフクロウから再度姿を変えた。

 正々堂々の勝負(2回目)を誓いあえてメタルホーンラビットの目の前で姿を変えてやった。

 メタルホーンラビットはとても素早く人間が追いかけて捕まえることは出来ない。

 鳥では捕まえてもその後が続かなかった。

 ならば素早く捕まえてその後追撃できる生物になればいいのだ。

 メタルホーンラビットは時速45キロだか50キロだか60キロ出るらしいがそんな速さで足りるのか?

 今の俺は誰よりも速く、美しい。

 最高時速は110キロを超え、走り始めて3秒もあれば最高時速に達するという脅威の加速性能。

 俺の知る限り最も素早い動物、チーターである。


 まさかメタルホーンラビットもフクロウがチーターになるとは思っていなかったことだろう、余裕の態度が一変して全速力で逃げ出そうとする。

 しかし地面を駆ける速度で俺に勝負を挑むのは悪手である。

 仮にメタルホーンラビットが時速50キロメートルで逃げたとして1秒おおよそ14メートル逃げられるが、俺は1秒で30メートル追いかけることができるのだ。

 難点として俺が全力疾走できるのは10秒ほどが限界ということだが、メタルホーンラビットは警戒心が強い割りに逃げるのは割りと距離が詰まってから。

 人間から逃げるには十分な距離だが、チーターにとっては余裕で追いつく距離である。

 距離を詰めれる理由は、襲ってくる外敵は主に人間だからだろう。

 人間からは近距離からでも逃げることが容易だし、野生生物からは鉄の毛皮で身を守るため襲われないからだ。

 だがメタルホーンラビットよ、知性のあるチーターに襲われる想定はしていたかな?


 メタルホーンラビットは必死で逃げようとしたが、俺の体当たりを回避することはできなかった。

 メタルホーンラビットは体勢を崩して横になってしまった。

 俺はその隙を見逃さず足で更に胴体を回転させて弱点の柔らかな腹が剥き出しになった。

 メタルホーンラビットがキーキーと鳴きながら暴れるが、ここまでコケにしておいて見逃す理由など何処にもありはしない。

 足で押さえつけ腹に噛み付きメタルホーンラビットの皮膚を噛みちぎり、息の根を止めた。

 中々てこずってしまったが、一度攻略法が分かってしまえば大した相手ではない。

 今日は10匹のメタルホーンラビットを仕留めることに成功した。

 一日で20万とか笑いが止まりませんわ、プークスゥプークスゥ。



 数日後、メタルホーンラビットは完全に駆除されバンギの畑に平和が訪れた。

 この期間稼いだ金は50万イディ以上、ありがとうメタルホーンラビット、出現したら教えてくれ、どこでも狩りに行きます。

 そして討伐のランクがDに上がった。

 今すぐ何かあるわけではないが地道に魔石を収めた結果が出たのは嬉しいところだ。


 そんな俺に他の冒険者から怪しい儲け話が持ちかけられた。

 まず俺が会員になってお金を払い、他の冒険者を勧誘すればするほどマージンが入るという儲け話。

 ……ネズミ講じゃねーか!

 そんな罠になんてメタルホーンラビットくらいしか引っ掛からんわ、と思いきやかなりの被害額が出たらそうな。

 人間の知能もたかが知れているのかもしれない。

 せめてウサギに負けないようにしなければ、俺は心に誓った。

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