コウモリの悩み
「なんだよルイ!コウモリ関係なら、ぼくじゃなくてジョーにあいてさせればいいだろ?」
「いや、ジョーも同意見なんだ。 ―― おまえが『適任』だって」
ウィルに指をつきつけると、腫れた頬をなでる《コウモリ》に、「おまえがさっき、おれにもちかけた相談を、ウィルにいってみろよ」と指示する。
《コウモリ》はウィルにからだをむけてすわりなおした。
「 いや、じつはおれさあ、このごろひとりでいると勝手に《ザック》に姿が変わってることがあんだよ。 ひとりでいるときの専用の人間の姿があんだけど、それにならねえんだ。勝手に変わるんだぜ?《背中鬼》の『呪い』かと思って聖父にきいたら、《そりゃ、人間にはよくある病気の一種だ》ってきいて、よけいこわくなっちまってさ。 ・・・困ったから、ザックに相談しようと思ったんだけど、おととい殴られてから声もかけらんねえし、・・・その前から、ザックのこと遠くからみてるだで、なんかもう 、・・・胸がいたくなってきて、うまく飛べなくなっちまって、近寄れねえんだよ・・・。 これってもしかして、ザックがもってた《人間の病気》が、おれにうつったのかな?その、―― ザックのほうは平気なのかな? さっきルイが、ザックはこの《病気》に、かかりやすい、みたいなこと言っておどかすんだ。 ―― あいつ、元気だし陽気だけど、『魂』は、けっこう繊細なつくりしてんだよ。それに、あったかいしさ、 ・・・ルイは、おれが《ザック》になる原因はわかるけど、言いたくないみたいでさ、 ・・・もしかしておれ、すげえヤバイ《病気》にかかってるとか? なあ、きいてるかよ? ぼっちゃん」