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貸し借りはない
「そうじゃなくて! ―― おれもあんたも、・・・・いまじゃもう大人だ」
「・・・・あ?」
「だから、 ―― おたがい、ガキのときの貸し借りは、ナシだ」
「・・・・はあ? おまえ、おれがやったのは、貸し借りとかいう次元じゃ、」
「おれだって、どう後悔しても、あんたにオムツをかえてもらってた借りは返せない。それとも、この先の老後でおれにオムツをかえさせたいか?」
「あのなあ・・・・」
「貸し借りはない。 ―― だから、おれが専門学校行くのに借りてた金、返すって言ってるのに受け取らないとか、やめろ」
「・・・わかった。そういうのもきれいにしたほうがスッキリするもんな。・・・おふくろにはおれから言っておく」
「いうなよ。このはなしは二人だけの問題だ」
「・・・わかった」
「だから、ここで終わりだ」
「ああ、―― わかってる。もうおまえとは、」
「ながいこと、拗ねたガキみたいな態度とって、―― わるかった」
「・・・・・・・・」
その、みたこともないポールの顔をみて、ジャンは思わずふきだしてしまった。




