ここで おわりに
片手で顔を伝った水をぬぐうと、いつものように余裕がある笑みをうかべてみせた。
「 ・・・ま、そういうことだ。 これがおまえの《兄貴面してた男》の、本性ってことだ。 だからおまえがいま、おれにとってる態度はただしいんだ。 ―― どうする?外で殴っておわりにするか?それとも、・・・ここで正式に縁切りするか?」
ぼさぼさの髪のあいだから、いつものとはすこちちがう、からかいもなにもふくまない眼がのぞく。
それをみて、ジャンはため息をついた。
「 ・・・くっそ・・ずいぶんながいこと・・・だましてくれたな・・・」
「 ―― 悪かった。 だからこの事件で、お前にかかわるのは、もう終わらせようって気づいたんだ。 もういいかげん、黙ってていいことじゃあねえし・・・」
「そうだな、・・・もうこれいじょう、だまされねえぞ。クソ兄貴。 ―― おれに《湿地》で借りができたって思ってたからなのかよ?ずっとずっと、ずっといままで? くっそ、―― おれはいままで、おまえのそういう態度は、おれのこと、一人前にみてくれないからだって思ってた・・・」
「そりゃ、歳がはなれてんだから、実際しかたねえだろ」
「いっつも、『ちいさいんだから』とか、いいやがって」
「小さかっただろ?十歳ちょいまでは」