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解決策
「 でも、おれがおまえにしたことは、もっとひどい。 ―― それも、おぼえてねえだろ?」
「おぼえてねえし、―― いまさら、ききたくねえよ」
「おれは、おまえを、捨てにいった」
「・・・・・・・え?」
煙草をはさんだ手で口元をかくしたポールが、じっと正面からみつめてくる。
「・・・その女のつぎにお守りを任されたのは、おれだ。 学校から帰ったらずっと、夜にマリアが帰ってくるまで、おまえの面倒をみてなきゃならなかった。 『友達』にうらぎられたマリアがみつけた、たったひとつの解決策だ」
「・・・だって、ポールだってまだ・・・」
「 おふくろにとってみれば、おれはただ一人の《頼りになる身内》だった。 おれはおれで、トッドみたいに、『頼りになる男』に、はやくなりたかったんだ」
ふう、っと吐かれたけむりが膜のようになる。
白くかすんだむこうに座る男は、たしかに写真でみるトッドに、このごろよく似てきている。
だが、当時はまだ、十歳すぎだ。