《魔女》がつくった童謡
「やっぱりむかしから『言い伝え』られてることって、それなりの理由があって伝わってるんだな」
「とうぜんだろ。そのうえ《背中鬼には、あの『童謡』があるんだぜ」
「あの『童謡』も、《背中鬼》のことを、言い伝えるために作られたのか?」
「ああ。それもあるが、ありゃ《魔女》がつくった童謡だ」
「あ~、そうそう、そうだったな。だから《背中鬼》は、あいての『背中』をさわらないと、捕まえられないことになったんだ」
「見てわかるだろ?《背中鬼》ってやつは、もと精霊だ。 歳もとってるし、格もうえだからって、閉じ込められても《湿地》の縄張りの中でなら、多少は目をつぶろうってことだったんだ」
「『噂』とか『童謡』とかもつくって人間が一人で《湿地》に入らないよう《魔女》も、気をつかったってわけか」
見分けのつかない顔がふたつ。
半端なところで腕をとめたままの背中鬼をみてわらう。
『 そお か おま え 魂 を うつして る な? 』
にちゃり、と音がして顔をおおう髪の間からみえた《鬼》の口が、裂けて半月型になる。
真っ赤な口の中に、ごつごつとした牙が重なって生えるのがみえた。




