220/251
今度こそ
草をかきわける音がする。
枯れ草よりも、いまはもう、緑色の草の方が多いその茂みをかきわけ、なにかが、はしりまわっている。
右 左 前 後
どこもかしこも、草がざわめき、ゆれうごく。
あのときを思い出す。
自分の吐く息の音と、枯れ草をかきわける乾いた音。
おいかけられる恐怖だけがあって、両手をにぎりしめ、《そいつ》がこないように、ゆれる枯れ草にむかって祈った。
だが、いまは ―― 。
「 こっちだ!くそ鬼! おまえが『捕まえそこなった』おれを、めざせ! 」
ポールは両手をあげてさけんだ。
とりかこんだ草が、なにかにつかまれてゆすられるように大きくゆれ、こんどこそ、
――― 待っていたものがあらわれた。




