№31 ― 集まってきた ―
「 ・・・なんか、ポールとジャンの声がきこえたきがする・・」
「気のせいだろ。寒くて空耳がしたんだよ」
ずぶ濡れのザックの頭をウィルがたたく。
棒で足元を探って進んでいても、落ちるやつは落ちる、と慰めにもならない言葉で棒をさしだして、穴から救ったばかりだった。
取り囲む草が高すぎて、あたりの様子はわからない。
草がかきわけられる音が近づき、ザックの向かい側から、眼鏡をかけた男が銃を構え現れた。
ウィルが棒で銃をたたき落とす。
うめき声をあげる男に、「ごめん反射的にやっちゃった」きみ警察官だったね、と謝っていると、さらに別の眼鏡をかけた男が草の中からでてきた。
マークじゃん、とザックがうれしそうに棒をかかげる。
ずぶぬれのザックを、同情的にながめた男は、棒で慎重に足元を確かめ近寄った。
「 まいった。迷ってるよ。 しかも、ジャンとポールの声がきこえたのに、二人ともどこにいるのか確認できない」
手をおさえこんで、うめいている警官に気づくとおちたままの銃をひろいあげ、ウィルをこまったようにみて、わざとだろ、と声にださずに言った。
眉をあげてみせ、ながい前髪をはらった男の、背後の草がゆれ、大柄な影がのっそりと現れる。
「なんだあ? おまえら、さっき逆方向に行かなかったか?」
脇にかかえた棒をまわし、丸い目をみはったニコルの後ろから、ルイが顔をだした。
 




