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弟として
みんなのてまえ、あんなふうに言ってしまったが、警備官たちが手加減せずにポールをしらべあげたら、きっといろいろと、マズイこともでてくるだろう。
兄がどこか常識を逸したことをするのを知ってから、ジャンはポールのことを、いろんな意味で、ずっと疑っている。
嫌いなわけではない。
ただ、ポールを殴った日からずっと、 ―― どうしたらいいのか、わからないだけだ。
「 ポールっ!どこにいる! 」
今はそんなことを考えている場合じゃない。
ポールの汚い車はなかったが、バイクできて、どこかに置いてあるのかもしれない。
そのバイクの存在は、見張りをしているマークたちに伝えようと思っただけで、 ―― まだ、伝えてはいないが。
「ポール!返事をしねえと場所がわかんねえだろ!」
方位磁石が役に立たないのは確認済だ。
みあげた空はずっと曇ったままで、なんだか、 ―― 風が強くなってきた。
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