208/251
ジャンにむかって よーいどん
ニコルがルイをよび、ザックはウィルにつくよう指示される。
「 ザックとおれは、一度きてるからなんとなくはわかるが、草がところどころ生えてない場所が、『穴』だ。 だけど草の丈が高いんで、実際はその『穴』の、近くにいってみないかぎりわからない。 足もとは、倒れてかさなったこの草でふかふかだが、それが『穴』を、うまいぐあい隠してるんだ。 なるべく、この棒でさぐりながら、すすんだほうがいい」
持ってる棒をくるりとまわすと、すぐそこからはじまる湿地へふみこんだ。
「あたしとケンは、ここであんたたちの『おいかけっこ』を見学してるよ」
サリーナがポールのトラックの荷台にあがり、ケンはジャンの車の屋根にのぼった。
ウィルが、ふたりをいやそうにみあげてから、ザックにむきなおる。
「 じゃあいくよ。 おれたちは、 ジャンにむかって 『 よーい どん 』 だ 」
強い風が、すぐそこの草をざわめかせた。