本気で心配
ノアの携帯電話が鳴ったのは、サリーナと他三人分の仕事をほかにどう割り振ろうかドーナツを食べながら考えているときだった。
『 仕事場のPCに 端末になんかつなげてないよな? 』
発信相手はケンだとわかっていたが、こんな種類の声はきいたことがなかった。
「端末に・・・なんだって?」
『端末』すらよくわかっていないこの返事に、携帯のむこうから、よし、と了解のような声がかえる。
「なんだ?おれだって端末くらい持ってるぞ」
『 いいんだって。あんたはそのままで 』
「なにがあったんだ?」
『 どうやら《背中鬼》はジュディの《端末》に戻って、そっから警察の科捜部のPCに移ったらしい。 だから、そこに《端末》をつないでそうなやつらに確認いれてるんだ。『よーいどん』をだれかに送ってないか。 科捜部のジョニーにはルイが確認済で、そっちはみんな無事だった。 あとはクラークとあんたに、念のための確認だよ 』
「 ・・・心配してくれたってわけだな? ―― 本気で」
『 まあ・・・もしもってこともあるし、サリーナがうるせえし 』
「そのサリーナたちはどうしてる?」
『 いま、湿地にむかってる 』
「そうか。じゃあ、よろしくな」
通話をきって最後のドーナツを口にいれると、コーヒーのおかわりを頼み、追加でドーナツを頼んだ。
どうやら、仕事をほかにまわさずとも、予想より早く部下たちはもどってこられそうだ。