とりあげろ
携帯電話をにぎる手が、びっしょりなのを意識しながら息をついた。
「 ・・・すまん。 勘違いだ。《よーい どん》じゃない。 おれが、酔っぱらって送ったメッセージだ 」
携帯のむこうでマークがすこし笑い、ならよかったです、となぐさめるように切れた。
バーのカウンターに突っ伏した男が、携帯と《端末》を乱暴に置き、飲みかけのビールジョッキをつかんだ。
「・・・くそ。自分で送った《メッセージ》も覚えていないなんて、そろそろまずいな」
カウンターの中から身を乗り出した元同僚が、「たしかに。おまえ、離婚してからどんどん量がふえてるもんな」と、つぎのジョッキをおく。
本来は、このジョッキを二つ片付けてから、グラスで飲む酒になるはずだが、新しくきたジョッキをにらむと、クラークはさけんだ。
「 ここに今いるヤツには、おれがおごる! ・・・そのかわり、いまの出来事を忘れろよ。 ―― あと、ここでおれが、『グラス』で飲んでるのをみつけたら、とりあげろ」
バーにいる勤務時間外の警察官たちが歓声をあげた。




