目覚めた先
「……」
自分の記憶が正しければ、俺は地下鉄の線路で仰向けに倒れている。
次に目を覚ますのは、恐らくそんな状況下…… と思われたが、瞼に映ったのは、あまり見覚えのない天井。
(……いや)
……ここは、ホテルだ。
そう、一番最初のホテル。
俺はここで眠りについて、気が付くと10年後の世界に辿り着いていた。
(……まさか)
ゆっくり、ベッドから起きあがり、外へと出る。
もし、俺の推測が正しければ、俺が向かった10年後の世界はやはりシミュレーションで、現実のものでは無かった。
俺は、あくまで自衛隊の訓練を受けていた、ということになる。
(……油断は出来ないな)
もしそうなら、その場で飛び上がりたくなる程嬉しいが、現実はそこまで甘くない。
これまで散々思い知らされてきた。
「もう少し、合理的に考えてみよう」
先輩が俺を元の体に戻してくれた、ということは、どうやら間違いなさそうだ。
それならば俺は地下鉄の線路で目を覚ますハズだが、ここは違う。
となると、誰かが俺の体を運び出したのか?
その誰かについて、思い当たる人物は一人しかいない。
速水豚太。
豚さんが俺を担いでここまで運び出したのだろう。
「豚さん、いますか?」
俺はカプセルホテルに呼びかけた。
しかし、返事は無い。
ベッドは6つあり、カーテンが2つ、閉まっている。
「……」
見ず知らずの相手だったら失礼極まりないが、調べずにはいられなかった俺は、下段のカーテンをゆっくり開けてみた。
中を覗くと、俺は思わず、はっ、とした。
「……む、武蔵さん!?」
その場に横たわっていたのは、鉄柱武蔵さんだった。
しかも、生きている。
腕を突っ伏しながら、横目でこちらを見やる武蔵さん。
「……長い夢でしたなぁ」
「……夢……」
腰が抜けそうになった。
今まで見させられていたのは、シュミレーターによる長い悪夢だった、のか?
試しに自分の頬を叩くと、ゾワッ、という痛みが走る。
「……訳が分からない」
あまりにリアルな夢を見させられて、俺はこれが現実なのか夢なのか、区別がつかないでいた。
「訓練はこれで終わりだ」
背後から声がした。




