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ツンデレ治療師は軽やかに弟子と踊る(タイトル詐欺)~周りは二人をくっつけたい~   作者:


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後日談5(クリスの場合・後編)

 クリスは横向きで馬に乗っていた。その隣では、ルドがクリスに覆いかぶさるように馬に跨っている。

 馬車とは違う振動。振り落とされないよう、クリスは自然とルドにしがみつく。服越しでも分かる、しっかりとした筋肉。直接、耳に伝わる心臓の音。

 クリスの中で嬉しいと恥ずかしいがせめぎ合う。


(こんな状態が続いたら身が持たん)


 馬は帝都の裏にある山を登っていく。クリスは自身の限界を感じながら訊ねた。


「どこまで行くんだ?」


「もう着きます」


 生い茂った木々を抜けた先。木がまばらに生えている、小さな丘が現れた。馬から降りたクリスが、眼下に広がる景色に驚く。


「すごいな」


「よく見えるでしょう?」


 ルドが馬の手綱を木に結びつける。


「そうだな」


 そこからは帝都が一望できた。一際高くそびえる帝城。そこを中心に、大通りが放射線状に伸びている。そこから、クモの巣のように細かく通りがあり、その間に家や広場がある。


「あ、あそこに屋敷が見えるぞ」


「はい」


「こうして他の屋敷と比べてみると、大きい方なんだな」


 どことなく、はしゃいでいるクリスにルドの頬が緩む。


「オークニーにある師匠の屋敷に比べれば、小さいですけどね。帝都は土地が限られているので、あまり大きな屋敷はありません」


「住んでる人数も違うしな。おまえの屋敷は必要最低限の人数だが、私の屋敷は人が多い」


 クリスがオークニーを思い出す。

 屋敷に住んでいる者は全員、訳ありの奴隷だった。ほとんどはクリスが自ら拾い上げ、必要な者には治療をした。その結果、一部の者は屋敷の使用人となり、それ以外はシェットランド領へ移住した。みんな、元気にしているのだろうか。


 クリスの心境を察したのか、ルドが声をかける。


「みんな、待っていますから、早く帰りましょう」


「まだまだ、かかりそうだがな。これから、女騎士団が本格的に発足する。エルネスタ殿が実技指導の担当になるが、それのフォローもしないといけなくなる」


 ルドが生気の抜けた目で遠くを見た。


「そうですか。母上が指導者に…………ですが、いつか、きっと、落ち着く日が……たぶん、きます。そうしたら、数日ほど休みをとって帰りましょう」


「そうだな。数日ぐらいなら……先は長いな」


 今でも一日休みを取るだけで、これだけ苦労している。それが増々忙しくなる上に、数日の休みとなると……考えるだけで気が遠くなる。


 ルドも同じことを考えたようで、苦笑いを浮かべながら話題を変えた。


「遅くなりましたが、昼食にしましょう」


「あぁ」


 ルドが収納袋から昼食が入ったバケットを取り出す。シートを敷いて、昼食を並べた。

 パンに具材を挟んだものと、紅茶。他は、デザートの焼き菓子と果物。


「本当にピクニックだな」


「こういうのも、たまにはいいと思いまして」


「シェットランド領を思い出すな。夏の天気がいい日は、ミレナが焼いたパイを外で食べていた」


「ミレナ殿が焼いたパイは、美味しいですからね」


 クリスがシートに腰を下ろす。


「あぁ。落ち着いたら、シェットランド領にも顔を出さないとな」


「そうですね」


 二人は帝都を眺めながら昼食をとった。




 満腹になった二人は、寝っ転がって空を眺めた。日差しは強いが、木陰にいるため、風が吹くと涼しい。葉の隙間を白い雲が流れる。


「こんな贅沢な時間の使い方は、久しぶりだな」


「師匠は少しでも時間があると、本を読んだり、研究をしたりしていましたもんね」


「ずっと、そんな日々が続くと思っていたんだがな」


「予想外なことばかりでしたね」


「そうだな」


 クリスが自分の髪を摘まみ上げる。金髪がキラキラと太陽の陽を弾く。


「まさか、髪の色も変えず、男装もせず、こうして外を歩く日が来るとは思わなかった」


「それはいいのですが、自分はちょっと心配です」


「なにが心配だ?」


 ルドが体を起こしてクリスを覗き込む。


「師匠は可愛いですから、変な虫が寄ってこないか心配です」


「かわっ!? だから、私は可愛くないし! そういうことは言うな!」


 顔を真っ赤にしてクリスが逃げようとする。だが、すかさずルドが覆いかぶさり、逃げ道を塞ぐ。


 琥珀の瞳が怖いほど真剣に見つめてくる。


「そういうところですよ」


「いや、だから……」


 無言の圧力にクリスの声が止まった。

 強い風が駆け抜け、髪が巻き上げられる。思わず目を細めたところで、唇になにかが触れた。


「ぇ?」


 目前には顔を真っ赤にしたルド。


「え? えぇ?」


 クリスがパニックになっていると、ルドが急いで立ち上がった。


「暗くなる前に帰りましょう」


「いや、待て! おまえ、いま何をした!?」


 クリスが追いかけると、ルドが恥ずかしそうに睨みながら振り返った。ヤケ気味にクリスに近づく。右手でクリスの顎を上げながら、親指を唇に添えた。


「もう一回、しましょうか?」


 クリスは心臓が止まるかと思った。でも、嫌ではない。むしろ……


「……いいぞ」


 琥珀の瞳が丸くなる。


「……本当に、いいのですか?」


 クリスが答える代わりに目を閉じる。一拍置いて、そっと影が落ちた。

 先ほどの、触れたか触れないか、分からないのとは違う。しっかりと、お互いのぬくもりを感じる。


 唇が離れ、目を開ける。クリスは恥ずかしさからルドの胸に顔を埋めた。

 ルドがクリスを抱きしめる。


「絶対、次の休養日も帰ってきますから!」


「いや、さすがに二回連続は無理だろ」


「頑張ります! いや、このご褒美があるなら、頑張れます!」


「これは、ご褒美ではない!」


 クリスの叫びが響いた。


これで完結です

最後まで読んでいただき、ありがとうございました(*- -)(*_ _)ペコリ


現在書き出し祭りなる企画に参加しておりまして

次はその作品を連載します


そちらが完結しましたら、ツンデレ治療師の溺愛編を連載…………できたら、連載をしていきます(;・∀・)

しばしお待ちください

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― 新着の感想 ―
[一言] 遅くなりましたが、後日談完結お疲れ様でした。 それとリクエストにお応え頂き、お月様側の更新ありがとうございました。 両方とも2人が可愛いくて面白かったです。 次の作品とその後のツンデレ治療…
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