30.動き出した村。
森へと一度戻った三人は手分けをして、食材を探し始めた。
このあたりは治安が悪い。あまり離れない様に気を付ける。
「リティ、これは?」
「うん、大丈夫。食べれるわ」
幼い頃、変わり者の庭師が雑草を調理する話を聞いてから、雑草が食べられることに驚いたリューティアは、夢中になって食べられる雑草を庭師から教わっていて、結果無駄に詳しくなっていた。
リューティアを孫の様に可愛がってくれていた庭師は、雑草から地面に隠れた草の根、茸に至るまで、幼いリューティアに教え込み、専門家並みに毒の有無は勿論のこと、食用から薬になるものまで網羅している。
そのお陰で幽閉されていた間も、飢えずにいられたのだが、まさかこんな事が領民の為に役に立つとは夢にも思わなかった。
鞄に入っていたケットを広げ、その上に摘んだ木の実や野草を集めて行く。
暫くすると、カイも戻って来た。蔓草に通した魚に、何に使うのか、木の枝や蔓草なども抱え込んでいる。
「どうよ? 食料は見つかったか?」
「ええ、煮詰めると大分少なくなってはしまうけれど、数日分にはなると思うわ」
「よし、戻るか」
村に戻ると、村人たちは興味深そうに遠巻きに三人の様子を眺めていた。
リューティアは村人に声を掛け、鍋や包丁を借りて来て、カイは周囲の瓦礫を組み上げ、村の片隅に竈を作ってくれた。
味付けはカイが持っていた岩塩とリューティアの採って来た野生のハーブだ。
魚や野草を鍋に幾つも煮込み、スープにする。
リューティアもライサも料理をした事がない。おっかなびっくり包丁を使っていると、見かねた村のおばさんが手を貸してくれた。
「ありがとう、おばさん!」
慣れた手つきで魚を捌き、野草を刻むおばさんの横で、リューティアも摘んできた野草を手でちぎる。
ライサは黙々と岩塩を削っていた。
「いいや、しかし、こんなお嬢さんたちが炊き出しとはねぇ、驚いたよ」
やつれた様子ではあったが、おばさんは懐かし気に笑みを浮かべた。
少し離れた所では、カイが火を起こす為の道具を作り、村人に扱い方を教えている。
「少しでも、皆さんに元気を出して欲しくて……」
リューティアは自分の素性を言えなかった。
誤魔化す様に苦笑を浮かべてそういうと、おばさんは嬉しそうに笑う。
「昨年までは何とかやってこれたんだけどねぇ。酷い干ばつがあってね。農作物がみぃんな駄目になっちまったんだよ。作物だけじゃなく、家畜も病気になったりで、商人もすっかり来なくなっちまってね。この村はもう見放されたんだ、全部無くしたんだと思ってたけど、まだまだ食べられる物が残ってたんだねぇ。男どもは皆やる気を無くしちまってるけれど、あんたらみたいな若い子が頑張ってくれてるんだ。いつまでもくよくよしていらんないね」
「後で、食べられる野草教えます」
おばさんの言葉に、胸がじんわりと暖かくなる。泣きそうな気分になった。
できることがあるというのがたまらなく嬉しかった。
あの時ライサが言ってくれなければ、リューティアの心には、罪悪感だけが残っただろう。
そうか、と思った。
何度も嘆いているだけじゃ駄目だと思った。
何かしなくてはと思った。
けれど、結局何をすればいいのかも判らずに、ただ嘆いていただけだ。
そんな自分が領地を取り戻したからと言って何が出来るのだろう。
幽閉を言い訳にしてはいられない。嘆くだけでは変われない。
頭ではわかっているつもりでも、いざとなると何をすればいいのかわからなかったが、出来ないことではなく、出来ることを考えることが大事なのだと気が付いた。
鍋からは、良い香りが立ち上る。匂いに釣られた様に、一人、二人、人が集まって来る。
「ほらよ、これで弓になるだろ。こっちは槍だぁな」
「おお――――!」
カイはカイで、木の枝を削り、簡素な弓矢と槍を作っていた。男たちが歓声を上げている。
武器を扱えないほど不器用だと言っていたが、どうして中々器用だ。
数名の男が、カイを真似て槍を作り始めている。
木の枝に石を括りつけたりと、工夫も初めているようで、楽しそうに見えた。
出来上がった食事を配ると、村人たちの顔に笑顔が戻る。
灰色だった景色が、色を取り戻した様だった。
食事を配り終えた後も、リューティアたちは精力的に慣れないながらも家の修理や掃除を手伝ったり、繕い物を手伝ったりと動き回り、それに触発をされた様に、座り込んでいた村人たちも、のろのろと腰を上げ、自ら動きだしていた。
一人、二人とその輪は波紋の様に広がり、小さい集落は、陽が暮れる頃には、明るい笑い声が響きだし、活気が戻っていた。
遅くなりましたー! いつもご閲覧有難うございます!
お話を少し見直して、過去の投稿分、少し加筆をしました。
台風接近中、無事通り過ぎてくれますように…!




