第四十九話 消えたあたしの世界
「痛い目に遭いたくなかったら、おとなしくしているんだな。このナイフが見えるだろう? アアン!?」
「くっ……!!」
ふざけるなっ!!
「おっと、暴れんな~。男三人に敵うわけがないんだな~。お嬢ちゃん早くお金や通帳の在処を言ったほうが良いんだな~!」
「あんた達に、誰が教えるかぁ……!!」
このデブ重いんだよ!! 鏡見た事ないのかブタ!!!
「やれやれ。お嬢様ってのはもっとお淑やかではないのですか? それにお粗末な部屋ですね。パパママは奮発してくれなかったのでちゅか~?」
だまれヒョロ眼鏡! 放せっ、このクソクソクソッ!!
「そんなに暴れると手を縛れないじゃないですか」
「ホイっと~~!」
ドス!
うっ……お腹が、痛い……。
「これで少しは静かになるんだな~~」
「そのくらいにしておけ、痛めつけるのは趣味じゃない。よし、あとはオレが見とく。嬢ちゃんやぁ、これからお嫁さんに行きたかったら静かにしとけ? アアン!? お前達はさっさと探せ!!」
「わかったんだな~」「計画通りに」
……
「おーおー♪ やっぱりお嬢様学校に通ってるだけはあるじゃないか。アアン!?」
「いち、じゅう、ひゃく、せん、まん、ふふっ――育ちが良いのは羨ましい限りですね」
「これだけあれば好きな物たっぷり食べれるんだな~」
「返して……返してよ……!!」
それは、あたしのおばあちゃんが残してくれた大切なお金。
「なーにー別に危害を加えるわけじゃねえ。恵まれない憐れなオレ達に施しをしたとでも思ってくれ。アアン!?」
何が恵まれないだ! どうせがんばりもせず、他人を羨やむだけのちんけな人生を歩んできたクセに!!
「今度はもっとセキリティのいい部屋に引っ越すんだな嬢ちゃん。アアン!? おい、ずらかるぞ!!」
ちきしょうちきしょうちきしょうちきしょう!
「返せええぇぇええ!!!」
「おいッ! ちゃんと手を縛れてねえじゃねえか!! このガキ、女が力で男に敵うと思ってんのかあぁぁ!」
「きゃあ!!!」
何が男だ! 何が男だ!! 何が男だっ!!!
「チッ! こいつ、まだ!? はっ、放せ、アッアン!? 危ねぇ、クソォォッ! …………あ……!!!」
腹部に軽い痛みを感じる。それでもお構いなしに顔面へ拳を叩き込んでやった。
「……さ、オレ……わ、悪く……悪くねえからなっ!!!」
男のクセに泣きそうな面。蹴りをぶちかましてやろうとしたら、デブが邪魔をしやがった。
ドンッ!!!
勢いよく壁に吹き飛ばされてしまった。しかし、男達は足を震わせて顔が青ざめていく。あたしの通帳を落として腑抜けた面。ざまあみやがれってんだ、ハハッ――、
「ア、アン!? ……アレぐらいなら、しな、死な、逃げ……ぇ……」
男達が腰を抜かして逃げて行く。追いかけて捕まえなきゃ。
「……あ……れ……」
痛い?
「……あっ」
……
制服がお腹から血に染まっていく。
痛い痛い!
すぐに助けを呼ばないと。
「――ハァ、――ハァ」
痛みで声が出せない!? 口の中で血の味がひどい。さらに激痛が襲ってきて、涙が溢れてしまう。
流れる血を手で抑えても止まる様子はない。壁伝いに必死に部屋の入口まで歩く。
段々と足が自分の足じゃないような感覚。
痛い、苦しい、誰か助けて――。
――交通事故ですって、でも奇跡的にあの子だけ生き延びたみたい。
――可哀そうに、引き取り手はいるのかしらねぇ……。
何で昔の事を……。
――今日からおばあちゃんといっしょに暮らそうね。
――おばあちゃん? パパとママはー?
――お仕事で遠くの方に行っちゃって、しばらく帰ってこれないみたいなの。
――どーしていっしょに連れてってくれなかったの?
――それは……それはきっと…………あなたの事を、世界で一番愛していたからよ。
――どうして……おばあちゃんは泣いてるの?
おばあちゃん……。あの後けっきょくあたしが大泣きしたっけ。
――おばあちゃん! ま~だ~ぁ~?
――はいはい、焼き立てのアップルパイですよー。
――わーい! おばあちゃん大好きーー!
――ふふふ、おばあちゃんもよー。
……大好きだったおばあちゃん。もう一度たべたいな、あの味。
――おばあちゃんッッッ!!!
――ねぇ、しっかりしてっ、今救急車呼んでるから!
――お願い死なないで……!!
――あたしをひとりぼっちにしない……で……。
こんな事、思い出したくない。
――ごめんなさいね……。
――だいじょうぶ謝らないで、あたし施設でも楽しくやってるから。おばあちゃんは自分の体の心配だけしてて!
――本当に優しい子ね……。
あたしは優しい子なんかじゃない。おばあちゃんみたいな優しい人にはなれなかったの。
――おばあちゃん見て? ほら、あたし受かったんだよ!
――申し訳ございません。こちらでも、できるだけの手は打ったのですが……。
――おばあちゃんが通ってた学校に、受かったんだよ?
――ねぇ目を開けてよ! いつもみたいに笑ってよおばあちゃん!!
――あたし、いっぱいいっぱいがんばったんだよ!
――よくやったねって……褒めてよ……おばあちゃん!!
――お願いッ!! あたし今よりも良い子にするから!!!
――あたしを……ひとりぼっちにしないで……おねがい……おねがい…………。
――うわあああぁぁぁあああん!!!
あたし、あの後もがんばったんだよ? おばあちゃんが残してくれたお金。一銭も手に着けてないんだよ。
いっぱいいっぱいいっぱいいっぱいいっぱいいっぱい……がんばったんだよ。
死んだらおばあちゃん達の所に逝けるのかな? パパもママもあたしを迎えに来てくれる?
「キャーーーー!!」
「君ッ!? しっかりしろ、誰かー! 救急車をはやくーー!! はやくーーーッ!!!」
――泣かないで? いつかがんばっていたら、神様が見ていてくれて、ちゃんと幸せを運んでくれるから。だから死にたいなんて言わないで……お願い!!
――……ごめん……なさい……おばあちゃん。……あたし、おばあちゃんと世界で一番幸せになりたい! そして見返してやるんだ!! だから、がんばって……がんばって……。
――生きてさえいてくれれば……それだけで良いのよ……。
おばあちゃんの嘘つき……。がんばったって、いつかなんて来なかったよ。神様は何もしてくれなかった。
神様なんてこの世には居ないんだよ……。
おばあちゃん…………ごめんね。
イベントクリア報酬
ユナ
【蛮勇】
敵う敵わないじゃない! 勝つか勝たないかだ!
補正 攻撃力+1 攻撃力+10%UP
【男嫌い++】
男なんてほんとクズ!
補正 攻撃力+3 攻撃力+10%UP
【おばあちゃんっ子】
心の拠り所
補正 HP+1
創作日記:最初の栄えある『神作』、その第一作品はSFC 天○創造です。
知名度は低いと思いますが、隠れた名作として知られていたり知らなかったりな作品。
発売年度(1995年)のライバル共がエグ過ぎて埋もれても……ぐすん。
で、ネタバレもしますので興味を持った人はコレを読まずにポチって♪
…………
……
まず何の説明も無しだと知らない人には伝わらないので序盤を説明。ですが以降記憶違いがあるかもしれません。スマン。
主人公アーク(デフォルト名)はクリスタルホルムという村のわんぱく少年。村にはクリスタルブルー(超重要ですが今回は触れません)という不思議な泡がぷかぷかと浮かんでいます。そしてこの村には開かずの扉と呼ばれるのモノがあり、それを開いた先にあるパンドラの箱を空けた事によって物語が始まってしまいます。
で、この村から初めて出た時の印象は今でも鮮明に覚えています。スゲーって! 流れる音楽、フィールドのインパクト今でも通じるのではないでしょうか。まあ、センスに関しては昔も今も関係なく通じるので、そこは評価できるはず。さすがに今やったらチープさやボリューム不足は否めないですがそれを凌駕する魅力が詰まっています。
語り始めたら止まらないので、なぜこの作品が自分にとって『神作』なのか、それは人格形成に多大な影響を及ぼしたからです。まず幼い時に触れた。これが一番の要因です。ここからさらにネタバレします。興味を持った方は回れ右してポチって♪
…………
……
今まで褒めてきましたが、ココからの内容は貶しているわけではありません。数ある作品を体験してきた中でたったの三作品に選ばれたのです。間違いなく名作であり、好みによって良作まで下がる位だと思います。
このゲーム、光の側面も闇の側面も描いてます。それがアカンかった。
まず光の側面で言うとアークは植物、鳥、動物と話ができます。古典的な擬人化の手法ですね。体が人間になる方ではないですよ。植物は植物の目線で、鳥や動物はその目線で素晴らしく描かれています。それがアカンかった。
この時点で人間とその他生物の価値が自分の中で等しくなりました。
頭お花畑かと言われちゃいますね。てへへ――。
みんな生きているんだ命は平等ですね。にひひ――。
序盤を過ぎるとアークは上記の生物と話ができなくなります。そして闇の側面も顔を出してきます。
そこで自分の中の培っていた価値観がどんどん壊れていきます。
人間の業って知ってますか? みんな目を背けて生きてますよね? 命は本当に平等でしたか?
お話できた生き物食べるの?
“他人”を思いやる心を持っていても、雑草に獣を気に掛ける心なんて、みんな持ち合わせていませんよね。
対等な生き物を食っているのを自覚していますか? 食わなきゃ死ぬから仕方がない。正にその通り!
植物は痛覚も無いし、多少切ってもだいじょうぶ。根っこがあればまた生えてくる?
植物の気持ちなんて人間がわからないのに? この仏像は何百年も前に作られた有り難い物。その時伐採されたご神木も喜んでいましょう?ってか(笑)
そもそも、人間とその他の生き物は同じ価値ではありません。目を逸らすなや!!
大の大人でも絶句するでしょ? 答えられた、詭弁で? よかったね!!
神は人の下に生き物を造り、人の上に神を置いたもんね♪
はい、人間=その他生物なんて狂いに狂った価値観もったら、世の中おかしく見えるわ!
村が滅ぼされた~? 巣なんてよく壊してんじゃん! 子供が攫われた誰か助けて~? この子ヤギの肉うめー! 人間は尊いぞ~? これだけの屍の山の上に立って何が尊いのだ!
人間様は図に乗ってんのー。
これ以降色々な作品を体験しましたが、フィルターを通さないと灰色です。
どんな素晴らしい名作だと銘打っても、人間以外の目線で観たら、陳腐な三文芝居しかねえじゃんてなるかもね。おすすめはできませんが。
創作で悪行を描きたければ、生き物の目線で考えると深淵なんてお笑い草で思いつくと思うよ。……倫理とか常識で薄めまくらないと世にだせないかもね。一例ですが、米って稲の赤ちゃんで、皮剥いで頭をちゃんと飛ばして下準備完成ですよね。何千もの赤ちゃんを釜で水に浸し炊いて、茶碗に盛ってご飯と言う名の供物の完成。ハイ召し上がれ。うわー虫が入ってるー、ばっちいからゴミとして処理しましゅね~!
それを幼い頃から体験してきたので、自分を守るために極力、目を逸らし続けてきました。でもね。自分の中で闇の側面が溢れようと、光の側面がずっと残っていました。可笑しな話この作品のお陰です。
命は平等。みんな生きてる。この価値観だけは今も自分の中で光輝いています。
パンドラの箱を開いたのはアークではなく、俺でした。




