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宝くじが当たったのでレベル1から聖剣を買ってみる 作者:羽田遼亮

第三章

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鍛冶屋街を散策

 鍛冶ギルド、【火神の槌】は迷宮都市郊外にあった。
 鍛冶ギルドは読んで字のごとく、鍛冶屋の集まりである。
 鍛冶屋といえば黙々と煙を上げる煙突、鉄を叩くときに鳴り響く音を想像する。

 もしも鍛冶屋が迷宮都市の中心にあれば、それらの公害で周囲の地価は下がってしまうだろう。

 なので鍛冶屋はすべて王都郊外の一角に集められていた。
 理不尽な話に聞こえるかもしれないが、鍛冶屋の人々は納得済みとのこと。

「鍛冶には大量の真水、それに炉にくべる木々が必要なのだ。それらを調達にするにはむしろ郊外の方が都合が良い」

 と、リルさんは説明してくれる。

「それに武具を売るのはともかく、作るのに場所は関係ないからな。職人気質の彼らは場所など気にしない」

 むしろ、気兼ねなく槌を叩けると喜んでいるくらいだ。
 と、リルさんは断言する。

「その口調ですと、鍛冶ギルドの神獣さまとも仲がいいんですね」

 そう尋ねるとリルさんはうなずく。

「これから行く【火神の槌】の主、サティロスとも仲がいいぞ。去年の神獣新年会でも席が一緒だった」

「そんなのがあるんですか」

「あるのだよ」

 神獣さまたちはよく会合を開いているようだが、いったい、なにを話しているのだろうか。気になるが、リルさんは教えてくれない。

 なんでも会合の内容は人間に話してはいけないらしい。

「会合の内容はともかく、サティロスさんはどんな方なんですか?」

「サティロスとは、上半身は人間、下半身は山羊の神獣だな」

「変わった神獣さまですね」

「うむ、変わりものだ。普通、神獣とは私のように完全に人型に化身しているものだが、サティロスのやつはかたくなにそれを拒む」

「なにか理由があるのでしょうか?」

「とくにないと思う。私の場合は人間に化身しないと生活しにくいからな」

 リルさんは腕を広げて、自身の巨体を強調する。

「私の本来の姿、フェンリルはちょっとした小山のようなもの。そのままだと館に入り切らない」

「たしかに不便ですね」

「不便だとも。だから元から人型の神獣はそのままのことが多いな。たとえばセイレーンとか」

 セイレーンとは、デーモン退治のときに協力してくれたギルドの長である。
 セイレーンはたしか、上半身は人間、下半身は鳥の神獣だったはず。
 大きさも丁度人間と同じだ。

 もしかしたら上半身が人間ぽいか否かが化身しているか否かの差なのかもしれない。

 そんな推察を述べると、リルさんは偉そうに、

「うむ、さすがは少年だな。その通り。ちなみにケンタウロスのやつも化身していない」

 と言った。

「やはり共通点があるのですね」

 と、述べたあとに、僕はとあることを思い出す。

「化身している、といえば僕が最初に会ったウロボロスの人、彼はどうしているのでしょうか」

「ウロボロスのやつか」

 と、リルさんは苦虫を噛みつぶしたかのような表情になる。

 元々、彼のことは嫌いだったようだが、リルさんはあのときの一件でさらに嫌いになったようだ。

 あのときとはウロボロス・ギルドの連中がちょっかいを掛けてきてフェンリル・ギルドを潰そうとした一件である。

 あのときは僕がウロボロスのメンバーと一騎打ちをし、なんとかことなきを得たが。

「あれ以来、さすがにちょっかいは掛けてこない。それにDランクに昇格した今、我が館を奪うような真似もできまい。取りあえず捨て置いているが――」

「いるが?」

「やつは蛇の化身、ウロボロス、その執拗さと陰湿さは神獣一だ。またなにかちょっかいを掛けてくるかもな」

「それは厄介ですね」

 だが、大丈夫、とリルさんは胸を張り出す。

「我がギルドにはクロムという最強の少年がいる。何度決闘しても負けないさ」

「……決闘が前提なんですね」

 そんなやりとりをしていると、眼前に町並みが広がる。
 黙々と煙が立ちこめる家並みが見える。
 一目でそれらが炉から発する煙だと推察できた。
 つまり鍛冶屋街に到着したのだ。
 黙々と天に昇る煙を見つめると、ウロボロスのことを忘れ去った。

 またちょっかいを掛けてくるならば、そのときはそのときだ。リルさんの言うとおり、また払いのければいい。

 今はそれよりもこれから会うサティロスという神獣の方に興味があった。
 リルさんいわく、頑固で偏屈ではあるが、少なくとも悪人ではないらしい。
 それにその鍛冶の腕はまさしく神級とのこと。
 そんな人物の作り出す鎧を身にまとえば、相当な戦闘力アップが期待できる。
 防御力のアップは早急に解決しなければならない問題であった。
 僕は一刻も早く、一人前の冒険者になりたいのだ。




 鍛冶街にたどり着く。
 その場所は本当に鍛冶屋だらけで、右を見ても左を見ても鍛冶屋しかなかった。
 かんかんかん、という鉄を叩く音がそこら中から聞こえてくる。

 腰の聖剣は、
「心地よい音だね。子守歌を聴いているようだ」
 と評す。

 実際、彼女は生まれるときにその音を聞いていたのだから、比喩ではなく、実感がこもっていた。

 彼女がどこの誰に鍛えられたかは知らないが、ここは故郷に近い環境なのかもしれない。

 そうなればじっくりと滞在したいところであるが、リルさんはさっさと用件を済ませたいようだ。

 いわく、
「耳の良い私にはこの騒音は絶えられない。それにこの煙も。鼻にくるし、いがらっぽくなる」
 けふんけふん、と可愛らしい咳をしている。

 それは可哀想なのでさっさと用件を済ませるか。

「じゃあ、リルさん、さっそくサティロスさんのところへ案内してください」
「案内? どういう意味だ?」

「どういう意味って、そのままですよ。サティロス・ギルドに連れて行ってくださいよ」

「ああ、それは無理だな」

「どうしてですか」

「どうしてもこうしてもない。サティロスは今、ギルドにいないからだ」

「ギルドにいない? どういうことですか」

「そのままの意味だよ。サティロスのやつは群れるのが嫌いでな。常に放浪の旅をしている。ギルドメンバーもこの区画にバラバラに鍛冶屋をかまえているだけだ。あまりギルドに寄りつかない。要は拘束されるのが嫌いな一匹狼的な鍛冶屋が集まっているのがやつのギルド【火神の槌】というわけだ」

「……なるほど」

 【火神の槌】とはギルドというよりもゆるい同盟みたいなもので、共同で活動はしていないらしい。

 一応、この都市の鍛冶屋はギルドに登録しないと行けない決まりがあるため、そのような形態をとっているのだろう。

「となるとサティロス・ギルドに向かうよりも先に、この街を徘徊して腕の立つメンバーと交渉した方が早いですね」

「そうなるな。どうせサティロスのやつはいい加減だから、メンバーの住所も知るまい。館にいくよりもそっちの方が早い」

「エリカに貰った紹介状は目星の鍛冶屋を見つけてから使うことにします」

 そう言うと僕はリルさんの腕を引き、鍛冶屋街を散策し始めた。

『宝くじが当たったのでレベル1から聖剣を買ってみる』

今月2月28日発売予定です。なにとぞ、よろしくお願いいたします。

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