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君はやがてこう呼ばれるようになるよ †

 第五階層からの帰り道、聖剣のエクスは黙って主のステータスを開いてみる。



クロム・メルビル 16歳 レベル11 冒険者 Dランクギルド フェンリルの咆哮所属


筋力 C

体力 C+

生命力 C+

敏捷性 C

魔力 D+

魔防 D+

知力 C

信仰心 D+

総合戦闘力 1853


武器 聖剣エクスカリバー

防具 旅人の服 トリネコの木の円形盾


固有スキル 【なんでも装備可能】

隠しスキル 【英雄の証】

戦闘関連スキル 【剣術C+】 【火魔法E】→【火魔法E+】 【対槍術E】 【対ゴーレムE】 【万能武術F】 【基礎魔法G】 【対蜂型モンスターB】new 【盾攻撃E】new

武具スキル 【自動回復小】 【成長倍加】 【耐火C】

日常スキル 【日曜大工C】

必殺技 ファイアブレード new



 エクスはクロムが必殺技を覚えているか、しかと確認した。


「やっぱり覚えている」


 最後に放ったあの一撃、ステータスの神様はちゃんと必殺技として認識してくれたようだ。


 エクスは剣閃を放つとき、

「必殺技の名前を叫べば威力が上がるよ」

 と言った。


 あれは大嘘である。名前を叫ぼうが、詠唱をしようが、技の威力は上がらないものだ。


 なのにクロムという少年は威力を上げるどころか、ただの技のひとつだった剣閃を『必殺技』にまで昇華させてしまった。


 驚くべき技術とセンスである。

 通常、剣士が必殺技を覚えるのには何年もかかる。


 何年も地道に修業し、やっと習得できるかできないかといったもので、このように討伐の最中にピコンとひらめくようなものではない。


「……かのアーサー王だってこんなに器用じゃなかったよ」


 前の持ち主である王に思いをはせる。

 金色の髪を持ったアーサーは異世界のブリトン人の王だ。


 北方の島国で生まれたアーサーは、十二人の円卓の騎士を配下に持ち、失われた聖杯を探し出し、悪逆なるローマ皇帝を倒した英雄の中の英雄である。


 エクスは『彼女』がまだ若いときからずっとともに戦ってきた。


 のちにとてつもない偉業を達成する英雄らしく、若かりし頃からずば抜けた戦闘センスを示し、エクスを驚かせたものだが、それでも彼女も必殺技を習得するのに難儀したものだ。


 だのにクロム少年はいとも簡単に必殺技を習得し、己のものにしてしまう。

 初めての実戦で必殺技を放ち、使いこなしてしまう。


 あどけない顔だちの少年であるが、その才能はもしかしたら、かのアーサー王をしのぐかもしれない。


 そう思った。

 エクスは改めで現在の主を見る。

 色素の薄い髪がさらさらとなびいている。

 顔だちは幼くもあり、どことなく中性的だ。女装をさせればさぞ似合うだろう。

 そう言った点ではかのアーサー王との類似点もある。

 彼女もまた中性的で彼のような髪を持っていた。

 ただ、決定的に違うのはその心根だろうか。

 アーサー王は慈悲深い王であったが、自尊心の高い王であった。

 クロムは慈悲深く、どこまでも優しい少年であった。


 見ればクロムは、初めてのダンジョンで疲れ切っているエリカを背中に乗せている。


 クエスト帰り、激闘のあとだというのに、文句ひとつ言うことなく、エリカをおぶっていた。


 その姿は仲の良い兄妹にしか見えない。

 兄の方が英雄になるなどとは信じられなかった。


「……でも、君はやがてこう呼ばれるようになるよ」


 エクスはクロムに聞こえないようにつぶやく。


「迷宮都市最強の冒険者とね」


 その声は誰にも届かず、聖剣の刀身にのみ響いた。

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