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第77話 ハニー

読んで頂き有難うございます。

最終話は少し長くなってしましました。


9/24 酒はやらんので⇒酒は辞めたのだが (修正しました。

試しに自分の喉を掻き切って見た。

もしこいつらが実験様に俺自身のスペアを準備していたら?と不安が過った。


しかしそれなら俺という鍵は使いまわさずに実験の度にラヘルの様に造り直した方が楽そうだよね?それにもし彼らが実験精度に拘るならなるべく同じ条件を好むはず!


又、ドッコイセンさんと俺だけ基礎エネルギーが取り外し不可能と言う事からもしかすると基礎エネルギーが体に食い込んだ俺たち人工の者はある種イレギュラーで代替が無いのかも知れない。


”パタン”


馬車に倒れ込んだ俺の首からは勢いよく血が噴き出す。


不老者でエネルギー強化人間と言っても血がなくなりゃあ活動は停止する。やたら貯め込んだエネルギーの所為で普通にパタンと死ねないだけで其れでも放っておけばいずれは死に至る。


「馬鹿な! だれか、誰かきてー!」


残念だなエネルギーを抜いたハッシュはロープで縛られた毛布の中だ、身動きも取れまい。


焦った彼女はイヤリングを外すと早口で何事かを喋り始めた。


あれ?俺何か国語もインプットされている筈なのに彼女の言語が理解できない...。


そして彼女が風魔法で屋根を吹き飛ばすと天に向かって一条の光を解き放ったその瞬間、


夜の闇を切り裂き広範囲に眩い光が俺の居る馬車を襲った。




「目を開けなさい。」


俺は治療された状態の首に手を当てると渋々目を開ける。


「エノッシュは俺やクックの親だと言った。本当はお前が作ったのか?」


「いいやそうでは無い。彼らを作ったのは私だ。だがお前は彼らから生まれた。」


うーん。


「済まないが肝心な所が思い出せなくて困っている、つまり大陸の悲劇は誰が原因?」


「主たる原因の候補を上げる事で良いだろうか?私が思うに旧人類が滅んだ事がその原因だ。」


滅んだ?じゃあ今大陸にいる人たちは?


「ほう、どうやって滅んだ?」


「様々な原因が重なった。戦争、隕石、太陽の活動低下時期、経済の失策、しかし私が思うに根本的な所は生きているから必然的に起こった事象の様に思える。」


うわっ!?哲学か? こいつそっち系か? もうマジで帰してくれないかな...?


「ほほう、それでお前は如何なんだ?不老者!」 それでもまだ虚栄を張る俺...


「今や人は不老に成れる時間を掛ければ不老処理は可能になったのだ。実際星船の人々は皆不老になっている、この場合星船の人間というのは嘗て地上を支配しそして滅んだ人類の生き残りの事を指す。」


「そうかそれは意外だった。じゃあ不老者が沢山いるって事か?じゃあ間違っているかもしれないがもう一つだけ聞くがドッコイセンは人工だが不老者だな?」


「彼女はそうだ。実験管理者達を監視する為に私が作り彼らに与えた。初期のハッシュもだ。残念ながら今のハッシュの方は初期の者が可成り前に亡くなって代かわりしているがね。」


つまり、ハッシュの記憶の中のお前は残像みたい物で、簀巻きにしちゃってけど、無実だったって事?


目の前の不老者は滔々と話を続けた。


「勿論実験管理者達は監視されている本当の意味には気が付いていない。彼らは忠実に命令を実行する、つまり満足の得る結果が出るまで実験を繰り返すのだ。彼らが次の実験に持ち込めるのは一人の側近迄というルールは私が与えた。」


「ルシ夫の役割は?」


「質問は一つじゃあなかったのかい?」


「なら一番聞きたかった事を訊こう、正解は何だ?」


「其れを探している。」


いやいや、こいつマジクレイジーだ。誰も正解を知らないのに正解が見つかるまで探す?!


「分かったそういう事でいい、それでお前は何がしたい? 実験を続けたいのか?」


「お前が望むなら実験は完了とし現在活動中の大地に星船を降ろそう。」


ドッコイセンさんの頬がピクリと動く。


「想像するにその場合に現在の住人達はどうなるんだろうな? 何故それ程までに殺す?」


「最初にそう決めて始めたからだ。星人達は自らの国を亡ばしてしまった、何が悪かったのか調べる為に彼らは私に依頼したのだ。彼らが戻る時大地は完璧な状態でなければ成らない。」


「国を滅ぼした?ふむ、褒められた事では無いが良くある話だ、一緒にやり直せばいい。人にはその力が備わっている。風と共に去りぬを見なかったのか?」


「成程ぜひ参考にさせてもらおう。」


「じゃあ帰っていいか?コーヤ達にはもう実験するなと言って於いてくれ、それと二度と大陸を沈めるなとも。」


「それは出来ない。彼らは自分の答えを見つけるまで実験を続けるだろう。」


「答え?何の答えだ! 俺が決めてやるから奴らを此処に呼べ!!」





いやあ本当に呼ぶとは思わなかったし。


俺はノクロスと言う男を前にして恐縮する不老者達、大陸では神と崇められていた全知の者達を眺める。


神も自分よりエライ神の御前では此の通り平伏至極、どこかの国の官僚と何が違うの?


「えー今日は遠路お集まり頂きどうも有難うございます、鍵男のガブです。行き成りですが実験は終了です。しかしノクロス曰く貴方達には答えが必要だとの事なのでそれを今からお答えします。」


地上の神々は俺にすがる様に口々に言う。


「今回も経済が良かっただろう?今13票で同率1位なんだ、2位に3票差付ければ俺の勝ち...」


「愛よ!」


「軍国主義の一糸乱れぬ生きざまが!」


 ごめん!軍国主義はパス。あくまで俺の勝手なイメージで済まないが、軍国主義は今を生きていない。

 若者が未来を夢見、老人が過去に生きるのは人の性。そこへ歯車の様にみっちり作り込まれたシステムを稼働させると如何してもTOP層の平均年齢が高く成るがそうなるとどうなるか?

 TOPからボトムへ向けての進歩、改革は減りボトムからの意見をすり潰す事が日常茶飯事に。

 もちろんその時点でTOPはその選択が良かれと思ってやっている。なにせ目指す所が栄光に満ちた過去の維持と十何年先の未来で全然違うのだから意見が合うと思う方が可笑しい。

 祖国の為、栄えある軍の為と幾ら声高らかに歌おうが人間から利己を完全に無くすことなんて出来ないからね、利害が一致しないと必ず軋轢が生まれるのですよ。


 只少しだけフォローして於くと軍として死と隣り合わせに戦うために鉄の掟は必要だとは思う。でないと些細な劣勢を切欠にあっと言う間に前線は瓦解する。


 しかしそれを堅く維持しようと思った瞬間にそれは進化を止める事に等しくなり、滅びへの第一歩でしかない...気がする。飽く迄も個人の意見だけどね。


 序に言って於くと俺は滅びを悪とは思わない。人が生まれ死ぬ事、それは滅びではなく次へのバトンパスであると思いたい。


 まあしかし考えてみなよ?権力を握る事に成功した一部の軍国主義者がバトンパスを負けだ感じた結果、自組織の延命に全てを費やす姿を。おー怖!かなり容易に想像出来ない?


 では例えば自組織の進化の為に仮に若者をドンドンTOP層に登用する仕組みを作ったとすれば?


 まあいいアイデアかも知れないが俺に言わせれば世代間の軋轢でパフォーマンスが落ちるだけ。其れならばいっそ若い世代で別組織を作り競わせた方が良い。しかし国家規模の軍隊ではそうも行くまい。


 これらをブツブツ考えて居たのだが其れは一瞬の事であった。


「ガブ君。獣人国の素晴らしい低犯罪率を見ただろう?あれこそユートピアだ。」


ふむ。


「これは不公平だ!巨人国を彼は訪れていない!」


「今回エルフ国にも来ていないわ!」


 巨人国は知らんがエルフの純血主義など糞くらえだ、大体スポーツでも何でも混血の方が強い傾向がある!


 言いたくは無いがお前らIQ高そうなんだからいい加減気が付けよ?


 お前らに与えられた本当の課題は『何時に成ったらお前たち自身がこんな不毛な事を止めて協力し合えるか』って事だろう?実験のマウスは俺じゃあない、俺は唯の餌。実験されていたのはお前たち飛び切り優秀な旧人類代表者7人なんだぞ?


 俺は両手を大きく広げ発言する事をアピールすると彼らに向かって口を開いた。


「俺の答えは…」



◇ ◇


「と言うのが今から約2000年前の歴史である。聞いているのかねセントマリー君?」


ごく一般的な授業の風景。小学校高学年だろうか? 机に座る生徒たちの一人が手を上げる。


「何だね?八番街のセントマリー君?」


「先生! ここではほぼ半数がセントマリー姓です。3番大陸からいらした先生はお嫌いかも知れませんが出席番号で言って頂かないと誰か分かりません。」


「うむそうだったな気を付けよう。では出席番号3番のセントマリー君、その後の歴史を説明出来るかね?」


「ひいひいひいひい...わかんない数のひい爺ちゃんが子供を作りまくって俺たちセントマリー一族が生まれました。500年後に海竜に対抗できる鉄の船で他大陸からの移民が数多く入るまではほぼ全員がセントマリーで、母ちゃんはご先祖様みたいな男獣にはなるなと俺に言いました。」


どっ教室が笑いの渦で湧く。


(注:ガブの名誉の為に記しますとガブは10人程しか娶っていませんし。子供は全部で16人でした。最初の移民から500年間は国の方針で移民を禁止していたのですが、ハッシュとサラ嬢の意見で他大陸の母子家庭に限り移民を許可し唯一稼働していた潜水艦でせっせと運搬したそうです。その時の移民には何故かセントマリーの名前が与えられたのでした。)


「先生!星船は何処に消えたんですか?!」


利発そうな女の子が手を上げて質問する。


「それでは先生がとっておきの本を読んで説明しよう。」


教師は楽しそうに一冊の本を拡げる。


 教室の男子からブーイングが沸き起こる、彼らは歴史の授業や朗読を聞くよりも体を動かしたり何かを競い合ったりしたいのだった。


「まあ聞きなさい。これはすべてのセントマリー姓だけでなくこの大陸に暮らす皆に送られたメッセ-ジなのだから。」


教師の朗読が教室に響く、この教師は地方を転々としながらこの本の事を教えていた。皆が忘れた昔の話を。


『私が彼らに結論(飽く迄も俺の仮論ではあったが。)を出してから今日で1年が経つ。今の内に我が子孫や未来の友人たちへ短いメッセージを書き記そうと思う。


 人の生は長い様で短い。その理由を考えるに人生の長さが生きている時々に依ってその長さ自身を変化させるからだと思う。


 えっ?100歳は100年に等しくそれ以上でもそれ以下でも無い?


 仰る通り。しかし90歳にとっての100歳までの10年と10歳にとっての20歳までの10年は相対的に全く異なる物であると言えば理解して貰えるだろうか? 念のため断って於くがどちらが上とか下とかは無い。


 勘違いしないで欲しいのは別に先の為に今を我慢しろとも今を楽しめと言って生き急がせ先で苦労させるような事を言う心算でもない。そもそも私には偉そうな事をいう権利も実績もないだろう、ただ我武者羅に生きて来た。今となっては道徳に照らし合わせて良くない事も沢山して来た気がする事を懺悔する。


 そう、私が君達に筆を執ったのは託したい言葉と事実があったらだ。それは「人生を食事の様に味わって貰いたい。」という一言である。


 ピーマンが入っていようがニンジンが入っていようが良くかんで栄養にして欲しいし大好きな卵を丸ごと口に放り込むのも良いだろう。(但し喉に詰まらせない様に気を付けて。)


 焦げた物や舌が痺れる様な食べ物を好む人は居ないだろうがその様な物は避けて口にしない様に。


 酒?俺は酒は辞めたのだが、皆が言うには大人になってから適量に...だそうだ。


 私個人の限界かも知れないが人として出来る事等多寡が知れていると感じる。


 楽しんでくれ給へ。


 そうそう、食事を楽しむた為には一緒に食べてくれる人も必要だという事も申し添える。


 そして突然だが白状しよう。


 罪の告白にもなるが、何も知らないより心づもりが出来た方がましだと思うので記す。


 私は星船を2000年の公転周期を持つ遊星の軌道へと乗せた。


 1999年後に彼らは遣って来る。2000年間姉に鍛えられ恐怖の魔王へとステップアップしたであろうルシフ-を乗せた船が。もしその時地上が彼らがふさわしいと思える未来へと発展して居なければ、彼らは再び地上を焼き払い、不問な実験を再開するであろう。


 その時までに地上が楽園で在りますように。


 新世紀2年1月3日 ガブリエル・ド・セントマリーⅠ世。』


◇ ◇


「ガブー何やってるの?ご飯だってば。」


 カサムが開いているドアをノックする、当然この家にはカゴ達も居る。星船を送り出した後不老者の潜水艦を貰って沈みかけた大陸に迎えに行ったから。イシュアやマタロンは沈みかけて止まった大陸に残った。時間を掛けて国々が協力をしながら大陸を復興させるという。


 俺は風でページがめくれてインクが滲まぬよう書きかけの本にそっと文鎮を乗せた。


 ここは昨年まで海底で待機中だった大陸だ、引き上げて暫くは海藻の腐敗臭で近づけもしなかった。


 繁殖力の強い植物と魔物を放つと半年もしない内にヘドロすら平らげ海岸線から内陸へ3km程は住める状態になった。


 あの日実験の中止を決め星船を遠い空へやった俺は浮上させたばかりの新しい大陸に根を下ろした。


 ドッコイセンはルシ夫と共に星船に乗った。他の不老者もノクロスと共に船に乗った。


これから彼らは星船の守護神として長い年月を暮らすのだろう。


 俺?


実の所を言うと俺の体は不老処理を施されている者の、後何十年生きられるか分からない。


 理由は、暴走したルシ夫を皆で抑え込んだ時に相当な無理をした事である。


 不老者は年齢のカウンターを止めれるが、其れだけだ。物理的に損傷した遺伝子は治らないし、不死者では無いのだ。


「ねえ今日お昼って誰の番だっけ?」


 サラが子供をあやしつつカレンダーと睨めっこしている。幸いな事に普通に子宝には恵まれた。実際俺はキャプテンシリーズのプロトタイプではあったが遺伝子自体は初期の不老処理と高エネルギー吸収を可能とする処理だけにとどまっていた様だ。


 ラヘル、進化の為に遺伝子をいじくられ進化してしまった可哀そうなラヘルとはあれっきり会って居ない。だが、代わりのラヘルは今でもサラと仲良く此処で暮らしている。


「昨日は私だったから今日はオマイニーね。」


 アンナもまた、可愛い我が子に授乳中である。


 因みにここのルールは概ねカサムが作った。それは大よそ次のような物だった。


①子供は二人まで。後は避妊具着用の事 ②特定の誰かを寄って多寡って排除しない ③ルールは投票で決めるが機会は平等に、結果は実力主義で。


 実は、このルールが投票で決められて以来俺の権限は無いに等しい。


...だって意見が通らないんだもの! 何故って? 皆さん結託するんすよ!! ルール第2項に抵触するのでは?と何度も抗議したが「排除してないし大事にしてるからセーフ」だそうです。


オマイニーが俺の口にスプーンを突っ込んでくる。


うぐ、おぐ、ちょっとお嫁さん。そんな急いで突っ込んだらお爺ちゃん喉に豆が詰まっちゃうから!


助けを求める目でオマイニーを見るが逆に美しいエルフ娘に睨みつけられてしまった。


「早く!食べたら一緒にベットに行くのよ? 私の担当13時まで何だから!」


「...」


『拝啓 星空のコーヤ様。 鍵の役目が終わった俺、次は種馬さんの役なのでしょうか?』


 隣でハッシュ姉妹が口を肉で一杯にしながら言った。


「それが終わったら海竜を取って来てね、お肉のストックが少なくなっているの。」



 ...いや食料係か?


 ちくしょう!お前らがそんなに食べなければ頻繁に海竜なんて狩らなくてすむのに。あいつら海中では物凄く強くて大変なんだぞ!?



 この大陸の名前はオールハニーランド。南のサウスハニーから来たのノースハニーまで全てにハニーを冠する。


 俺が名付け親である。


いつか愛しいハニー達が仲良くこの地をで暮らす事を祈って。


(End)

2か月半どうも有難うございました。

拙作を続けれたのはチラッとでも目を通して頂けた方々のお陰です。

強引でしたが完結まで漕ぎ着けれた事にホッとしています。

もしよければ感想など頂けると嬉しいです。

暫くネタが思いつきそうに無いのですが、また次作があれば宜しくお願いいたします。

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