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ネコ耳ばすた~ず The Bridge  作者: 七海玲也
5/5

終幕は開幕と共に

            一


「……生きてる……。エマ……アリシア……」


 私が目を覚ました時、少女はすでに鎖から解放されていた。壁にもたれかかり、意識は失ったままのようだ。一方でビスタジオは、後ろ手に縛られ猿轡をされていた。


「お目覚めに、なられましたか?

 今、アリシアさん達も起こしておられますので」


 エマが色々してくれたようだ。しかし、後ろ手に縛り猿轡など、術を使わせない為の方法とはいえ、これを一人でやったのか。


 意識が朦朧とする中、エマがビスタジオと何か話していたのを思い出すが、あえて聞かないのが良いだろう。命に別状は無く少女の探索は解決に向かっているのだから、このことに私が首を出さないのが懸命だろう。あとでアリシアにでも話すのが無難な選択だと思う。


 それに今は少女の方が気になる。


「だ、大丈夫かにゃ?」


 わたしが頬を何度か舐めると小さく声を出し、大丈夫と目を覚ました。


「良かったにゃ。

 今、連れて帰るからね」


 アリシアたちも無事なようで、私は少女に肩を貸し帰路に着くことになった。


 外に出ると朝日が昇ってきていた。


 仲間と合流し、漁師さんたちと待ち合わせしている浜辺へ戻る途中、エマがアリシアたちにしきりに謝っていた。


 何でも術を誤り広範囲の【精神救済(リリーフ・マインド)】を使ってしまったらしい。


 そんな言い訳をしてる中、少女を気遣い船を待つしかなかった。


「うぅう来たにゃ。

 また、乗るんだにゃ……」


 地獄の船旅が始まった。


 落ち着かない私に少女が寄り添って、頭を撫でてくれたりしている。


「あぅあぅ、ありがとにゃ。

 今度はわたしが助けられてるにゃ」


 お礼してもしきれないからと、航海が終わるまで一緒にいてくれた。こんな優しさをみんなが持てば争いなど無くなるのに。


 程なくし、街の浜辺に着くとアリシアが握手を求めてきた。


「私達はこれで失礼するわ。

 協力に感謝します」


 感謝の意を述べ、隠していたことも謝罪してくれた。王命だったので、誰にも話すことが出来なかったらしい。


 この機会を逃さぬべく、握手した手を引き寄せ耳打ちする。


「エマが術を間違ったと言ってたけど、怪しいにゃ」


「どういうこと?

 あれは故意だとでも?」


「ハッキリとは分からないにゃ。

 けど、ビスタジオと親しげに――むしろエマの方が上位に立っているように話してた感じがするにゃ」


「分かったわ、ありがとう。

 仲間を疑いたくはないけど、気をつけておくわ」


 私は誤魔化すため頬を舐めると、代わりに頭を撫でてくれた。それを別れの挨拶とし、各々とも感謝を交わした。


 ビスタジオは後ろ手に縛られたまま歩かされ、私と目が合うと不適な笑みを浮かべた。


 あの目は研究員たちの目と同じ、私の毛を逆立てる感じをさせる。


「にゃぁぁ、わたしたちも行こうかにゃ」


 アリシアたちを見送り伸びをしつつ少女に話すと、大きく頷き私の手を取り走り出した。


 少女はお家に入りママと抱き合うと、お互い涙を流し無事を確かめ合う。

 その姿に私も感動し、泣き声を上げていた。


「なんとお礼を申しあげたらいいのか」


「うぅ、それより……ぅぐ……無事に再会出来て良かったにゃ……ひぐっ」


 せめてもと、大金と思われるくらいのお礼を手渡してくれた。


「私達親子の恩人である貴女にも、沢山の幸せが訪れますように」


 恩人と言われ少し照れくささもあったけど本当に良かったと思い、親子と抱き合うと別れを告げた。


 心配してるであろうレイヴも安心させたいから。


            二


「レイヴぅ、帰ってきたにゃぁ」


 部屋に戻ると、椅子に腰掛け外を眺めている背中があった。


「ミィ!

 無事だったか!

 心配したぞっ!」


 本当に心配しててくれたらしく、椅子を蹴飛ばし私を抱き寄せた。耳元で何度も良かったと繰り返している。


「ごめんにゃ、けどけど頑張って解決できたんだよ」


 男性に抱き締められるのはこれで二度目だけど、どうしていいのかわからず、顔が火照り硬直してるのが自分でも分かる。


 どうしようもなくなり、たまらずレイヴを引き離し俯き加減で問いかけた。


「こ、こ、これから、どうするにゃ?」


 私の気持ちを気にした様子はなかった。


「そうだな。

 この街でもオレ達のことはだいぶ広まったし。

 そろそろ、他のところにでも行ってみるか」


「そ、そう、そうだね、うん、そうしよう」


 恥ずかしさやら戸惑いやら色々な感情の波が押し寄せてきていて、しどろもどろになってしまった。


「そ、それじゃあ、わ、わたしはシャワーでも浴びてくるにゃ」


 とりあえず落ち着こうと、レイヴの顔を見なくて済む方法としてシャワー室に逃げ込もうかと思い立った。


「疲れただろうから、それがいい。

 オレは下で飯でも注文しておくよ」


 そうして部屋を出ようと取っ手に手をかけようとしたところで、ドアをノックされた。手を引きこちらに顔を向けるが、今の私には考えがまとまらないので頷くしかなかった。


 ドアを開くとそこには身なりの整った若い男が立っていた。


「失礼。

 あなた方が『ネコ耳ばすたーず』で宜しいですか?」


 成人したばかりであろう男をよく観察すると腰には剣、胸の辺りに何やら紋章が刺繍されている。


 違わない旨を述べると、勝手に部屋に入ってきた。


 無造作にドアを閉め紙を取り出すと、わたしたちに突き出して言い放った。


「リュベンシー王国、メイル女王の命によりお迎えに参りました。

私と共に王城までご同行願いたい」


 ようやく依頼が片付いたのに、今度は女王様からのお呼び出しだった。


「と、とにかく、わたしシャワーを浴びるから出て行って欲しいにゃ!」


 シャワー室のドアを思いっきり閉め、ため息をついた。


「落ち着かないにゃ……」


 これでシャワーを出たら次は王城へ行くことが確定しているだろう。


 ただ、お城には行ったことがないので色々な想像から少し胸が躍っていた。



 初めまして、七海玲也と申します。

こうした形での執筆投稿は初めてでして、到らない点など多々あったかと思います。

 それでも、これを読んで下さった方々には感謝しきれないほどの「ありがとうございます」を思っております。

 そして、これを目にしているということは最後まで読んで下さったということで、本当にお疲れ様でした、ありがとうございます。


 お気づきになられたと思いますが、この話は長編シリーズの間を埋める短編として始めました。

 短編としては1話目、長編シリーズでは1話~2話の間にあたります。

 勿論、長編シリーズ1話、2話は既に存在していますので、少しずつ短編と共に載せていけたらと思っております。


 コメント、評価なども是非頂けたらと思っております。(どんな内容、評価でも構いません)

 では、長くなりましたが誠にありがとうございました。

 次回もまた、イマジネーションの世界で会えるのを楽しみにしております。

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