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ジョブ世界の人形師  作者: かるぱりあん
第4章 約束
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第34話 Shadow 01

 女神様とお近付きになったのもつかの間。



 現在、俺は難解な試練の真っ最中だ。



 それは、テスト期間だからだ!!



 …………



 ……いやぁ、学生はこれがあるからしんどいんよねぇ。



 この高校に入る前までは楽勝だった勉強も、この高校ではそうもいかない。


 てか、この格差をどうにかすべきだよな!


 田舎と都会での学習要項に開きがあることを!



 とまあ愚痴ったものの、そんなもの今の俺にどうにか出来る訳でもない。


 ただ、このことはナツにも教えてやらんとだな。



 魔物の生態やらエルフ語に歴史……


 授業で習ったことではあるものの、教科書を見ずにテストに回答する。



 これは前世でも思ったことだけど、社会人でも仕事やら資格の勉強しないといけない。


 でも、日本では分からないことはスマホで調べればすぐに答えが分かるし、何より正確だ。


 中には誤情報もあるけどさ。


 でも、人の記憶なんてもっと曖昧だろ?


 学ぶことが大事なのは分かるけど、より正確性を求めるなら、調べられる環境そのものが重要だと俺は思うわけだ。うん。


 つまり何が言いたいかというと、テストに教科書を持ち込んでも別にいいんじゃね?って思うわけ。


 そのほうが正確に答えを導けるし、更には調べる能力が研ぎ澄まされる。


 数学の公式や英単語を何十個も覚えるのも大事だけど、覚えることに囚われて使い方を誤ると答えも間違える。


 それなら、テストに教科書持ち込みOKにして、より確実な答えを導けるかどうかが重要なのでは無いかと俺は思う訳だ。


 ………と、文句をいったところで今のこの難問が解ける訳では無いのだが。



 それに、これは屁理屈だ。



 優秀な人間を見分けるためには、公式や英単語を覚えるだけじゃなく、実際に使いこなせる、言い換えれば『習得』しているかどうかを見定める必要があるのだろう。



 とまあ自分で捏ねた屁理屈に、最もらしい道理をぶつけるという無駄な時間を過ごしているうちに、終了を報せる鐘が鳴り、あとは『あまり尽くしていない人事でもって天命を待つ』ばかりとなった………



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「ハル氏、テストの手応えはいかがでしたかな?」



 テスト期間により昼前に終わった俺は、気晴らしにアキとトーヤの3人でランチへと出掛けていた。



「……どうもなにも……あとは神のみぞ知る……だな。」


「……その言い方ですと、あまり良くなかったというわけですな。」


「うるせー!ってか今回ムズすぎだろ!!」


「ま、まぁ、確かに今回のテストは難しかったよね。」


「色々と忙しかったですからなぁ。ハル氏はあれからも弟君の訓練も欠かさずに行っておるのでしょう?」


「……まぁなぁ……アイツ、絶対セント・クラーク王立高等学校の特待生になるって息巻いてるし。兄貴として応援してやりたいじゃん。」


「それがハル氏のいい所ですな。自分より他人を優先する。」


「そうそう!で、でも、あまり無茶は良くないよ。」


「……まあ、そんなに無茶でもないよ。それに、俺は俺を諦めないってのがモットーだ!」



 トーヤが心配してくれるのはありがたいんだけど、とにかく今は立ち止まりたく無いってだけなのかもしれない。


 何より女神様が実はめちゃくちゃ仲の良いフレンドだったってことが分かったからな!




 昼食を終えた俺たちはその足でギルドへと立ち寄る。



 Axel(アクセル)で完了したクエストもいくつか溜まっており、それらを換金するためだ。



「これ、お願いします。」


「承りました。少々お待ちください。」



 手渡したのは薬草や魔物の耳だ。


 魔物の耳と言ってもそこまで凶悪な魔物ではなく、クエストランクで言えば1番下のEランクの討伐対象の魔物の耳だ。



「確認が完了致しました。こちらが報酬です。お受け取りください。」


「ありがとうございます。」



 報酬は金貨3枚……日本円だと3万円だ。


 たくさんこなしたとは言え、最低ランクの報酬だから仕方ない。


 Axel(アクセル)を使用すればもっと高ランクのクエストをこなすことも出来るだろうけど、それで見元がバレては意味が無い。



 最後にクエストボードに貼り付けられている様々なクエストを眺め、いくつか手に取ろうとしたその時だった。



「オラオラ!!テメェら動くんじゃねぇぞ!!」



 突然がなり声がしたかと思うと、覆面をした男ら5人が一斉になだれ込み、抜刀して威嚇した。


 どうやら強盗に出くわしてしまったようだ。



「テメェら、妙なマネしたら一瞬であの世に送ってやるからな!!」


「おい姉ちゃん、これに金ありったけいれな!!」


「逆らうと容赦しねぇぞ!?」


「………は……はい………!」



 受付のお姉さんは喉元に剣を突き付けられ、その恐怖で目に涙を浮かべながら震える手で袋に金貨を詰めてゆく。


 他の男らも周囲にいる職員や冒険者らに睨みを利かせている。


 俺たちはというと、まだ学生だからということで警戒対象として見てはいないようだ。



「……ハ、ハハ、ハル……ど、どうしよう……!」


「……落ち着けトーヤ。何もしなければ襲われたりはしないさ。」


「……で…でも……」


「ハル氏の仰るとおりですな。大人しくしておきましょう。」



 俺がAxel(アクセル)でコイツらを倒すのは造作もない。


 しかし、流石に人目に付きすぎる。


 それに、人質でも取られてしまうと二の足を踏むことになる。


 ……ここは様子見か……


 いや、待てよ。



「……そういやトーヤ、アレを試そうぜ。」


「……ア……アレってまさか……」


「あぁ。完成したんだろ?」


「……ま……まぁ……一応は……」


「ハル氏、まさかここで戦闘する訳ではありませんな?」


「分かってるよ。コイツらのアジトを特定させるだけさ。」



 トーヤはカバンから体長1センチ程度の超小型の人形を取り出した。


 コイツの名前は『Shadow(シャドウ) 01(ゼロワン)』。


 戦闘力は皆無だが、偵察や潜入には持ってこいだ。



 俺は早速人形にリンクし、Shadow(シャドウ)を動かす。



 Shadow(シャドウ)は超小型ながらも各間接はスムーズに動く。


 さすがはアキが設計してトーヤが作成しただけはある。


 俺はすぐさまリーダー格の男の服に取り付いた。



「……おいガキ!!そこで何してやがる!!」



 やっべ!!見つかったか!?



「……い、いや……ぼぼ、ぼ、僕らは何も……」


「………こ…この子はあなた方が現れて気絶してしまわれたのです……気に障ったのなら申し訳ありませぬ。」


「……ハッ……なんだ、ただの腰抜けか。」



 そう言って男はそのまま俺たちの元から去っていった。



 ……ってオイ!!


 なんだよ気絶って!!


 いやまあ確かにそうだけどさ!?


 すげーかっこ悪いじゃん!!



「テメェら、行くぞ!!」



 リーダー格の号令により男らは馬に跨り、颯爽とその場から消えていった。


 俺は服にしがみついているが、馬上ってこんなにも揺れるのか………


 ゲームでは3D酔いなんてした事無かったけど……さすがにこれは堪えるな………



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「……追跡は?」


「……どうやら振り切ったようですぜ。」


「ひゃっはぁー!!さすがお頭!!見事な手際だぜ!!」


「今頃騎士団どもは血眼になって俺らを探してるだろうぜ。」


「まだ気ぃ抜くなよ。ここにゃあ黒衣の騎士なんつう厄介な野郎がいるんだからな。」


「構やしねぇ!俺らでぶっ殺してやるさ!!」



 強盗らは襲撃後にとある空き家で馬を乗り捨てて上着と覆面を脱ぎ捨てていた。


 そこからさらに2ブロックほど離れた場所の空き家へと移り、そこで金の勘定をしている。



「……見ろよ……こんだけありゃあ老後も安泰だ!!」



 机の上には金貨や大金貨、それに白金貨が山積みとなっており、強盗らはその光景に目を輝かせている。


 当の俺も見たこともないほど大量の金の山には思わず息を飲んだほどだ。



 ……と、あまりのんびりしてられないな。



 俺はShadow(シャドウ)にリンクした際に2体目のリンクも済ませている。


 当然それはAxel(アクセル)だ。


 逃げている強盗らを遠巻きにいつでも襲撃出来るように追跡させていたのだ。



「……にしても、こんなにアッサリといくとはなぁ!」


「ホントだぜ!!他の冒険者らも俺らに怯えて何もしてこねぇ!!」


「黒衣の騎士だかなんだか知らねぇが、本当に頭のいい奴らには手も足も出ねぇってワケか!!」


「ガハハハハ!!」



 言ってくれるねぇ。



 確かにコイツらの言う通り、事件があってからその場にすぐ駆けつけたところで、逃げられてしまえば追いようが無い。


 だけど、お前らは運が悪かった。



 俺はAxel(アクセル)で早速家の中へと突入する。


 強盗らはいきなりの襲撃に驚いてすぐさま戦闘態勢に移行しようと柄を握るが、もう遅い。


 鞘で1人目の頭を打ち付け、その勢いのままにもう1人に蹴り。


 反転して地を蹴って後ろにいた1人に肘鉄を食らわせ、さらにもう1人の顎を拳で砕く。



 あっという間にリーダー格以外の4人を打ち倒した。



「……テ……テメェ……いつの間に……!!」



 リーダー格の男は剣を抜いて俺を睨むものの、腰が引けている。


 俺がズイと間合いに踏み込むや、リーダー格の男は突然両膝を地に付けた。



「……すまねぇ!!この金はアンタにやる!!だから見逃してくれ!!」



 ……ふぅん。


 常套句ってやつか。


 確かにこれだけの金があれば楽して生活できるし、ナツの学費だって心配する必要が無くなる。


 けど、残念。


 俺を買収しようたって無駄だ。



 俺は一気に間合いを詰める。


 咄嗟に男が「ヒィッ」と声を上げたが、すでにその時には拳が顎を捉えていた。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 強盗らを確保した俺は金貨を袋に詰め直し、ギルドの元へと戻った。


 心配せずとも強盗らは縄で縛りあげ、軒先に吊るしている。


 多数の野次馬をかき分け、ギルドへと入る。



 俺の入店に皆の注目が集まったが、俺はお構い無しにカウンターへと歩み寄る。


 カウンターでは受付のお姉さんが余程怖かったのか泣き腫らして同僚らに介抱されており、ギルドマスターは騎士団と何やら話し込んでいた。



 俺は金貨入りの袋をドカッとカウンターに起くと、お姉さんは体をビクつかせた。


 俺は構わず机にあるメモ用紙に捕らえた強盗らの居場所について簡単に地図に書き記し、それを騎士団に手渡した。


 その際にギルドマスターが俺をチラリと見ていた。



「……こ、これは……?」



 説明しようにも言葉が発せない。


 なので、察してくれ。



 面倒はゴメンなのと、俺本体の意識が無いままだと不審に思われるため、俺はすぐさま店を後にした。




 Axel(アクセル)を保管場所へと移した俺は早速リンクを切る。


 すると店内は沸き立っていた。



「ハル氏、お見事でしたな。」


「あ、ハル!おかえり!」


「おう。ただいま。」



 Axel(アクセル)で持って帰ってきた袋には盗まれた金貨が入っていたことで、受付のお姉さんやギルドマスターは喜んでおり、騎士団は早速俺のメモ書きの場所へと兵を向かわせたようだった。


 ケガ人が出なくてよかった。


 ……いや、厳密に言えば強盗らにケガ人が出たけど。



「……ありがとうございます……黒衣の騎士様……!!」



 受付のお姉さんはさっきまでとは意味の違う涙を流して頻りに感謝していた。



 俺達もさっそく店を後にしようとしたが、とある人が俺たちを呼び止めた。



「……失礼。キミたちはセント・クラーク王立高校の生徒だね?」


「……え……は、はい……」


「私はギルド中央支店のギルドマスターのアレクサンダー・グレン。此度の強盗団による襲撃、さぞ怖い思いをさせてしまったな。」


「……い、いえ……それは……強盗団が悪いんですから……」


「……時に、ハル・アルフィード君。少しばかり時間を貰ってもよろしいか?」


「……え……?」



 ………ん?


 あれ?俺、名乗ったっけ?


 覚えられるほど有名人じゃありませんが?


 ……もしかしてこの人、ギルドに登録している人全員の名前を覚えてる、とか?



「グレン氏。どうしてハル氏の名前を覚えているのですかな?こちらは名乗ったつもりはありませんが。」


「それについても当然話そう。キミたちもどうかね?ヒューゴ・アキ・テイラー君に、トーヤ・フォーゼン君。」



 ……なんだこの人……!?


 ギルドに登録している俺はまあ良しとしても、なんでアキやトーヤの名前まで知っているんだ!?



「…なな、なんで僕たちの名前まで……!?」


「……いかが致しますかな?ハル氏よ。」


「………行こう。聞かせてくれるんですよね?」


「勿論だ。では、私の部屋へ案内しよう。」

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