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ジョブ世界の人形師  作者: かるぱりあん
第3章 合同演習
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第27話 忠告

「皆、1週間の合同演習ご苦労だった。残念ながら途中で棄権してしまった者もいるが、その者らにとっても良き経験となっただろう。」



 集合地点にて生徒らは整列しており、壇上ではラインハート先生が労いの言葉をかけていた。


 整列している生徒らの中にはリックスの姿もあり、俺たちの姿を確認したリックスは相変わらずニコニコとした表情のまま俺たちに手を振っていた。



「それでは、今より成績優秀者の発表を行う。」



 キタキタ!


 これは俺らで間違いないだろう!


 何せ襲撃イベントでも立ち向かったんだからな!


 やっべ、心臓がドキドキしてきた!



「成績優秀者は………」



 ドキがムネムネする!!



「リュゼ・クリフォード!ヒューゴ・アキ・テイラー!トーヤ・フォーゼン!マデリン・オリエンス!そして、フェン・メリディエス!」



 よっしゃーー!!!!


 ………って……えっ……?



「成績優秀者は前へ。」



 な、ななな、なぜに!!?


 お、おれたちは!!?



 名前を呼ばれた5人は照れくさそうに登壇して表彰状と勲章を受け取っていた。



「この者らは、互いのジョブを最大限に活かし、この合同演習に取り組んだ。今回、騎士団の方々にご協力いただいて襲撃者を演じていただき、皆も襲撃に遭っただろう。その襲撃者に対しての反応は様々だったが、彼らはその中でも異質だ。

 この者らは、森の中に堅牢な拠点を築き、襲撃者らにそもそも襲撃をさせなかった。その点を鑑み、今回の成績優秀者として表彰する!」



 不満そうな者もいたが、皆は拍手で讃えた。



 ……堅牢な拠点って……そうか。アキだ。


 ミリオタのアキからすれば、どのような拠点であれば襲撃されづらいかも把握している。


 それにアキのジョブは【設計士(デザイナー)】。


 その上にトーヤの【鍛冶師(ブラックスミス)】が加わればなんてことは無い。


 そりゃあ立派な拠点が出来上がっただろう。



 これは余談だが、アキたちの作った拠点はとても良い出来であったために、その後は騎士団が管理し、冒険者らの体を休める休憩所として利用されることになったのだとか。


 まったく、なんてものを作り上げたんだよ……



 そのまま合同演習は解散となり、馬車に乗り込んで寮へと戻ることになった。




「……お前らが成績優秀者、か……」


「そのようですな。」


「へへっ。リ、リュゼ君が僕らに的確に指示を出してくれたんだよ。」


「……ふーーん……」


「ハル氏のほうはいかがでしたかな?」


「ん〜、まあ、襲撃者に襲撃されたけど、撃退した、かな……」


「……ほう……?」


「え、そ、それなのに成績優秀者に選ばれなかったの!?」


「お前たち、勘違いしているな。」



 馬車の中での俺たちの会話にラインハート先生が割り込んだ。



「撃退出来たからいい、というのは単なる結果論にすぎん。実力があるから襲撃されても大丈夫だと自惚れていたのだ。もしも実力以上の敵と出会った際、全滅してもおかしくはない。」



 ……なるほど。


 確かにその通りだ。



 俺は師匠から言われてたはずだ。


 『自分に驕れるな』と。


 今回の合同演習でそれが露呈したな。



「……ただし、お前たちは仲間を守るために逃げずに戦うことを選んだ。人はそれを無謀と笑うかもしれんが、誇りに思え。アーサー、お前たちもな。」



 先生がアーサーにも声を掛けると、アーサーは面白くなさそうな顔をしながらも了解したと言わんばかりに手を挙げた。


 まあ、あいつの性格なら真っ先に戦うだろうな。


 そういう意味じゃあ俺たちもアーサーと変わらないってことか。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 寮へと到着した俺を待ち構えていた者がいた。


 リックスだ。


 相変わらずニコニコと常に笑顔を貼り付けた気味の悪い奴だ。



「やあ。合同演習お疲れ様。」


「……な、なんだよ?」


「ふふ。そう警戒しないでくれよ。正直言って驚いてるんだ。キミたちなら襲撃されれば早々に諦めるかなってね。」


「……で?」


「キミたちが撃退したんだってね。てことは、ロータス君が撃退したのかなって。」


「悪いけど、それをお前に教える義理もない。第一、いくらイベントだったとは言え、お前が俺たちの居所を襲撃者らに伝えたんだろ。」


「当然だよ。僕らだって命は惜しいからね。」


「……………」



 俺はこのリックスが嫌いだとハッキリ分かった。


 自分たちの命可愛さに簡単に仲間を平気で売るような奴だ。


 アーサーのことも正直嫌いだが、コイツとはベクトルが違う。



「……もういいか?ゆっくり休みたい。」


「そうなのかい?お詫びと言ってはなんだけど、キミにいい事を教えてあげようと思ってね。」


「遠慮するよ。」


「ハハッ。ならこれならどうだい?」



 リックスは歩み寄って俺の耳元でこう囁いた。



「……アリシア姫を狙ってる奴がいるよ?」


「………何………?」


「フフッ。少し気になったかい?」


「………………」


「これが作り話だと思うかどうかはキミに任せるけどね。でもこれは確かな情報だよ。僕のお父様にはちょっとしたコネがあってね。裏社会の情報も入ってくるんだ。」


「………誰が狙ってるんだ?」


「フフッ……ハハハッ!食いついたようだね!そいつの名は『ディザスター卿』って言ってね、目的のためなら手段は選ばないっていうヤバい奴さ。」


「……ディザスター卿……?」


「キミが知らないのも無理は無いさ。なんたって彼はこの国から遠く離れた国でその名を轟かせているからね。」


「………どうしてそんな奴の目的がアリシアだと分かったんだ?」


「……フフフ………お詫びは確かに受け取ってもらえたと思うよ。」


「おい!どうしてそいつがアリシアを狙ってるって知ったんだ!?」


「言ったはずだよ?もうお詫びは受け取ってもらてたってね。これ以上は僕が教える義理は無いね。」


「……コイツ……!」



 ぶん殴ってやりたい。


 そうしてでも吐かせたい。


 ……いや、落ち着け。


 コイツの話に信憑性は無い。


 単なるコイツの妄想かもしれない。



「どうしたの?殴らないのかい?」



 俺は少し冷静になり、リックスの胸ぐらを離した。



「……フフッ。利口だね。こんな所で喧嘩なんかしちゃあキミの立場が危うくなるだけだもんね。」


「……なぁリックス。1つ頼みを聞いてくれるか?」


「…………なんだい………?」


「そのディザスター卿とやらにはアリシアの毛1本すら触れさせやしないってね。」


「あぁ、お父様に言って伝えてもらうとするよ。」



 リックスは踵を返して寮の中へと入って行った。


 最後まで、あの笑顔を貼り付けたままで。




 その後俺も自室へと戻り、アキとトーヤを集めて相談した。


 しかしながら、誰もそのディザスター卿とやらの存在は知らず、リックスのただの妄言で、俺たちが襲撃者を撃退した負け惜しみではないか、との見解だった。


 それに、仮にこの話が本当だったとしても、普段はあれほど護衛に守られているアリシアを襲うのはほぼ不可能に近い。


 そんなことがもし可能だとするなら、魔人たちが複数で襲撃した時か、今回のように守りが手薄になったタイミングだ。



 俺も2人と同じ意見だ。



 仮にリックスの話が本当なら、ディザスター卿はリックスらの家族と繋がっている。


 そもそもそんなに遠く離れた辺境の国にいるのに、なぜ王位継承権で言えば最下位のアリシアの存在を知っているのか。


 となると、情報を流したのはリックスだ。



 そして俺に脅しをかけた。


 自分は裏社会と繋がってるぞ、と。



 前世にもいたな、そんなやつ。



 特にリックスは目的のためならば仲間を平気で切り捨てる。


 ただ、これは脅しだけでは済まないハズだ。



 ………ふむ…………



 しかしどうしたものか。



 仮にここで俺がAxel(アクセル)で動いたとなれば、間違いなくリックスは俺とAxel(アクセル)が繋がっていることに気付く。


 そもそも、アイツがわざわざ俺に『自分が裏社会と繋がってる』なんて言ってメリットなんて無いはずだ。


 むしろデメリットのほうが大きい。


 後先考えないような奴ならまだしも、俺にはリックスがそこまで馬鹿じゃないようにも思える。



 とすれば、今回の脅しもリックスにとってデメリットよりもメリットのほうが大きい、ということだ。



「……やはり、そのリックスとやらが気になりますかな?」



 俺がリックスの狙いについて考え込んでいたところへアキが話し掛けた。



「……どうしても、アイツの狙いが分かんないんだよなぁ……」


「……ふむ……」


「あ、そ、それなら、リュゼ君に相談してみたら?」


「……確かに頭のキレる奴ではあるけど……」


「リュゼ君凄いんだよ。ぼ、僕らが成績優秀者になれたのも彼のおかげだし。」


「……へぇ……そうなのか?」


「リュゼ氏は合同演習が始まるや否や、すぐさまこの合同演習の真の意味について予測したのですな。参加者同士の奪い合いがあることも。1クラスが他クラスに狙われることも。そして、成績優秀者の決め方も。」


「……マジか。」



 俺たちでも参加者同士での略奪については予想していた。


 でもリュゼはそこからさらに成績優秀者の決め方についても予想した、というわけか?



「そ、そんでさ、リュゼ君は僕らのジョブが最大限活かせる方法をすぐに思いついてさ!アキの【設計士(デザイナー)】で簡単な要塞を設計して、リュゼ君は【剣士(フェンサー)】で木を斬ったり加工して、僕が【鍛冶師(ブラックスミス)】で金属製の罠を作って。そしてマディさんの【植物学士(ボタニスト)】で周囲の木を成長させて侵入を防いで、フェンさんの【調教師(テイマー)】で動物も仲間にして防衛!」



 トーヤは早口で説明する。


 相変わらず興奮すると早口になるクセがあるな。



「……でさ!」


「……わ、分かった分かった。」


「トーヤ氏は相変わらずですな。まあ、トーヤ氏の言った通り、リュゼ氏なら良き相談相手となりましょう。」


「……ふむ……まあ考えておくよ。悪いな2人とも。ようやく合同演習が終わったってのにこんな話に付き合わせちゃって。」


「ハル氏、水臭いですぞ。我らの仲じゃありませんか。」


「そ、そうだよハル!困ったらお互い様じゃないか!」


「……ありがとな。」



 そうして今日はお開きとなった。


 俺はベッドに横たわる。


 ……いやぁ、しかしながら久々にベッドの上は気持ちがいいな。



 そういや、久々にAxel(アクセル)を起動させようか。



 疲れていないかと言われれば多少は疲れてはいるけどさ。


 ただ、もし万が一リックスの話が本当だとするなら、パトロールは念の為にしておいた方がいい。



 俺はジョブを発動し、Axel(アクセル)へと意識を憑依させ、夜の街へと駆けていった。

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