第二部 第五章 戦後②
【アンジェリカ・ヴォルフィード】視点
公には私の息子【ライル・ヴォルフィード】は、先の宇宙戦争で「Missing In Action」所謂MIA(戦闘中行方不明)と云う扱いになってしまったわ・・・。
私としても双子を産む以前の大戦にて守護機士に搭乗し、【旧支配者】の邪神共の従属神である【イタカ】と戦った事も有るので、息子達が挑む邪神共との戦いの困難さは理解していたし、戦況に因っては双子が殺される事すら覚悟していたの。
なので、いざ息子が唯一人異次元に侵入し、奴等【旧支配者】の邪神共が設けていた前線基地らしき場所に奇襲をかける事を事後報告された時でも、覚悟が出来ていたので特に気持ちが揺らぐ事は無かったわ。
でもそれまでの息子の精神的な強靭さを把握していた私は、例え他の人類では不可能に見えても、息子ならば帰還出来る筈だと云う、根拠不明な自信が有ったの。
そういった私の思いは、息子ライルと関わりの深い人物程共有していたみたいで、夫のヴァンや娘のレイルは殆ど心配していないみたい。
しかし、一応公の立場も有るので、夫のヴァンが主催する形で、星間国家【エリュシオン】の公式行事として宇宙戦争の終戦と息子ライルのMIA(戦闘中行方不明)を公に発表したわ・・・。
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【レイル・ヴォルフィード】視点
父様の終戦宣言が星間国家【エリュシオン】の公式行事として行われてから、半年ばかりの時が流れたわ・・・。
双子の相方たるライルがMIA(戦闘中行方不明)扱いとなってからは8ヶ月も経ち、周囲の人々からは遠慮がちに慰められる様な態度を示されていて、私は「大丈夫よ! きっとライルの奴でも異次元は抜け出し難いんでしょうよ」と返答していたの。
そんな或る日、【航宙軍】での業務を終えて帰還して来た月に有る私の自室にある端末に、父様からメッセージが届いていて、私は周囲の気配を窺ってからメッセージを開いたの。
此の用心深い行動は軍人の癖なのか、師匠連の教育の賜物なのかと判断に迷うものがあるけど、父様からメッセージを徐ろに開いて見ると、特に当たり障りのない文章で週末に惑星【エリュシオン】に存在する故郷【ベネチアン王国】で家族や親族で会おうとの内容がしたためられていたわ。
(中々会えない従兄弟達と会えるし、叔母様達と会うのも久しぶりだから愉しみね)
考えて見れば、私達家族と親族全員で会うなど、公式行事の合間に会う以外でのプライベートでは十年ぶり位だから、随分久しぶりだわ。
月基地から定期便の往還線が到着した【オービタルリングシステム】で、惑星【エリュシオン】の地表と直接往還出来る軌道エレベーターに乗り、僅か1時間ばかりで故郷である【ベネチアン王国】に降り立つと、久しぶりに会う学友達から抱きつかれると云う熱烈な歓迎にあったの。
予め学友達には私が【ベネチアン王国】に戻ると伝えていた所為だけど、日頃はネット上でしか会えていないから、直に会う学友達と直接抱き合えるのはやっぱり気分が違うわ。
その後、学友が借り上げてくれた宇宙港付近にあるホテルのラウンジで集まり、合計30名程の人数で祝杯を上げてもらったの。
「「「乾杯!」」」
皆でシャンパンの祝杯を重ね、宇宙に上がらず惑星【エリュシオン】の様々な業種に就いている学友達から、今回の宇宙戦争の終結と非常に少なかった【航宙軍】の被害を祝われ、私は改めて戦争に勝った事を実感していると、或る学友がライルの事に触れて来たわ。
「ライル君も今回の宇宙戦争でMIA(戦闘中行方不明)と云う事だけど、あのライル君の事だから、時間が掛かってもケロッとした顔をして、異次元から戻って来るに違い無いわ!」
どうやら周りの雰囲気から、今回の私への労いは此の事を伝えるのが主だったと判った私は、
「そうね、流石に異次元からの帰還だから、手間取っている様だけど、きっとライルは元気に戻って来ると思うわ」
そう返答した私の様子を窺い、合計30名の学友達は一斉にホッとしたみたい。
(きっと、私を気遣ってくれているのね・・・、でも大丈夫よ!)
「知っての通り、私とライルは双子なので、魂の繋がりと呼べるものがあって、彼に何かが有れば私には判るの。
其れは例え次元の違う場所であろうとね!」
そう私が説明してやると、学友達は心底安心したらしく、それ以降は全員和気藹々とした様子で自分たちの近況を報告し合ったわ。
3時間程経って皆で解散する際に、全員でまた同窓会形式で会おうと約束し、私はベネチアン城に向かうべく城付きのハイヤーを手配してもらったの。
暫く待っていると、黒塗りのハイヤーが宇宙港付近にあるホテル出口に現れたので、見送ってくれる学友達に別れを告げてハイヤーに乗り込むと、何故か私以外に乗り込んでいた先客が有り、私が目を凝らすと其れが誰か判別出来たの。
「【リンナ】叔母様!?」
そう私が短く言葉を上げると、【リンナ】叔母様が手振りで私に言葉を噤ませると、ハイヤーの運転手に車を出すように命じたわ。




