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「森の奥深くで研究をするのはいいが、俺はそこまで興味無いんでね、毎日同行はしない。だが念の為、月に一回は様子を見に同行する。そして自ら危険を冒さない、強力な魔物が現れたら全力で逃げるなり大声を出せ、これらを守れるか?」


 ジェイが真面目な顔をして問いかける。


「分かりましたジェイさん、ちゃんと守ります」


 ちゃんと従いますよー約束は守りますよー、という意識を全身で表現するように大きくうんうんと頷く。


 さて、上手く計画通りに行った。ジェイは狩りは好きだが、研究には興味が無い。過去に研究について話していても、興味を示していなかった。


 わざわざ森の奥深くまで行って、研究に篭るのだ。

 ジェイにそこまで付き合う義理がないので、別行動を取ると踏んでいた。

 何故わざわざ奥深くまで行くのかは、研究を見て納得してもらうことにする。




 今までとは違いジェイが居ない中、洞穴に着いた。

 一旦素早く逃げれるように、リンと二人で新しく開拓した行動範囲の地形をしっかり調べる。

 非常にいい地形をしている。拠点にした洞穴の周りに、川も流れていて洞窟もある。

 うん、この洞窟を本当の拠点にしよう。


 その洞窟で剥き出しの岩を魔法で削り、拠点として整える。そして洞窟の入口を岩で埋める。

 こうすれば簡単な隠し拠点が出来上がる。表向きは洞穴を拠点とするが、ジェイが居ない時はこの洞窟の隠し拠点を使って研究を進める。


 近づけば簡単に気づけるが、先にリンの索敵で気づけるので先手は取れる。

 それにジェイにはこの洞窟に近づく理由がないから、そうそう問題になることは無いだろう。


 他の村から来た誰かが、仮に気づいたとしても、誰がこんなことをしているのかまでは分からないはずだ。分かるような証拠も勿論残さない。

 やはりリンに相談してよかった。




 説得か隠密か。結局納得出来る答えが出せず、リンに相談した。

 少し考え込んでいたが、すぐにこんな返答が返ってきた。


「どっちもやれば良くないですか?」


 リンが言うには、森の奥深くに入ることくらいは説得で問題ない。その後拠点を作り、ジェイと共有する。

 だがその拠点とは別にもう一個作り、それを隠すことでジェイにも悟られずに隠し拠点で様々な研究が出来るのだ。


 村から離れているので近づく人はより減るし、魔物や動物を殺し過ぎて生態系が崩れても、村に影響は出ないはずだ。


 ジェイはマーシャと繋がっている。マーシャの指示で時折拠点や研究を調べようとするだろう。下手に隠して疑われるよりは素直に見せた方が良い。

 但し見せるのは偽の研究なのだけどもね。


 なるほど賢い、やはりリンは有能だ。褒めてやれば嬉しそうに礼を言い、恭しく頭を下げる。

 うん、この計画で行こう。



――――――――――――――――――――



 さて、楽しい楽しい研究のお時間だ。

 人間の確保はまだ難しいので、動物や魔物を中心に研究する。特に魔物は前世の記憶にはない存在だ。

 未曾有の可能性を秘めている。研究する価値は十分にあるだろう。


 魔物は人間を見ると襲ってくるが、殺すだけで食べてこない個体もある。ただ徘徊して人間が現れたら襲う……奇妙な存在だ。


 推測だが魔物の異質さの根本にあるのは、魔物の体内にある赤く脈動する物体――「核」だ。


 こいつが怪しい。核から出る禍々しいオーラがアンデッドになり得るなんてまさにファンタジーだ。

 ジェイには必ず潰すように厳命されたが、集まらない限りはアンデッドにはならないはず。数個は敢えて残して観察するのも良い。


 また、魔物の中にはすぐに襲ってこない個体もいる。気づいてはいるのだが、不干渉というのだろうか。こちらから襲うことがない限り、凶暴化しない。


 一般的には疲れているだけで落ち着いているのは一時的なもの……やはり殺すべき、と言われている。

 だがそもそも疲れているのかも怪しいし、ペットのように手懐けてみるのも面白いかもしれない。


 魔物にはどこまで医療魔法が効くのか、様々な薬を飲ませれば効果はあるのか、核を弄ったり他の動物、魔物に植え付ければどうなるだろうか。

 試したいことは山ほどある。

 医療魔法のおかげで簡単な手術くらいならば、自力で行える。


 そういえばリンの首輪の魔法もまだだったな、出来れば解明して自分で自由に使えるようにしたい。


 ああ、やることが沢山あるなあ……だが充実してるのは悪くない、不老不死の為に頑張れている意識がある。


 正直不老不死が本当に死ぬ前に実現できるのか、焦っている一面はある。

 こんなことをしていて本当に大丈夫だろうか? すぐにでも人間に手を出すべきか? そもそも不老不死なんてものが……本当にあるのだろうか?


 神なんぞ信じていなかったが、こうして転生しているのだ。もしかしたら何処かで見ているのだろうか……必死に抗う僕を鼻で笑っているのだろうか……


 考え込み、言いようのない不安が僕を覆う。二度目の死を想像し鳥肌が立ってしまう。

 ナニカに呑まれるのは二度と御免だ。


「ご主人様?」


 リンが心配そうに考え込む僕を見ている。

 いかんいかん、考えが逸れている。


 リスク無しに実現出来るほど甘くは見ていない。だがリスクを負いすぎても余計に遠さがってしまうだろう。犯罪行為をし、バレて捕まったりなんかしたら最悪だ。


 そう、自分の中でリスクリターンを見極めて着実に進めて行くのだ。まだ子供だし下手に目をつけられたくもない。


 深呼吸深呼吸。

 背伸びをして気分をリフレッシュさせる。


 あれからリンは僕に対する依存が加速し、今ではすっかり従順のメイドのような存在になっている。知能も力もあり、非常に逞しい。


 ここまでは順調に行っているのだ、焦る必要などない。そう自分に言い聞かせる。


 さて、まずはリンと一緒にモルモットとなる魔物を狩りに行こうじゃないか。

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