同級生
俺の目の前に信じられない光景がある。
それはなんだって、それは女性の裸。
だが考えても見てくれ、一人暮らしの自分が朝目覚めると知らない女性が寝ていることを。
しかもただの女性ではない。女優やモデルなどにも劣らない美貌の持ち主である。
一般高校生の俺、まして高校で虐めを受けている俺なんかが会話を交わすこともできないレベルであることが分かる。
バカにされるのは腹立たしいがこの女性と比べてお前は不釣り合いだと言われても納得できてしまう。
それぐらいこの女性は美しかった。
そんな女性が昨日は激しかったわね、なんて言ってみろ俺でなくても頭がおかしくなったのか自分はこんな妄想を見るなんてと思うはずである。
そしてこれが妄想なら少しぐらいこの母性溢れるおっぱいに顔を埋めても問題はないと思ってしまう俺の気持ちを誰が否定できるだろうか。
俺は見境なくこの女性のおっぱいに飛び込んだ。]
柔らかい。なんて柔らかいんだろ。
それに俺の妄想はここまで進化したのか。
妄想に触れて、ましてその感覚まで分かるなんて。
そんなことをしていると俺は肩を捕まれ、おっぱいから離された。
そして首を傾げ、あどけなく笑い、妖艶な瞳で俺を捉え言うんだ。
「まったく。朝からエッチなことしたら、ダ、メ、だ、ぞ!」
言われた俺は思った。惚れてまうやろ――――。いやいや冗談ではなく、これで惚れない男がいるのなら俺の前に来てほしい。
いや、やっぱり来なくてもいい。来てもらっても困るだけだ。きっと惚れない男性はホモに違いない。
ああそうだった。まず俺はこの事態を把握しなければならない。俺は本当に大人の階段に上ったのかを……。
いや、違った。この女性は誰なのかを聞かなくてはならない。
「あの、お名前を聞かしてもらってもいいですか」
俺はとりあえず恐る恐る尋ねる。するとどこか困ったように答えた。
「もう、からかったのは悪かったって。そんな他人行儀になってからかわないでよ」
「いやいや、名前を教えてほしいですが」
「いい加減して。さすがに私怒るよ。それとも結婚して五年もする相手の名前を忘れたっていうの」
結婚して五年になるって言ったよな、どういうことなんだ。そして彼女は話を続ける
「私の名前は綾波麗華でしょ。私たち高校の時から付き合ってるじゃない」
その名前を聞き、俺は彼女が誰なのかが、ここがどこなのかが大体分かった。でも信じることができない。
彼女は同級生で同じクラスである花園麗華で間違いないと思う。
そしてここは十何年後の世界なのだろう。何が信じられないのかと言うとここが未来であることではなく、彼女と結婚してることが信じらないのだ。
なぜならば彼女は俺を虐めているグループの一人であるからだ。というわけではなく、グループの一人ではあるが彼女から直接何もされていない。
だから別に彼女のことを憎んでいるわけでも恨んでいるわけでもない。
ただ、彼女は高校のころから美人であり、どんな生徒に告白されても断り続けていた。
どんなにイケメンにでも同じ断り方をしているのも有名だった。
彼女は常に告白してきた相手に言う言葉はこれだったらしい。
『生理的に無理だから』訳せば、髪の毛の一本たりともあなたを受け付けることができないということだ。
そんな彼女とどうやって結婚したのだろか。
催眠術や惚れ薬でも使ったのだろうか。
実際にあるとは思えないが。
謎がなぞを呼び、ますます理解できない俺だった。
時間が流れ朝食を食べ終わった後、麗華は娘の彩を連れ戻すために彩の友達家に行った。
俺はその時間を利用して今の事態を把握しようとしている。
まず俺は誰なのか。それは綾波颯音で間違いないらしい、先ほど俺のだと思われる財布の中の保険書を見たから分かった。
もう一つ分かったことは俺の昨日まで暮らした世界から十年の歳月がたってるということである。
次にここはどこなのか。驚くことに一括払いで俺たちが建てた家であるらしい。
どこにそんなお金があったのかと言うと俺は未来では作家であるみたいだ。
まあ大体のことは分かったんだが、分らないことはどうやって未来に来たか、そして過去に戻れるのか。その重要なことがどんなに考えても分からない。
分からないと言えばどうやって麗華と結ばれたかもなんだが。
それにして分からないことが多すぎる。せめての救いが作家である未来の俺は一年分の作家の原稿を書いてあることだ。
「ただいま。あなた、帰ってきたわよ」
そうこう考えていると帰ってきたようだ。案外近いところだったのか。玄関で騒がしい声がする。
「お帰りなさい」
とりあえず玄関に迎えに行くと麗華が小さな女の子を抱える姿があった。たぶんこの子が娘の彩なんだろう。それにしても娘の彩も美人になりそうな容姿をしているな。まあ言っても四歳だから将来どうなるかは分からないが。
「私は彩を二階で寝させてくるわ。彩ったら迎えに行ったらまだ寝ていたの。昨日、夜遅くまで起きてたみたいなんだ」
「ああそうなのか。麗華、彩を二階に連れて行ってからでいいんだが聞いてほしい話があるんだ」
これからどうするかはもう決めてる。まず麗華に正直に俺が過去から来たことを説明することにした。
「そう、分ったわ。すぐ行くからリビング待っていて」
「分かった」
俺は説明しようと彼女に向かいながらテーブルに座っている。
俺はさっそく話すことにした。
「何よ、改めて。もしかして浮気でもしたの」
麗華がすごく不安そうに言うもんだから俺は慌てる。
「いやいや、違う違う。俺のことなんだけど。朝から様子がおかしいだろう」
「ええ、そうね。いつもならおはようのキスがあるもの」
おいおい、未来の俺なんて羨ましいことしてるんだよ。そんなこと思ってる場合じゃなかった。
「そうか。驚かないで聞いてほしんだが俺は、いや今の俺は高校二年生の俺なんだ」
「何言ってのよ。頭おかしくなったのそれともまたあたしをからかってるの」
「いや本当なんだって。俺は過去から来たんだ」
そこまで言った直後だった急に麗華がテーブルに突っ伏した。
意識がない。
さきまで元気があったのに。これは救急車を呼んだ方がいいよな。
でもそんな心配はいらなかったみたいだ。
急に目を開けた。だがさっきまでの麗華ではなかった。
「あなたは誰なの。そしてここはどこなの」
そう彼女は綾波麗華ではなく、花園麗華である。
これはややこしいことになったなと困惑した表情を隠せなかった。




