11話
ざざあ、海岸の岩にぶつかる波。
私は、懐かしいあの場所にきていた。
初めてユキヤに出会った場所に。
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8年前……
夜。
お母さんとケンカをして家を飛び出した。
だって、テストでちょこっと悪い点数をとっただけなのに……悪いのはお母さんだ!
目に涙をいっぱい溜めて道なき道をずんずん進んでいった。
案の定帰り道は分からなくなり、私は森の中をウロウロとさまよっていた。
「お母さーん」
ついには、涙が止まらなくなった。
ケンカをしていたはずのお母さんに会いたくなってきた。
「なんで泣いているの?」
声が聞こえた。
可愛らしい声だった。
「だあれ?」
真っ暗な夜の森。
私の声は震えていた。
「僕は、ユキヤ。君は?」
「私は、ユキコ」
「何年生なの?」
「小学校1年生よ」
「僕と同じだ」
夜に出会った不思議な男の子、ユキヤ。
「どうして、ユキヤくんもここにいるの?」
「お父さんとケンカしたんだ」
「私は、お母さんとケンカしたの」
「おそろいだね!」
そう言うとユキヤは私の手をぎゅうっと握って走りだした。
足元が安定せず走りにくい。
でも、なんだか夢の中にいるような気分だった。
空は満天の星。
降ってきそうなくらいにキラキラしている。
お化けが出そうで怖かった葉っぱたちも、もう怖くない。
フワァっと風が吹いた。
海の匂い。
気づけば砂浜に出ていた。
ゴツゴツした岩場に立って空を見上げた。
満月だ。
「わあ、素敵」
思わず声が出たほどその光景は神秘的だった。
海は穏やかで月を写している。
「月が綺麗だ」
ユキヤはそう呟いた。
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風は強くない。
しかし、波は荒れている。
月はあの日と同じ満月だった。
8年前、あの時に見た景色とは全然違う。
きっとそれは、波が荒れているからではない。
私が年をとったからではない。
ユキヤがいて、大冒険の後にみた景色だからこそ、あそこまで輝いて見えたのだ。
一人で見る味気ない景色をぼんやりと眺める。
8年前のあの日。
ユキヤは森を抜ける道を教えてくれた。
家に帰ったあとお母さんにこっぴどく叱られた。
でもその後にぎゅうっと抱きしめられたのはよく覚えている。
ユキヤに手を握られた時も。
お母さんにぎゅーってされた時も。
とっても安心した。
その事は今でも忘れなれない。
またここに来ればユキヤに会えるかもしれない。
そんな予感がしたのだ。
でも、そこには、誰もいなかった。
当たり前のことだけど切ない気持ちでいっぱいになって泣きそうだった。
その時………




