閑話【もしもリーシャに出会わなかったら】中編
閑話中編です。
本日1回目になります!
それではどうぞ!!
「ここが、クジラ様がご購入した物件になります」
「へぇ、なかなか綺麗なんだね、僕にはもったいないくらいだよ」
クジラはギルドの店員に連れられ、曰く付き激安物件へとやってきた。曰く付き物件をマジマジと見て、全然曰く付きには見えない家だなと思い、中はどのようになっているのかなと想像し、鼻で笑う。
「では、申し訳無いのですが私はこちらで失礼させていただきます」
「あぁ、はい。ここまで連れてきてくれてありがとうございます。僕は別に大丈夫なんで、ギルドのお仕事再開しちゃってください」
1人で曰く付き物件に入らせる事に多少罪悪感を感じている店員に、適当な笑みを浮かべて安心させ、早く帰るように伝えた。
「くれぐれもお気をつけてください!」
「はい、わかってますよ」
店員はそれに安心し、最後に一言気をつけろと告げて来た道を引き返していく。クジラはそれに頷き笑みを見せながら軽く手を振った。
「さて...、中に入るか。別に幽霊がいたら成仏すればいいだけだ」
そう言って、彼は鍵を使って曰く付き物件改め、マイホームの扉を開け放つ。
「なんか妙に綺麗だけど、なんでだろう?掃除してくれる幽霊でもいるのかな?それはそれで便利だから、同居でも許せるな...」
こんな軽口を叩きながら、クジラはズカズカと色々な部屋を見ていく。
「なんだ...、1階は部屋が妙に綺麗以外は特に何も無いじゃないか...」
だが、1階の全部屋を見てみたが、何も不可思議な物は発見する事が出来なかったみたいだ。軽く舌打ちをしながら彼は2階へと進む。
「2階は2部屋か...、とりあえず手前の部屋かな?」
2階の構造を確認し、手前と奥の2部屋がある事を把握すると、とりあえず手前から入ることにした。
だがしかし...、
ドン!!
手前の部屋のドアノブに手をかけた瞬間、奥の部屋から、壁が思いっきり叩かれる音が聞こえた。
「...っ!?突然すぎてびっくりしたぁ...。先に奥に行ってみるか...」
一瞬にして鼓動が早まったクジラは、胸をなで下ろして心を落ち着かせ、奥の部屋に向かう。
ガチャ
「なるほど、やっぱり何もいないか...。それにしても、女の子っぽい部屋だな。昔住んでた家族に娘さんでもいたのかな?あれ?ここから不思議な音がしたって事はその娘さんが悪霊化してるのかな?」
嫌な事を考えてしまったと思い、若干苦い顔をしながら部屋に置いてあったクッションに座ろうとした。
ドンッ!
「...またか。ここに幽霊がいるんだろうな...。見えるようにして、1回だけ会話できないかチャレンジしてみようかな?」
クジラは、幽霊が見え、会話なども可能になる道具と念じる。
ポンッ!
すると、度の入っていない伊達眼鏡のような品が手に収まった。本編はお守りであったのに、何故今は眼鏡かというと、死んでも構わないという気持ちの表れで、少しでも無事でいられますようにという気持ちが、具現化に取り入れられなかったからだろう。
「...よし、かけよう」
ホラーゲームのような恐ろしい見た目の物は流石に怖いし、強いだろうから出なければいいなと思いながら決心して眼鏡をかける。
「何座ろうとしてるのよ!早く出て行きなさいよ私の部屋からー!」
ドンッ!
すると、短めな黒髪の美人な女性が壁ドンをしている光景が丁度目に入った。
「...女の人っ!?」
そのシュールな光景を見て、クジラはつい声をあげる。
「え?わたしの事見えてるのかしら?おーい、そこのいつの間にか眼鏡掛けてるあんた、わたしの事見えてるわけ?」
すると黒髪の女性は、自分の姿が見えたのかと驚きながら彼の目の前に近づき、手を振った。
「...あ、はい!見えてますよ(よく見たら、かなり美人な幽霊だなぁ...)」
クジラはそんな彼女の外見に、一瞬だけ見惚れた後、返事を返す。
「へぇ、久々に人間と会話出来たわ!...それで、あんたは何者なのかしら?」
ヤヨイは久々に会話が出来たことを喜びながら、首をかしげる。
「あ、僕はクジラって言います。この家を購入した者なんですけど...」
「は?買った?こんなお化け屋敷を?」
壊しに来たじゃなくて買いに来た?
ヤヨイは驚きに満ちた顔でクジラを見つめる。
「えぇ、人が寄り付かないような空間が欲しかったので...。でも、あなたがいるから買うのをやめようと思います」
「...え?どうしてわたしがいると買うのをやめることになるのよ?」
「いや、僕が求めてるのは閉鎖的な空間であって、人とのコミュニケーションじゃないから、まぁ君が成仏するのなら話は別だけどね...?」
「するわけないじゃない!できれば実体化して、外の世界に出てみたいと思ってるのになんで成仏しなきゃいけないのよ!?」
「あー...、そうですよね。それじゃあさようなら」
「だから待ちなさいよ!!」
黒髪の女性はトボトボと帰ろうとするクジラの肩を掴み、引き止める。
「えぇ...?なんですか幽霊さん?」
「幽霊呼びはやめてほしいわ。わたしの事はヤヨイと呼んでちょうだい」
「あ、そうですね。それで、なんですかヤヨイさん」
「そんな明らかに、心が折れそうだからかまって!みたいなオーラを出してる奴をほっとける訳ないじゃないの。仕方がないから住む事を許してあげるわよ?というか、心が癒えるまで住み続けなさい」
「嫌ですってば...」
「ダメよ!久々の話し相手だし、絶対に逃がさないわよ!?」
「いや、僕は1人が...」
「精神疾患者は黙りなさい!あんたが本当は寂しがってる事なんてわかってるわよ!だからもうわたしは決めたのよ!返事は!?」
「は、はい」
ヤヨイはそのようにまくし立て、クジラの意見を押し切り、彼を無理に住まわせることにした。
「ふふん、決まりね?やって欲しかった事もあったから、ちょうど良かったわ...」
「やって欲しいこと?」
「えぇ、悪霊を倒して欲しいのよ...」
「(え、ヤヨイさんも悪霊的な奴では...)」
クジラは彼女の頼みというものを聞き、ただ心の中でそう突っ込むしなかった。
次回ラストです。
いい具合にまとめます。




