第20話 尋問の夜
説明は難しくなかった。
俺と王女だけなら最悪だっただろうが、しかし床に知らない少女が転がっていて、ナイフも落ちているのだ。どう見ても怪しい。
そして俺の盗撮魔法による録画再生機能によって彼女の侵入が明らかになった。
そして。
暗殺者は拘束され、別の部屋へと移送されたのだった。
「おつかれ。お手柄だねエロガキ。まさか姫様に夜這いしたら偶然暗殺者とでくわすなんてね」
「時系列違いますよロリ先生。色ボケが脳に来ましたか」
「君にエロボケと言われたくねー。でも本当にお手柄だね。お姫様が殺されてたら大変だったよ」
それはそうだろう。このタイミングで死なれたら本当に色々と大変だ。ゲーム本編も始まっていないのに。
「エドワルド様、ありがとうございました」
目を覚ました王女が言ってくる。
……寝間着姿で言ってくるのはちょっとやめて欲しい。
前世では一番の推しキャラだったんだぞこのお姫様は。目に毒である。
「気にしないでください。臣下として当然の事をしたまでです。どうしてもというならお礼は身体で」
「えっと……働けということですね?」
「ええ、夜に……」
そこまで言って、王女の後ろでもはや怪物みたいな顔をしている侍女さんに気付き、俺は口を閉じた。
……うむ、口を閉じるくらいはまだ俺は自分自身を制御出来ている。よし。
「暗殺者が目を覚ましました。坊ちゃん、どうしますか」
兵士の一人が部屋に入って言ってきた。
「……僕も行きます」
暗殺者がどういう者なのか興味はある。
俺は兵士に同行した。
◇
暗殺者は、簡素な椅子に縛り付けられていた。
口には猿轡をされている。
「SMプレイですか」
「違います」
兵士がそっけなく答えた。
「尋問はした?」
「いいえ、まだです」
先生の言葉に兵士が答える。
先生はじっとその暗殺者を見ていた。
「……この子」
先生は暗殺者に近づき、そのフードを脱がせる。
「……っ」
そこには。
小さく尖った耳と、そして……角。
ショートカットの紫色の髪に隠れるようにちいさな角があった。
「……魔族」
先生が言う。先生にも防止に隠れているが角がある。先生の弱点だった。先生はそこを攻められるととても弱かった。
もっともこの子もそうだとは限らないが。
暗殺者……彼女は俺達をきっと睨む。
「このままじゃらちが明かないし、話を聞くためにもこれを取ろうか」
先生がそう言う。俺たちは頷いた。
そして兵士が猿轡を取り外す。
「……殺せ」
開口一番、彼女はそう言った。
「それは喋る事全部喋ったらそーしてあげるよ」
先生が表情を変えずに言った。
「答えなよ同族ちゃん。お姫様をターミネイトにきたのは、魔族領の意図? それとも……」
「……」
少女は答えない。
そして……ただ、歯をギリリ、と噛みしめた。
ぱき、という音がした。
「! 不味い、毒っ!」
先生が叫ぶ。そして、暗殺者の少女は血を吐いた。
これは……漫画とかでよくある、奥歯に毒のカプセルを仕込んでいたやつか!
俺は駆け寄って呪文を詠唱する。
「生命の色情霊、淫らなる根源よ。我エドワルド・エルニズムが命ずる、その穢れを取り除き性情なる流れとなれ!」
俺が唱えたのは解毒魔法だ。そしてやはり俺の口から流れる詠唱はセクハラとなっている。
そう。
毒消しの魔法が俺のスキルを通すと――
「んぎぃいいいいいいいいいいいいいいいいっっっっ!!!!♡♡♡♡♡♡♡」
少女が身体を振るわせて叫んだ。
そう、俺の解毒魔法は――媚薬化魔法になってしまう。
身体を蝕む毒が媚薬へと変わってしまうのだ。
「んっ♡ んぐっ♡ くっ――んむぅうううううっ♡♡♡♡♡ ああっ♡」
いま彼女は致死量の毒がそのまま強力な媚薬になっている。
うーん大丈夫だろうかこれ。
まあ大丈夫だろう、きっと。
「す、すごい……」
兵士が感嘆の声を上げた。
いや素直に驚かれてもそれはそれで困るけど。
「……うん、生きてるね、なんとか。イってる、ともいう」
先生が暗殺者の脈を診て言う。
さて、ひとまずは安心ということか。さすがにこれで死んでしまったらなんというかいたたまれない。
「とりあえず回復魔法はかけるね。で、これからどうしよっか」
「そうですね……」
俺は考えて言う。
「仕方ない。ここは僕の魔法の実験も兼ねて、僕が魔法で尋問しますか」
「……他人事だけどお手柔らかにね」
そして。
詳しい説明は割愛するが、
「んほぉおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
「んぎぃいいいいいいいいいいいいっ!!」
「んっ、んっ♡♡♡♡♡」
「あああああああああああっっ!!!!!♡♡♡」
「らっ、らめぇえええええええっ!!!!」
「ゆっゆるしっ……んんんんんんんんんんっ!!!!!♡♡♡♡♡」
そんな声が夜が明けるまで響いたとだけ、記しておこう。
あくまでも尋問である。




