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敗北した元勇者の放蕩の旅  作者: 頂 有栖
第1章 ヘルヘイム編

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幕間の物語 01 野菜畑と穏やかな時間

マリィの異空間の中、今日は旅はお休みして畑を作って野菜を植える事にした。

ガデアを出てから少し経つが急ぐ旅でもない。少しづつ色んな事に挑戦していこう。

地面に手を当て地の基礎魔法で掘り返す。うおおん、俺はまるで人間耕運機だ。

確か野菜植える前にしっかり土を起こしてウネを作んなきゃいけないんだよな。クワとか買った方が良かったか……?いやあれ片手じゃ上手くあつかえんよな。


「京介、種は何を買ってきたの?」


モノ子が隣にしゃがむ。そういや種を買った時モノ子は居なかったな。雑貨で購入した種は小さな袋に入ってたので、肩にかけていたマジックバックから取り出して並べていく。


「えーっと、名前じゃなくて絵で書いてあるんだよな。キュウリ、トマト、ナス、カボチャ、じゃがいもっぽいやつだ。ん?芋とカボチャって秋野菜だったか?異空間内って四季とかあるのか?」


読み書きできない人用なのだろうか?この世界の読み書き普及率はどんなもんなんだろう。

……そういえばこの世界大体なんでも普通に日本語で書いてあるんだよな。言葉も日本語だし。

……もしかしてステータスに載ってないだけで翻訳能力とか持ってるのか俺?


ナスも一応秋にも食べるけど、俺は夏のナスが好きだ。焼いて味噌付けて食べたい。味噌は……流石にないよな。作り方わかんねぇし。豆とかだっけ?


「残念ながら気温なんかはずっと一緒みたいじゃ。ほれアイよ、そこに植えるんじゃ。そこなら畑に設置する照明の魔法道具の光も当たるじゃろ。」


『わかったー!えへへ、おおきくなってねー。』


「へー、なら案外どんな野菜でも育ったりしてな。」


アイも購入したリンゴ……ではなくリンガの木の苗を植えている。収穫出来るまで5~6年かかるらしいから気長にお世話していかなきゃな。

土もだいぶ掘り起こせたので、またまた地魔法でウネの形に整形していく。

地魔法ホント便利だ。昔学生やってた頃に授業で野菜植え体験とかしたけど、ウネをつくるだけでも汗だくだったからな。だがあの時の経験がちょっとは生きてると思うと嬉しい。

後は4人で種を等間隔に埋めていく。ちょっと前までRPGみたいな世界だと思ってたのに、今は牧場経営ゲームでもしてる気分だ。

牛型の魔物とか飼育してみるか?捕まえ方知らんけど。


「よし、種蒔き終わり!あとは水やりだ。そのまま水魔法使うとべしょべしょになっちゃうからいい感じに撒いてくれ。」


『はーい!こんな感じかな?』


桶に水魔法で水を汲んでいく。ジョウロでもあればいいんだが、残念ながらないので、家の裏にあった柄杓みたいなのでアイが撒いていく。

ダイモンさんに頼んでブリキのジョウロでも作ってもらえば良かったかな?

小雨を降らせる魔法とかないのかな。


「あとは照明、セット。京介、魔力流すね。」


モノ子が魔力を流すとパッと明るくなる。満タンまで魔力を入れたら半日近くは持つらしいので、朝起きた時魔力を流したらいい感じに光合成出来るだろう。


『アイがサンシャインで明るくしてもいいよー!!』


「阿呆、目が潰れるのじゃ。」


─────────────────────


畑仕事も終わったので家の裏で軽い剣の練習をする。モノ子とアイは家の中でおやつの準備をしてくれているので、その辺で拾った枝でだが。

マリィは椅子に座って見物している。


「うむ……なーんかちょっとぎこちないの。

無駄は少ないがちょっとずつ足りん感じじゃ。」


「やっぱりそうだよな。ここ2年くらい両手剣だったし。ある程度の速さと重さまでなら捌けるけど、やっぱり右腕だけだと色々きびしいな。」


「そうなのかの?アイ達がこの前剣士と戦った時は上手いこと受け流しておったと聞いたんじゃが。」


アランとの模擬戦だろうか?あれも結構ギリギリだったけどな。攻撃を食らう前提の動きや受け止める動きが出来なくなったからな。あれも経験勝ちみたいなもんだ。


「前にダンジョンで大量の鎧騎士型の魔物と戦った事があってな。最奥行くまで死ねないし、ひたすら受け流しながら戦ってたからそれで身についたんだよ。その分だいぶ酷い目にあったけどな。」


正直今まではホーリーヘイローの耐久性と能力に助けられて、今もモノ子が居てくれてるからまだ剣士を続けれてるからな。アランの技量がもっと上がっていけば今のままではいずれ対応出来なくなるだろう。

師匠なんて言われてるんだから多少は頑張らないとな。


『オヤツ用意できたよー!!』

「おお!すぐいくのじゃー。ほれ主もさっさと行くのじゃ。」

「はいよ。」


水魔法【アクアボール】を唱え、手を突っ込んで綺麗に洗う。我も我もとマリィも手を突っ込み、俺の服で拭いていた。行儀が良いんだか悪いんだか。


「お疲れ様、今日はクッキーと紅茶。」

「おお、美味しそうだ。ありがとな、2人とも。」

『えへへー、アイがお皿に並べたんだよー。』


紅茶のいい香りがする。出発前の食料買い出しの時にお菓子とかティーパックがあったので買ってみたが、こういうのも良いものだな。


「「「『いただきます(のじゃ)!』」」」


早速クッキーを1つ手に取る。一口かじればサクッと砕け小麦と砂糖の甘い味が広がる。そこに紅茶を一口飲めば少し苦味を感じるがそれもまた良い。


「ん、美味い。紅茶もよく合うな。」

『うん、おいしい!』


異世界って塩や砂糖も高級だったりするが、覗いたお店では普通に安価で買えた。魔法道具を利用した技術の進歩も結構あるみたいだし、色々学ばないとな。


「紅茶の葉っぱって作れるのかな。」

「専門的な知識や時間が必要じゃろうな。次の街についたら本でも調べてみるかの。」


その後も優雅なオヤツタイムを楽しんだ後、皆でお昼寝する。

ここが魔物の闊歩する大陸である事など忘れてしまう程穏やかな時間だ。いつまでもこんな時間が続きますように。




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