冒険の書 X13
朝、目を覚ます。
顔の上には半分溶けてるスライム形態のアイがベッタリくっついてアイマスクみたいになっている。口元が空いてなかったら窒息してたぞ。
右腕にはモノ子が絡みつき、お腹はマリィが枕替わりにしている。
全員疲れているのかぐっすりで、ピクリとも動けなかった。仕方ないので2度寝だ。
そしてあっという間に昼前になる。
モノ子は女将さんの夕飯の仕込みを手伝うと言って行ってしまった。
「京介と……2人にも美味しいご飯つくってあげたいから。」
という事だ。あと俺が好きな食べ物を聞かれたがこの世界にあるかわからんものだしな……。とりあえず軽く説明してみたら満足そうに頷いてお勉強に行った。
なので3人で約束の家の場所へと向かう。
「おお、キョウスケ殿。こちらこの家の管理をしているダイモンさんです。」
「なんでぇ?家が欲しいってのはおめぇさんかい?」
ダイモンさん色々手広すぎるだろ。武器屋に鍛冶屋に不動産って。
事情を話し、この家を土地ごと欲しい事を伝えると大笑いしながら承諾してくれた。
「そいつは豪気だ!!いいぜ、持ってけ!!元々昔一時期住んでた冒険者の借り宿みたいなもんだしな!!
今は女将の所があるからほとんど使っとらんのだ!!
しっかし魔法使いっつーのはすごいのぉ、そんなことまで出来るんか!」
「ありがとうございます!大切に使わせていただきます。」
「むふふ、我が特別すごいんじゃ!!」
ドヤ顔のマリィ。さっそく準備に取りかかるのじゃと家の方に行ってしまった。
「キョウスケ殿、後ほど時間がある時でいいのでギルドにきていただけますかな?」
「はい。わかりました。」
二人を見送り、魔力を集中するマリィを見守る。
「ううむ……。結構でかいの……。
これなら3番次元をこれ専用にするかの……。」
手で何かを操作しながらあーだこーだとするマリィ。マリィの次元魔法は1~6番の異空間を開き、そこに出したり入れたり出来る魔法らしい。
しばらくするとポンッと立っていた家が庭ごと消えた。
「うむ!!成功じゃ。早速入ってみるかの。」
『おー!中はいっていいのー?』
マリィは次元を開くと俺とアイの腕を引いて中に入る。驚いた事に異空間の中には先程消えた家が庭ごとあった。
実はこれが昨日の帰りに思いついた事。
もしマリィの次元魔法が出入り出来るものならそこを生活空間に出来ないかと尋ねてみたのだ。
するとマリィは「昼寝の時に使うから全然問題ないのじゃ。いい物件があったらやってみるかの。」という事で実行。
「凄いな……。なんか箱庭ゲーみたいだ。」
庭もあるし、視界も十分。明かりを灯す魔法道具とかあったらそれを上手く活用すれば野菜も育てたり出来るかもしれない。
火星で芋育てる映画があったが、異空間で野菜育てるのは流石に初だろ。
『わーい!!お家の中はーいるー!!』
扉を開けて中に入っていくアイ。
続いてマリィと共に中に入っていく。
中は綺麗に掃除されており、空き部屋が2つにしっかりしたキッチンやベッドが4つ繋がって置いてあったりと、俺達が暮らす上でなんの問題もない設備が整っている。
「昨日のしゃわぁというのも良かったのう。主よ、どこかにつけれんかの?」
「そうだな…。次の大陸についたら魔法都市にいってシャワー……いやいっそ風呂でも増築してみるか。」
「ならついでに外に水場も作ってくれんかの。その為に広めに切り取ったのじゃ。元の姿でたまには水浴びしたいからの。」
『水浴び水浴びー!!』
「竜の姿!?…俺も一緒に水浴びしていい?」
「……なんかやじゃ。」
うん、夢が広がる。なによりこの家のお陰でこれから旅の中でも何にも怯えることなく4人で眠る事が出来る。
「マリィ、ありがとな。」
「むふふ、まあ主のお役に立てたなら使い魔冥利に尽きるのじゃ。」
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必要そうな日用品をまた雑貨屋【ビー&ビー】で揃える。
後々もっと家具なんかも揃えなきゃだが、その辺はモノ子もいる時にしよう。
『キョースケ!マリィ!アイこれほしー!!』
アイが持ってきたのはリンゴみたいな果物のなる木 リンガの木の苗だった。
どうやら庭に植えたいらしい。
「まあ良いじゃろ。早々家よりでかくならんじゃろうし、なったらなったで外に植えればいいんじゃ。
流石に次元の1つをリンガ林にされたら困るがの。」
という事で光合成させる用の明かりの魔法道具と、その他野菜の種なんかと一緒に購入した。
何事もチャレンジだ。やってみたいって言ったことはなんでもやらせてみよう。
そして、俺達はギルドへと向かった。
すぐにギルドマスターの所に通される。
「キョウスケ殿、先日はギルドの冒険者登録の話をしましたな。」
早速本題。しかし今回のダンジョンの件で動いた事でちょくちょくこちらを見られている視線を感じた。
もし冒険者登録をしたらああいう視線も増えるだろうし、Sランク冒険者にでもなったら好奇の目だけではなく嫉妬の目も増えるだろう。
そうなればゆっくり旅をするのも難しくなるかもしれない。
「実は少し我々も悩みましてな。それで1つ思いついた事があるのです。」
「というと?」
「ギルドの臨時戦闘職員、というのはいかがでしょう?今回の件のような今居る冒険者では対応出来ない案件を対応していただくのです。
もちろん各ギルドにも話は通しますし、報酬も払います。
ギルドとしての恩恵もきちんと受けられるように対応致しましょう。
これならランク等関係なく自由に動けるとおもいますぞ。」
これは……有難い話だ。
職員なら変に目立つ事もなく、仕事をこなせる。
この子達が良くない目を向けられる事も減るだろう。
その上俺達の身元も保証される。
ギルドとしては戦力の確保もできるという訳だ。
「ありがとうございます。そのお話、お受けしようとおもいます。」
こうして俺は、一応手に職を付けることも出来た。といっても好き勝手に旅するのは変わらないけどな。
でも今回みたいに良くしてもらった恩を返すくらいはやっていってもいいだろう。
「そういえばキョウスケ殿達は明日たつのでしたな。次はどちらに向かわれるか聞いていいですかな?」
「そうですね。ヘルヘイムを出てマリーシアに向かおうかと。俺も仲間達も魔法都市に興味がありますし。」
「やはりそうですか……。いえ、どうも今マリーシアとヘルヘイムの間の海路でトラブルが起きてる様でして。どうも要領を得ないのですがお気をつけ下さい。」
海路でトラブルか……。そういえばヘルヘイムに渡る時は俺隠れて入船したんだったな。
……今は金あるし話せるしちゃんと乗れるとありがたいが。
その後は職員となる軽い手続きをして解散となった。
ギルドの職員カードというのも貰ったし、これで色んな所に楽に入れるらしい。……悪用はしないよう念を押されたがな。
そうこうしているうちに時間は過ぎ、ガデア最後の夜となる。
宿に帰るとモノ子が待っていてくれた。
「ただいま、料理楽しかったか?」
「うん、色々教えてもらった。昨日のお肉も美味しく女将さんが美味しくしてくれた。」
そう、昨日のドラゴンの肉だ。せっかくなので他の冒険者にもドラゴンの良さを知ってもらおうと食堂で出してもらう事にしたが果たして。
そう思いながら席につく。
すぐに給仕のお姉さんが4人分の食事を持ってきてくれる。
ば……ばかな……。これはトンカツとからあげ!?!?しかも米だと!!?
モノ子の方を見るとドヤ顔をしている。
モノ子に好きな食べ物を聞かれた時にトンカツと唐揚げと答え、特徴を言ってたんだが弁当にも入ってた唐揚げに加えてトンカツも再現してくれたのか!?
「女将さんに言ったら似たような料理を知ってるって言って作ってくれた。
こっちの白いのはベイっていうんだって。こういう料理に合うから「今日は大奮発だねぇ!!」って。
作り方教えてもらったから、また作るね。」
「……ありがとう、モノ子。すっごく嬉しい!!
よしっ、じゃあ早速!!」
「「「『いただきます(じゃ)!!』」」」
まずはトンカツ……いやドラゴンカツにかぶりつく。ザクッという音と共に肉と脂身のハーモニーが……。脂……?ブランホーンレクスに脂身はほとんど無かった様な…。
そうか、これは…オークの脂身!!異なる肉を合わせる事で再現度を上げつつ、カツの美味さを引き上げてるのか!!
美味い上に天才すぎる。初めての材料でここまで完璧に作れるものなのか。女将さんは天才だな。
かかってるソースもトンカツソースみたいで最高に美味い!!
続いて食い損ねていたエアロコアトルスの肉で作った唐揚げ。
一口かじった瞬間、バリパリな衣と肉汁が爆発する。しかも衣にもしっかり下味がつけられている一番美味しいタイプの唐揚げだ!!
すかさずベイを食べる。間違いなく米だ。肉料理を食う上で今まででこれが無かった事を恨まなかった日はない。
夢にまで見た食事が俺の胃袋を満たしてくれた。
「うまい!!おかわりー!!」
俺のおかわりを皮切りに仲間達や周囲の冒険者達のおかわりの連鎖が起きる。
最後のガデアでの夕飯もとても騒がしく楽しいく、そして美味しいものとなった。
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翌日、結局5泊もしてしまった宿をたつ。
食料の買い出しなどを済ませ挨拶まわりをしようと宿屋に戻ると、女将さん達やダイモンさん、ギルドマスターも見送りに出てくれた。
「「「『お世話になりました(のじゃ)!』」」」
「美味しそうにご飯食べてくれてこちらも嬉しかったんだねぇ!!また何時でもくるんだねぇ!!」
「モノ子ちゃん!胃袋掴み大作戦、頑張ってね!」
「ガッハッハ!!ほんとに家が消えとったの!!まあなんじゃ、武器や調理器具が入用になったらいつでもこい!!」
「こちらこそお世話になりましたな。道中、お気をつけて。アラン殿の事、よろしくお願いします。いつか京介殿のようになると張り切ってましたので。」
皆が見えなくなるまで手を振り、ガデアを後にした。
『つぎはどこいくのー?』
「そうだなー。ヘルヘイムにはもう街もないからな、南東に物資や人を運ぶ船着場があるからそこに向かおうか。なんかトラブルあったみたいだけど。」
距離的には結構あるが、マリィのお陰で野営する必要もなくなった。
急ぐ旅でもないしのんびりいこう。
「ご飯の材料もしっかり買った。」
「むふふ、まあ船に乗れぬなら我がお主らを乗せて次の大陸まで泳いでも良いがの。」
こうしてたった1人で始まった俺の冒険は、いつしか4人の賑やかな旅になっていた。
やっぱりまだ目的のある旅じゃないけど、きっとこの子達と一緒ならどこだって楽しくやれるだろう。
とりあえずは目指せ、次の大陸マリーシアだな。
第1章 おわり




