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第26話

 

 アキナを実験室に帰してから、自分は温室に残って温度調整機(エアコン)の魔改造を開始した。まずは、魔導具の機能を停止させ、カバーを外して細工が必要な基盤部分を露出させる。すでに最初にある程度確認は済んでいたので、壊さないように本体から慎重に基盤を取り外し、それを作業台のある場所まで運んでいく。


 無論、その場で作業をしても良かったのだが、狭い場所へコンパクトに基盤が収納されていたため、奥の方を(いじ)ろうとすると手が入りそうになかったからだ。取り外されたこの基盤こそが、ガレットが創り上げた温度調整機(エアコン)の心臓部になる。実に堅実な仕事ぶりが見て取れる素晴らしい出来栄えなのだが、これまで以上の性能を出させるために、今から少し内部構造を弄らせてもらうことになる。


 これは人にもよるかも知れないが、これだけ出来の良い物を改造させて欲しいと頼むと、製作者としてのプライドが許せずに怒鳴り散らす人もいるのだが、ガレットは『むしろこの先にある技術を見てみたいと』心置きなく許可を出してくれたので、その器の大きさに敬意を称して、ここは全力でやらせてもらうことにしよう。



 以前に使用していた錬成陣の中から使えそうなものをチョイスして、今取り外してきた基盤にパーツを付けれるために、少しだけ魔力路に修正を加えてゆく。それが終わったら、今度はそこに持ってきたパーツを順番に接続していくのだが、この辺は電子基盤をいじっている感覚に近いので、向こうの世界で表現するのなら、新しい基盤を追加で接続しながらハンダ付けのオンパレードをしているようなイメージであろうか。


 丁寧に作業を進めていき、特に失敗することもなく新しい基盤を完成させたので、後は魔導紋(ルーン)を刻んだ魔石を新しく追加で台座にセットすれば完成である。


 次は出来上がった物を本体に接続させなくてはならないのだが、出来上がった物は最初に収納されていた基盤より追加されたパーツ分面積が大きくなってしまったため、そのままだと既存のケースに収納ができないので、今度は本体部分のケースに微調整を加えることになるのだが、基盤が入る箱を少しだけ大きく加工するだけなので、そこまで苦戦することなく作業を完遂することができた。この辺は向こうの世界より、こちらの方が楽なので助かる。



 アイテム名


 『温度調整機(エアコン)』【改】


 細かい温度設定をすることができるようになり、出力が大幅に向上した特別モデル。また、燃費面でも低コスト化を実現している。


 作成者:ガレット・ローレンス


 改造者:那戳(ナタク)




 何とか無事に改造を成功する事ができた。あまり性能を変化させ過ぎると、たまに別アイテム扱いになって作成者の名前が消えてしまうこともあるので、今回は名前を残せて本当に良かった。これで、明日ガレットに胸を張って魔導具を見せることができそうだ。


 ちなみに、これだけ高性能にしても空気清浄機型の魔導具の性能に少しだけ近づいただけなので、アチラの魔導具がどれだけ馬鹿げたスペック保持しているかがお解りいただけるかもしれない。


 (それをたった金貨150枚で販売しているのだから、安い物だと思うんだけどなぁ・・・・)



 作業もひと段落したので、作物の様子を少し見た後に戸締りと片付けを済ませて、自分も実験室に戻ることにした。やはり作物の方は後二時間以上は掛かりそうなので、今日の作業は諦めて明日改めて植え替え作業をすることにする。なんだかんだで、もう夕刻に近い時間になってしまっていた。



 実験室に戻るとアキナも早めに作業を終えて、クッキーを食べながら自分の帰りを待ってくれていたようだ。



「お待たせしました。此方も終わりましたので、今日は帰りますか」


「先生お帰りなさい、すぐ片付けますね」


「アキも早めに作業を終わらしてたんですね」


「流石に昨日は殆ど徹夜でしたからね。根を詰め過ぎても身体を壊すだけなので、今日は帰って休むことにしました。それに今日は結構サンプル作りも進みましたからね。


 ついでに、先ほどミーシャさんにギルドカードを新しくして貰ってきましたよ。ほら、これです」


「おぉ、おめでとうございます!」


「えへへ、ありがとうございます」



 ご機嫌なアキナと一緒に戸締りを済ませて帰ることにしたのだが、まだ日暮れまでには時間があったので、この前ミスリルインゴットを購入したお店に追加の金属を買いに二人で行くことになった。ちなみにアキナは疲れていそうだったので、最初はナタク一人で買いに行こうとしたのだ、彼女に敢え無く却下されてしまった。



 (アキナさん、別に無駄遣いはしませんよ?あっ、はい。何でもありません!)



 店に着くと、アキナがまたもや野次馬を味方につけた大立ち回りで頑張ってくれたおかげで、今回も拍手喝采の中、金貨100枚ほどで結構な種類と量のインゴット購入することができてしまった。前回以上に店の亭主の笑顔が引きつっていたので、店側もかなり限界近くまで頑張ってくれたのであろう。



 (解ってます、頑張ってくれたのは解ってますから。俺をそんな悲しそうな顔で見つめないでください。今度いい値でこっそり買いに来ますから!)



 店の亭主に後ろめたさを感じながら、ご満悦なアキナと一緒に今度こそ宿屋へと帰ってきた。


 そこで、アルマ用のブカブカのエプロンドレス姿で給仕の手伝いをやらされているアテナをアキナが発見して、『アテナちゃんにも、お似合いの給仕服を作らねば!』という熱意に燃え始めていたので、今日はちゃんと寝るようにとデコピンをしながら釘を刺しておいた。自分もあまり人の事は言えないが、ハイになっている職人はこういう時にちゃんと言っておかないと、また徹夜しかねないからだ。


 それから食事を終えた後、自分は寝不足という訳ではなかったので風呂を済ませ、眠くなるまで窓を開けて夜風で涼みながら、ランプの明かりを点し、明日作る予定の魔導具の設計図とガレットに提出するレポートを書いて過ごしていたのだが、どうやらアキナは風呂から帰ってきてからすぐに眠ったようであった。



 (先ほどまで元気に振舞ってはいたけれど、実は相当疲れていたのでしょうね。アキ、本当にご苦労様でした)




 翌朝、すっきりと目を覚ました元気いっぱいのアキナと一緒に錬金ギルドに向い、朝の植え替え作業を終わらせた後に、今日も二人で錬金術師のレベル上げをして午前中は特に何事もなく平和に過ごすした。こちらも順調にレベルが上がってきているので、この調子だと素材がなくなる頃にはまたポーション作製でのレベル上げ作業に戻れそうである。


 そういえば、今日は朝一でガレットが実験室に訪ねて来ると思っていたのだが、受付にいたミーシャ曰く、どうやらガレットは夕方近くまで外回りなどの予定がびっちり詰まっているらしく途中で抜け出すことができそうにないので、その予定を済ませてから此方に話を聞きに来ることになったそうだ。



 (やっぱり真面目に働いてる管理職って大変なんだな、昔の上司達とはえらい違いだ!)



 今日も屋台飯でお昼は軽く済ませたので、午後一の植え替え作業の後は昨日に引き続きこのまま温室で魔導具作りをすることにした。アキナも心配そうにしてたのだが、彼女には彼女の仕事があるので後ろ髪を引かれながらも渋々と実験室の方へと帰ってもらった。どうやら、魔導具作製がかなり気になっていたようだ。



 (さてと、それではアキの期待にこたえる為にも、頑張って魔導具作製をやっていくとしますか!)



 今から作る魔導具は『リサイクルボックス』と言う名で、ゲーム時代に所属ギルドの商会から発売されていた物になるのだが、使用方法は魔導具に設置してある錬成陣の上に鉢植えを置いて装置を起動するだけで、植えられていた植物が分解されて土や肥料にしてくれるという優れ物である。しかも、盗難対策で処理の大変な余った種までも綺麗に分解して肥料にしてくれるので、“品種改良”の作業には持ってこいの機能を備えていた。


 また、生ゴミ程度ならばこの装置にかけるだけでたちまち水と土に分解してくれるので、環境にも優しい非常に優秀な人気の魔導具になるはずだったのだが、製作コストと技術料がかなりお高くなってしまい、此方も敢え無く売れない魔導具の仲間入りを果たしてしまっていた。


 当たり前ではあるが、生ゴミならば埋めてしまえばいい話だし、種なども盗難を考えなくてはいけない者などゲームの頃ですらごく少人数だったので、喜んで使っていたのはナタクくらいなモノである。しかし、この“品種改良”の実験にはかなり有用なアイテムなのは変わりないので、気にせず作ってしまおう。



 (この魔導具も、いらない子なんかじゃないんだぞ!)



 昨日アキナにも説明した通りこの魔導具の作製難易度はかなり高く、特に基盤部分に希少な鉱物資源を多数使うので、一度の失敗で全て使い物にならなくなってしまうことを考えると、かなり慎重な作業が求められる錬成となっている。


 そもそも、普通に作ったとすれば錬金術の等級2相当なので、今の自分でも少々レベルが足りないため、今回も“マニュアル錬成”の力を借りて強引に作製していくのだが、ここ数日で錬金術師のレベルもかなり上昇しているので、実はナタク自身は成功率もそこまで悪くないと考えていた。成功率2割と言ったのは、あくまでなんの対策をしないで錬成を使っておこなった場合の話である。


 それに、この錬成は錬金術の色々なスキルを上手く使いこなして作らないといけないので、自分用のいい練習教材だとも考えていた。



 それでは、まず基盤に接続するパーツ作りから始めることにする。実を言うと、本来この作業は必要なく。錬成を開始すればその過程でパーツも一緒に作ることができるのだが、今回難易度を下げる対策として個別にパーツを作り、少しでもリスク分散を狙えるようにこの方法を採用した。


 もしこの作業を一括でおこなった場合、どこか一ヵ所でも失敗してしまうと全て最初からやり直しになってしまうので、それを考えると安い出費で済む可能性があるこの方法が今の自分にはベストな選択だと言えた。



 作業を進めていくと、やはり途中のパーツ作りで錬成陣が暴走してしまい、3回ほどパーツを駄目にしてしまったのだが、通常の方法でこれをやっていた場合3回分を無駄にしてしまったことを考えると、やはりこの方法を選んで正解だったと言えた。その後はなんとか順調に作業は進み、後はこれらのパーツを設置する基盤を作れば完成なのだが、この作業が一番失敗しやすいので更に注意しながら作業を続けることにした。


 ちなみに、今回は彫金細工の作業台で作業をしていないのは、特殊な形状のパーツが多いのと希少な鉱石を均一に合成しながら作業しなくてはいけなかったため、錬金術の『形質変化』を利用して全ての作業をおこなっていた。また、今のレベルだと錬金術を使った方が正確な物が作れるのも、此方を選んだ理由の一つでもある。


 金属板に丁寧に魔力路とパーツの接続箇所を刻み込み、できた物にこれまで作ったパーツを慎重にセットしてゆき何とか失敗しないで一番の山場である基盤作りを成功することができた。後は金属板に錬成陣を刻み、基盤を収める箱を作れば完成である。それと、防犯対策として正規の手段でこの箱を開けないと中の基盤が自壊するギミックもちゃんと仕込んでおいた。用途からいって盗む人などいないとは思うのだが、何も対策しないのはあれなので、“念のため”というやつだ。



 アイテム名


 『リサイクルボックス』


 錬成陣の上に置かれた植物などを、分解して肥料や土に変えることができる。


 作成者:那戳(ナタク)



「やっぱり、これクラスになると高品質はまだ難しいか。でも何とか無事に目的の物が完成できので、これで植え替え作業がかなり楽になりますね」



 残念ながら嬉しさを共に分かち合える人がこの場に誰もいなかったので、もうすぐ今日最後の植え替え作業に訪れるはずなのアキナを大人しく待つことにする。今回は殆ど失敗もしなかったので怒られもしないであろう。ワクワクしながら時計を気にする、少し子供っぽいナタクの姿がそこにはあった。

ちゃんと、寝なさい!(`・ω・´)б


あうちっ!(≧▽≦)ゞ


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