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名ばかり聖女の覚醒~聖女は生贄なんて聞いてません  作者: 南の月
第一章 闇の国

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第1話 プロローグ

常闇の国ミュンダーに今新たな希望が生まれた。

久しぶりの明るい話題に人々の顔は期待に満ち溢れ、男も女も、大人も子供も皆が祈りの丘のふもとにある神殿を目指した。

祈りの丘は英雄マキレスが魔王と戦ったときにミュンダーの民が集まり祈ったことからその名が付いた丘で、ミュンダーの民たちは何かがあるとそこに集まるのが常だった。

ラッパの音が鳴り響き、神殿からミュンダーの王や王妃、神官たちが出てくる。

王位を継いだばかりの若い王は集まった民衆を見渡し、声を張り上げた。


「予言者エムリは皆も知っての通り、神の庭へ帰られた。だがその前に我々に最後の予言をくださった。闇を晴らす聖女の予言だ!」


神殿前広場に集まるミュンダーの民たちは王の言葉に歓喜した。

ようやくこの闇が晴れる時が来たのだと。

神殿前広場が喜びにあふれているのとは対照的に、神殿内部には暗い顔をした男が二人。一人は立派な祭礼服を着た大人、もう一人はまだ十歳くらいの少年だった。神殿の長とその息子だ。

神殿の長は息子から赤子を受け取る。


「闇が晴れるというのに、最悪の気分です」


長は息子の言葉には答えず、赤子を連れて王たちのいる神殿の前へと出て行った。

王の後ろから前に出てきた神殿の長は、祈りの丘のふもとに作った神殿から集まった人々をぐるりと見回した。


神殿入り口にたくさん焚かれたかがり火、祈りの丘の周辺に高くそびえる蓮灯ハスアカリに照らされて、無数の人がぼんやりと見える。

はっきりとは見えなくとも、何百もの視線で確かに多くの人がここにいるのだと、ここから何かが起こると期待している様子が手に取るように分かった。

一息吐いて、抱いていた赤子をミュンダーの民の前に掲げて見せる。神殿の長が出てきてから静まり返っていた神殿前広場に一つの声が響いた。


「聖女様、予言の聖女様の誕生だ!」


その言葉をきっかけに神殿前広場が揺れた。誰もが歓声をあげ、「聖女様ー!」「俺たちの希望だ」、「どうか光を!」と生まれたばかりの聖女へ声をかけた。

常闇の中に沈んでいたこの国に一つの希望の光がともった瞬間だった。人々の歓声が聞こえたのか、神殿の長の腕に抱かれている赤子がふぎゃあと声をあげて泣いた。


数ある小説の中から見つけて、選んで、読んでいただきありがとうございます。

名ばかり聖女は既に最後まで書き終えていますので、これから毎日更新する予定です。

一章の間は複数更新、その後は少しペースを落としつつ毎日更新。

楽しんでいただけるといいなと思います。


この小説はカクヨムにも投稿しています。

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