犯した罪
あまり話たくないがために会話がつながらない。沈黙の時間を計っていたら一体どれくらいであるだろうか。
「圭太、エリア情報システムがあそこまで警察をなめ切っているのは八木家が加藤剛に頼ったのが始まりだ。それが殺人事件を隠すことになったんだ。俺の事件を隠しているのを誰かから聞いたといっていた。壊れ始めたのはそうだよ。」
「親父は十字架を背負ったことがあるか?背負ったつもりではいけないことなんだよ。警察というのは最後の砦なんだよ。分かってたのかよ。家庭を言い訳にしていただけじゃないよな。」
幸助は核心をつけられたのだ。思わず失笑してしまった。それは自分に対する呆れなのかもしれない。圭太は不機嫌な顔で見つめている。
「猛はきっと甘く見ているところがあるのはわかっているだろう。どうか更生させてやってくれないか。また大きな犯罪を起こすかもしれない。」
「俺は興味がない。事件を解決するのが優先だ。エリア情報システムにわいろの受け渡しをしていたのは事実か。情報を流していたのも・・・。」
圭太は容赦なく言葉の矢を的に向けて狙ってくる。外れることがないように慎重でありどこか大胆であった。当たっているのに気付いているのにまだ動こうとする姿は笑いものとしか見えていないだろう。
「あぁ。俺が流した。情報を流し始めたのは俺からだ。金だけでは無理だと黛がいってきたからな。俺も断ったら別のもので脅されることがわかっていたから。」
「そうか。あんたについている弁護士は最悪なくじを引いたな。此処で謝罪しながら生きてくれ。俺たちは裁判にもいかない。もともと他人同然だからな。」
彼の捨て台詞を聞いて幸助はため息をついた。何処で間違ってしまったのだろう。見えないプライドに負けたのかもしれない。圭太は出てくると声をかけてきた。
「今日はもう終わりですか?」
「いいや。もう1人会わないといけないんです。社会の厳しさなんてろくに感じたことがなかった人に。兄弟なのに他人だとしか思えないんです。一緒に暮らしたことなんてないんですから。」
再び用紙に名前を書いて同じ道を行く。来ることはないだろうとわかっているから。誰も出てこいとは思わないのもわからないのだから。運命だなんていう言葉では片づけることができないのだ。言いなりのロボットであったのだから。考えるということをしてこなかったとしか評価できない。会うのは最後だと思うと寂しさとは感じない。当然だと。




