穢れた論
あいつと会うのは普段からいやでしょうがなかった。性格が合わないとかいうレベルじゃないと思っている。刑事として捜査一課に入ってきたとき、叩きのめすつもりだった。けど、事件解決するのはあいつばかりだった。周りがコンクリートで囲まれているのを見ながら思うのははかないと思ったりするのだろうか。いつもの制服の若造が来た。
「会いに来ている人がいる。面会が最初で最後になるかはお前しだいだ。覚悟していけ。それができないのならその人に帰ってもらうことにする。」
いつもの口調の裏にある誠実さを改めて感じることになった。猛は小さな小さな檻で深呼吸をした。会いにくる人はいないだろうと思っていたから。面会室へとつくと胸の高鳴りを感じた。縮こまってしまいそうになるのを抑えながら入った。そこには圭太が模範のように座っていた。沈黙を破るのは意外と早かった。
「さっき、親父と会ってきた。死刑を覚悟しているようだったから安心したよ。それでお前は元気か?」
使い古したスーツが功績をたたえているように見えた。
「元気だ。それで俺に何の用だ。」
「俺にも源太郎さんにも手紙や出た後の手助けを求めるのはやめてくれ。ただでさえつながりがなかったのにいまさら頼られるのは不愉快でしょうがない。人殺しの言いなりになったんだ。それくらいの覚悟があったとしか思われないだろうし。」
弁護士は刑務所に行くのは確実だと明言されていた。圭太は自分の行った行動に責任を持たなかったからだといっているように見えた。
「今の捜査一課は崩壊している。上が突然のことで対応ができてない。お前が戻ってこれなくなったし、お前が思っているほど世の中甘くないんだ。出た後苦労することから逃げたらあんたの人生そんなものだったとしか評価されないだろう。」
警察につながりを持ったやつは迷宮入りとして事件は解決するものだと思い込んでいた。身内の甘さに甘えていたのかもしれない。
「源太郎さんは今、何しているんだ?」
「お前には関係のない話だ。兄弟なのに兄弟のように扱われなかったからな。他人だと思っておくのが正しいだろう。」
圭太に言いくるめられているのはわかっているが異論をいえるような状況ではなかった。お袋が殺された日を一度も思い出したことはなかった。かえる場所に苦しむ2人をそのころはよくあざ笑っていたのを思い出した。
「圭太、これで最後なのか?」
「俺はここには二度と来たくない。遅い反省だなんてどうしょうもないから。おきる前に止めることのできた人間なんて大勢いたけどこの程度だったんだな。」
透明な板が写すのは今まで避けてきた。道であったのかもしれない。狭い小さい世界におぼれていたのだと改めて思った。
「被害者に謝罪して聞き入れなかったといって騒ぐのが一番見苦しいからな。」
それが圭太の最後の言葉であった。裁判が始まる前であったために刺さる言葉を山のように聞けたことがよかったのかもしれない。猛はまた檻に戻ると本もない。瞑想する時間だけが続いていくのだ。阿部の事件はきっと圭太が解決するだろう。自らの穢れた手で犯していたのだと考え直した。




