映すもの
コンクリートの壁を見てため息をつく。誰かが背中を押してくれるわけではないだろう。重たい足を動かした。入ると重たく感じる制服を着ている。
「面会に来たんですが・・・。」
「そうですか。では用紙に書いてお待ちください。」
彼にはわかるだろう。何人もそういう人物に会ったのだから。ベンチで下を向いていた。呼ばれたため向かうことにした。
「緊張されてますか。」
「えっ!まぁ。会いたくない人に会うんですから。本人はどう思っているかわからないですけどね。」
「ここに来るのは極端ですよ。貴方ならわかるでしょう。刑事として働いて遺族のつらい顔を見ているのですからね。更生してほしいと思ってはいますけど、どこか幻想の感じなってしまっているのがいけないんですかね。」
彼の苦しそうな声にこたえることができなかった。ゆっくりと歩いていてもすぐにきてしまうのだ。彼は一礼をしていなくなった。面会室へと入るとパイプいすが理を知っているかのようにある。座って待っているとノックがなされた。幸助はだぶだぶの服を着ていた。誰も此処に訪れていないのだ。
「圭太。どうしてお前が・・・。」
「俺はあんたのしたことの精算をしているだけだ。エリア情報システムの事についてあんたに聞いたほうが早いと思ってから来ただけだ。もう親子じゃないだ。勘違いするな。」
幸助は晴れない表情をした。分かったのだろう。望んできているのではないのだと。事件を解決するために来たのだと。
「元気なのか?」
「まぁな。取り調べに応えているよ。もう言い逃れなんてできないからな。圭太は?」
「俺はわかるだろう。元気じゃないとこんな気分を害するようなところ来ないよ。」
裁判が間もなく始まるのは噂で聞いていた。結果は最悪なほうへ転落してほしいと思っているのだ。
「お前の思っているようになると思っているんだ。俺は何人も殺している。それに逃げている。裁判では甘くは見てくれないだろうからな。」
「猛は軽いだろうから出てくるだろうが俺たちには頼って欲しくないし手紙なんていうゴミはいらないからな。源太郎の邪魔をしてしまっては今までが水の泡になってしまう。分かるだろう。あんたが甘やかして社会をなめ切った結果だよ。後悔でもなんでもするがいい。あんたはかえって来れないだろうから。」
圭太は早口で言うので幸助は落ち着いて聞いた。口を出すのはいけないのだから。奪ったのだ。自分本位の勝手な考えで犯してしまったものだから。




