逃げ足だけは速い狸
一ノ瀬は榛原たちと宇佐美史郎の殺害現場にいた。ナイフで急所を狙われたのだ。
「絵はあるか。絵に関することがあったらいってくれ。」
「村沢巧も阿部登も今回の事件はすべてつながっているといいたいんですか。あくまでもという創造に過ぎないはずですよ。」
強盗が入ったようにあらされているがどこかで作られているようにも思えた。探していたのか。探したふりをしたのか。不思議に思ってしまうほどだった。八木が来ないということは別で調べることがあるといっているも同然だ。
「聞いていないのか。工藤と八木はエリア情報システムの社長に疑いを持っていることに。警察幹部から多額の賄賂をもらっていたという証拠はまだ探している段階だが、阿部登が絵で伝えたんだ。秘書になることを望まず画家として生きると決めたときに殺されたんだ。」
「裏社会とつながっていると知られたら警察の地位も下がるのはわかっているんですよね。それでも調べるのは何故ですか?」
榛原はいまさらという表情をした。鑑識はよく利用されるだけの集団に過ぎないと思っていたが認めてくれる人がいた。かってに調べても何もいわない。むしろやってくれといっているようにも思えた。
「捜査一課の八木幸助についていたことを思い出したか。それか立場が怖くなったのか。政治家の圧に負ける警察は役立たずであるといっているのはそこらへんにいる民間人だ。事件が起こらないと助けない。
最後の砦なんて最低なんだよ。未然に防ぐことの大切さを一番知らないといけないんだ。権力で押しつぶすのはただの傲慢な気持ちが抑えきれない子供のようだからな。」
「事件解決することで誰かが救われればそれで十分ということですか。」
部屋を見回しながらいった。証拠なんて出てこないだろう。2件の事件には毛髪と靴跡しかなかったからだ。ほかの捜査一課の連中はボイコットしておきながらきっと手柄だけは奪うつもりだろう。小ざかしいんではない。解決できないのではない。するつもりなどさらさらないのだ。
「ホシは何かを伝えようとしている。そのかけらだけでも拾い上げると出来上がることだって少なくない。小さなミスが命取りになるんだ。冤罪を起こさないためにも真剣に探せ。」
完全犯罪など言うのは少ないだろう。警察が未解決事件であるというやつの中にもきっと身内隠しが出てくるはずだ。差別を起こすのではない。遊びに過ぎない正義などいらない。解決しないと報われないことだってあるはずだ。
「これってつながるんですか?」




