罪への思い
管理人は八木と工藤があまりにも真剣である事にどこかで背中を押されている感じがずっとされていた。
「その絵を見せてもらうことでできますか?できれば作品の名前もわかればいいのですが・・・。」
「いいですよ。唯一その絵についてのっている冊子をもってきます。」
村沢がテレビに取り上げられる能力を捨ててまで画材店をしていたことがわかるということだ。ある理由があると思ったが此処まで影響力があるとは到底思うはずがなかった。
「珍しい客がいるものだ。」
「客ではないんですけど、宇佐美っていう人、ここに来ませんでしたか?」
「週刊誌の記者だろ。来たよ。村沢さんが書いた『炎の悪魔』を見てきたし画家について掘り起こしていた。ギャラリーがいわくつきなだけにね。」
その老人は通いなれているのかわかっているように歩いて行った。宇佐美史郎は何処からか聞いた噂をたどってきたのかもしれない。そして自分の画家として活動をすることにした。少なからず身を隠すために。管理人は重たそうにもって来た。ガラスのテーブルにその絵をのせた。
「『炎の悪魔』です。見ればわかるような絵だと思います。刑事さんですからね。新聞の記事になったがすぐに迷宮入りした事件の真実が残ってます。」
絵にのっている布を取った。描かれていたのは一ノ瀬と書かれた暖簾とはっきりとした人の顔だった。紛れもなく一ノ瀬という和食屋を燃やしているのだ。村沢はたまたま近くにいたと予想される。事件で話を聞かれなかったことに疑問を感じ描いた。画家としてやるのは最後というように。
「巧さんはこんな絵を描くのはよくある事なんです。まるで写真のような感じなのは。ただこんな痛々しい絵を見たのは初めてでした。自分は画家としての資格を亡くしたと思っても可笑しくないでしょう。有名人がこんな絵を残したとしれば警察や政治家が殺しに来ると考えてしまったのかもしれません。」
「だから、いわくつきのギャラリーに残したと思っているのですね。見つけられなければ狙われることはないと考えたんですよね。画家はやめて画材店をしてどこかにある罪から逃れたかったのですかね。けれど捨てられないことがあったんでしょうね。いまだに絵を描いていたり油絵を教えていたんですから。」
管理人ははっとした顔をした。聞いてみるとこの絵のコピーが欲しいといってきたことがあったと。油絵の題材としてもって来たのだろう。ぬぐい切れない罪に押しつぶされながら。




