第96話:乱闘騒ぎ
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翌日、生徒会室は険悪な雰囲気に包まれていた。
その渦中には浩樹と帯刀。
浩樹は今にも殴りかかりそうな勢いで帯刀を睨み付け、対する帯刀は飄々とした表情でありながら氷のように冷たい視線を浩樹に浴びせていた。
「何故だ!?何故こんな事をした!?」
「言われている意味が理解できないが?第一俺がやった証拠が何処にある?」
涼しい表情で悪ぶれもせず言ってのける帯刀に怒りがピークに達した浩樹は、彼を拳で殴り付けた。
机の上にあった筆記用具が音を立てて床に散らばる。
浩樹はそれを踏みつけながら進み出で更に殴ろうとしたが、帯刀が何処から出したのか机の引き出しを盾の代わりにして、浩樹の拳を受け止めた。
腕が痺れる程の重い振動と共に引き出しの底が拳の形にひしゃげるのを見遣りながら、帯刀は呆れたように呟いた。
「バカ力が。使い物にならなくなっただろが。どうしてくれる?」
そして、今度は帯刀が殴ろうとしたが浩樹はそれをかわして後方へ下がり、間合いをとった。
だが、そうはさせまいと帯刀は、浩樹の胴体目掛けて回し蹴りを喰らわせた。
腕で防ごうとしたが威力の方が勝り、浩樹の身体は凪の机へと吹き飛ばされた。
そのまま凪の机に寝そべるように倒れ、机の上にあったパソコンが転落して派手な音を立てて壊れた。
その惨状に凪を安全な所へ下がらせ、越智が止めようと前に出ようとした。
しかし、そのタイミングで紫藤が越智の前にボールペン転がし、越智はそれを踏みつけて滑るように転んでしまった。
「馨!!何するんだ!?」
越智は紫藤に苦情を言うと、彼は楽しそうに笑った。
「いいところなんですから邪魔しないで下さい」
「邪魔って、お前なあ!!」
「折角のチャンスなんですから、そこで大人しく見ていて下さい」
それを聞いて越智は信じられないといった表情で紫藤を見ると、彼はそれ以上喋るなとばかりに口元に人差し指を当てた。
越智は納得がいかなかったものの、大人しく引き下がる事にした。
だが、凪は堪えきれずに浩樹と帯刀の間に入った。
「お二人共鎮まってください!いったいどうされたんですか!?」
すると、浩樹が帯刀を睨みながら経緯を説明した。
「コイツが俺のパソコンから教頭に情報を流したんだ」
「何故俺だと判断する?生徒会室に潜り込んだ誰かかもしれないだろ?」
いけしゃあしゃあと言う帯刀に浩樹は椅子を投げつけた。
それを帯刀が避けた為椅子は窓ガラスを割り、外へと飛んで行った。
「以前、紫藤がセキュリティを強化したのだからここにいる者以外の仕業とは思えない!」
「じゃあ、紫藤がやったんだろ?」
「紫藤になんのメリットもないだろ!?」
それを聞いて帯刀はニヒルに笑った。
「ならば俺になんのメリットがあると?」
「……俺が何も知らないと思っていたのか!?
お前は昔から生徒会長の椅子を狙っていただろうが!!
あの情報が公開されれば、俺は管理能力を疑われ失脚する。そうすれば晴れてお前は生徒会長になれるもんな!!」
その言葉に、帯刀は高飛車に笑い出した。
「何がおかしい?」
およそ浩樹らしくない怒気を孕んだ声だったというのに、帯刀は怯むどころか開き直ったかのような笑みを浮かべた。
「いや、バレていたのかと思ってね。なら、認めよう。そうだ。俺は生徒会長になりたかった」
「ほら見ろ!!」
「バレたのならもうここにはいられないな。だが、俺は生徒会は辞めない。寮のパソコンからでも仕事は出来るからな。
では、失礼する」
帯刀はそう言うと、本当に生徒会室から出て行った。
(なんだろう?この状況は……)
帯刀がいなくなった後、全員で生徒会室の片付けをしながら妙な違和感に凪は首を傾げていた。
越智もそれは同じだったようで、複雑な表情で壊れた物を袋に詰めている。
「……コレも利用されたらマズイな」
浩樹はそう呟くと、自分のパソコンからUSBを抜き取り、それを踏みつけて完全に壊すとゴミ袋に入れた。
それを見て紫藤が嬉しそうに笑った。
「よく分かりましたね?」
すると浩樹は苦虫を噛み潰したような表情になった。
「俺はもう少し泳がそうと思っていたんだぞ?」
「でしょうね。ですが、僕は少しでも不快を感じて仕事をするのは嫌いですから」
浩樹は呆れたように溜息を吐くと、越智と一緒にゴミを捨てに生徒会室を出て行った。




