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第93話:裏切り【3】

 


 どうしたものかと考えあぐねているといると、帯刀が名案があると自信たっぷりに笑った。



「一見大海原と同じ『魅了』の能力。危険だと感じるかもしれませんが、これは効果的に利用できます」


「何故だね?」


「ここで、理事長が樹神を強引に入学させたもう一つの理由が使えます」



 教頭の目が興味深そうに光るのを見て、帯刀は続けた。



「理事長は彼女がテニス選手だった頃に彼女を見初めたそうです。

 これを聞いた時、樹神が女で良かったと感じずにはいられませんでした。何故なら色恋沙汰は修羅場を作りやすいからです。

 先程も申した通り、大海原は樹神に惚れている。そして理事長も樹神に惚れている。

 という事は樹神を使えば二人は仲違いし、生徒会と理事長の繋がりも壊れます」


「確かに名案だが、本当に理事長が彼女に惚れていると言いきれるのかね?そこが見当違いでは上手く行かず、逆に不信を抱かせるぞ」


「心配は無用です。

 何故なら大海原は以前理事長に『彼女に惚れるな』と念を押されているそうです。惚れていなければ、そのような念を押すような事はしないでしょう。

 近くで見ていて楽しかったですよ。

 理事長にそう言われ、健気に抵抗して樹神に惚れないよう頑張る大海原の姿は。

 いくら抵抗しようが、俺が今まで散々大海原に仕掛けましたからね。

 彼女の魅了能力が相乗効果となって、今では完全に彼女の虜になってますよ」


(今まで一人でそのような事をしていたのか。もっと早くこちら側に率いれるべきだったな)


 教頭はこれを聞き、少々後悔した。

 帯刀の立場を判断しかねて敬遠していたが、もっと早く共闘すればかなり有利に物事が進んだに違いない。

 だが、それは過ぎた事であり、今は今後について話を進めるべきだ。

 教頭は帯刀に座るよう命じ、自分も腰をかけた。



「で、具体的にはどうするのかね?」


「樹神に用事を与え、出来る限り理事長や大海原と一緒にいる機会を増やします。そうすれば恋心に拍車がかかり、彼女を独占したいと思うようになる事でしょう」


「そんな簡単に行くとは思えないが……それに樹神君も急にそんな機会が増えれば怪しむはずだ」


「樹神はコンテストに優勝し、多少の自信をつけましたが、まだ自分が本当に生徒会の人間として相応しいのか悩んでいます。ですから少しでも役に立とうと必死になるはずです。

 しかも、色恋に暗い彼女は自分が二人に好意を寄せられているとは夢にも思っていない為、我々の狙いに気付く事なくやってくれるでしょう」



 名案ではあるが、彼女がそう簡単に思い通りに動くとは思えない。

 だが、帯刀は意地悪そうな笑みを浮かべた。



「御不安だとおっしゃるのであれば、彼女を俺の女にしましょう。

 そうすれば、樹神は生徒会より俺を選ぶようになり、こちらの駒となって動いてくれる事でしょう。

 女なんて馬鹿な生き物です。彼氏に嫌われたくなくて必死になる。そうなればどんな事でもやってくれますよ。」


「それこそ簡単にはいかないだろう」



 否定的な言い方に、帯刀はプライドが傷付いたように強い口調で言い切った。



「自慢ではありませんが、俺は今まで1度だってフラれた事がありません。その俺が本気で口説くというのに(なび)かないわけがありません!」


(自惚れすぎだな。所詮ガキという事か)



 ちょっとモテるからといって自分を過信し過ぎている。

 だが、確かに帯刀の顔は稀といっても過言ではないくらいの美形だ。

 しかも口説く女は平凡な女。

 高校生の女というのは、金より顔を重要視する傾向にあるらしい。

 ならば帯刀を彼氏に出来れば、最高のステータスを得たと自慢に思い手放そうとはしないはずだ。

 それこそ帯刀の言う通り、必死に繋ぎ止めようとなんでも協力するようになるかもしれない。



(うむ。悪くないな)



 教頭はその案に乗る事にしたが、念の為に帯刀に確認した。



「もし万が一、君が振られたとしても作戦に支障を来したりはしないだろうな?」



「フラれる」と言われ、帯刀は一瞬睨んだが、問題ないと答えた。


「これはあくまで保険です。保険が本来の目的に響くような事には絶対になりませんし、させません。どうか、安心して下さい」


「わかった。では、君に任せよう」


「ありがとうございます!!」



 帯刀は嬉しそうにそう礼を述べると、やや不安そうに確認した。



「それで、成功した暁ですが……」


「勿論、生徒会長には君を指名しよう」


「ありがとうございます!!」



 帯刀はようやく安心したような笑顔を浮かべると、生徒指導室を後にした。



「どうやら運はこちらに向いてきたようだな」



 帯刀の出て行った扉を見ながら教頭はそう呟くと、そうほくそ笑んだ。




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