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第88話:メイクの時間

 


 ☆


 保健室で医者から鎮痛剤を注射され生徒会室に戻ると、帯刀がメイク道具を広げて待っていた。

 凪は資料室で水着に着替えると、帯刀と越智が険しい表情で凪を見つめた。



「ボロボロじゃないか!?」



 肋骨を骨折するぐらいだからある程度覚悟はしていたが、腹部は赤黒い痣が広範囲に広がり手首にはロープの痕と擦過傷。太股の外側にも擦過傷があり、なんとも痛々しい。



「背中はそうでもないな。ビキニは止めてワンピースにしよう」



 帯刀は返却用の段ボールからボツにした水着を広げて、ブツブツと呟きながら、やがて一枚の水着を取り出した。

 腹部辺りでクロスしているクロスワンピビキニに見えるが、クロス部分以外のバスト下からヒップ上まではシースルーの肌色の布がついているので、腹部は完全に被われている。



「だまし絵みたいで気に食わないが、舞台の上でならウエストが露出してるように見える筈だ。だが、それでも隠しきれない箇所はメイクでカバーする。

 樹神、ここに座れ」



 帯刀は凪と向き合うと、複数のコンシーラーを使って痣消し作業に取りかかった。

 痛みの無いように気を付けてやってはいたが、凪としてはそれがくすぐったいのか、身体をびくつかせてはその動きで起きた痛みに顔をしかめている。



「よし、取り敢えず少しは隠せたな。着替えてこい」



 先程の水着を渡され、凪は再び資料室で着替えてきた。



「着てみると、案外悪くないな」


「悪くないっていうか、結構エロくないか!?」



 それは着た時に凪自身も感じていたので顔を赤らめた。



「残りの痣隠しと、顔を弄るから早く来い」



 帯刀は恥じらう凪を無視して、コンシーラーを再び駆使する。

 そして身体中にラメのパウダーをつけると、今度は顔に取りかかった。

 相変わらず見事な筆遣いで様々な色を落としていく。

 そして、凪らしい雰囲気でありながら蠱惑的な女性が出来上がった。



「蠱惑的。樹神にぴったりだろう?」



 満足気にそう言う帯刀に、越智は難色を示した声を上げた。



「身体のラメ、キツくないか?

 ライトの下だとかなりギラギラと光りそうだが……」


「いや、これでいい」



 そう言うと、帯刀は一枚の白い布を出した。

 細かいレースは近くで見ると肌が見えるが、舞台に立てば観客との距離があるので、シルエットが見える程度の透け方だ。



「これで全身を被うようにして登場しろ」


「……布で隠したら水着審査にならないんじゃ」



 不安そうな凪の意見に、帯刀は問題ないと首を振った。



「水着は着ているから問題ない。で、舞台上でだが……」



 帯刀は越智に聞こえないように耳打ちした。

 それを聞いた凪が耳まで顔を赤らめたので、越智が気になって口を開いた。



「て、帯刀。いったい凪に何言ったんだよ?」


「フッ。それは本番までのお楽しみだ」


「……うっ。そんな事を考えるなんて、帯刀先輩って実はエロい、んですか?」



 凪が恥ずかしそうに抗議すると、帯刀は面白そうに笑った。



「これでも健全な高校生なもんでね。普通に女の身体に興味ぐらいある。

 なんならそれについて特別に手取り足取り教えようか?」


「けっ、結構です!!!!」



 凪は思い切り拒否すると、布を手にして身体を隠した。



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