第59話:お城のような
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凪は、越智と紫藤に挟まれた状態で呆然と建物を見ていた。
そこは越智の家の筈なのだが、中世のお城を小さくしたような白亜の建物が聳えている。
そう、まるで某遊園地で見掛ける建物が、坂を巧く利用して建っている。
「あの……越智先輩の家、なんですよね?」
ようやく出せた言葉はそれだけだった。
その様子を紫藤は楽しそうに観察し、越智は恥ずかしそうに頬をポリポリ掻いている。
「……認めたくないが、あたしの家だ。あやめちゃんの趣味なんだ」
「あやめさん?」
初めて聞く名に首を傾げると、紫藤が苦笑しながら答えた。
「静香のお母様です。
とても明るくお優しい方なのですが、『おば様』や『お母様』と呼ぶと激しく怒られますので、凪さんも決して呼ばれませぬようくれぐれも注意して下さいね?」
名前を呼ばないと怒る親というのも珍しい。
一体どんな方なのだろうと首を傾げていると、越智が真剣な顔で凪に言った。
「凪。あやめちゃんがあんまりしつこいようなら拒絶してくれ。無理に合わせなくていいからな」
一体なんなのだろうか?
凪はやや不安に感じながらも頷いて、越智邸にお邪魔した。
そして、その瞬間越智が頭を抱えた。
「なんで待ち構えてるんだ……?」
目の前には30前の女性が、目をキラキラさせて立っていた。
「まぁ!まぁ!まぁ!あなたが樹神凪さん?」
「はい。突然すみません。これから10日間お世話になります」
「私はあやめよ。あやめちゃんって気軽に呼んでね!」
(え!?ということは、越智先輩のお母様!?お姉さんじゃなくて!?)
凪は驚いて紫藤を見ると、彼は苦笑しながら頷いた。
(20代にしか見えない……)
これほど若いなら『おばさん』なんてとても呼べるわけがない。
凪はそう感じつつ口を開こうとしたら、いきなり手を引かれて彼女はあっという間に拉致された。
「……早速か」
「あやめさんにとって最高のご馳走ですからね。でも、内心楽しみだったりしませんか?静香」
面白そうにそう言われ、越智はニカッと笑った。
「では、僕達はリビングで待っていましょう。今日の為に面白いお茶を用意したんですよ」
「面白い?」
「ええ」
そう微笑みながら、紫藤は越智の手を自分の手にそっと乗せた。
「さぁ、行きましょう」
「あ、あぁっ」
クリスマスパーティー以降、完全に立場が逆転した二人の立ち位置に越智はまだ慣れずに顔を仄かに朱に染める。
紫藤はそんな彼女を満足そうに見ながらリビングへと歩き出した。
短いのであと一話追加します




