第58話:護衛
帯刀はそんな浩樹の様子に呆れながら続けた。
「分家の婿養子だって実力を認められれば総統になれる。ならば、総統になる為に必要なポストである理事長の椅子を狙うのは当然だろう?
そして理事長の座を得るにはあの男を降ろさなければならない。だが、変に手を出せばお前が何をするかわからん。
安全に事を進めるなら、樹神を狙えばいい。
そう思うのは自然な事だろう」
その意見を浩樹は否定した。
「凪は関係ないだろう!?」
何故凪が安全だと思うのだろうか?
浩樹にとって凪はどこまでいっても庇護対象であり、か弱い少女を狙う馬鹿はいないと信じきっているらしい。
帯刀は強烈な目眩を覚えながら、説明した。
「樹神の魅了能力侮っているのか?お前は。理事長とお前は樹神と仲がいい。
それだけじゃない。生徒会全員を見事手懐け、更には男子寮の寮長まで手懐けた。
将来性の高い人物ばかりが何故か樹神の味方に付く。
それを見てきた教頭が何も感じないとでも?」
浩樹は身動ぎしながら言葉を詰まらせた。
帯刀はそれに構わずに続けた。
「樹神がお前や理事長側に付けばどうなる?将来的に非常にマズイ事になるに決まっている。
俺達は社会人になったら恐らくバラバラになるだろう。
だが、樹神がいればそうはならない。
もしお前や理事長の身に何かが起きれば、樹神が動く。樹神が動けば、それを手助けしようと俺達が動く事は間違いない。
ならば、樹神を今のうちに自分側に招くか若しくは排除する。
俺なら間違いなくそうする。
お前が樹神に対してどう感じているか判らんが、彼女は重要なキーパーソンになっている。
その事を念頭に置いておけ」
帯刀は苛立たしげに溜息を吐いて、浩樹を睨み付けた。
浩樹はそれでも全面的に受け入れていないようだったが、念頭に置く事を約束した。
「では、まずは教頭達の周辺を調べて凪には護衛を付ける。護衛をといっても、冬休みで正月をここで過ごす者は俺達の中に存在しない。
だから越智に連絡した。
冬休みが終わるまで、樹神を預かってもらう事にした」
「大丈夫なのか?」
越智にとっては良くても、その家族には迷惑にならないだろうか?
浩樹はそう懸念したが、帯刀は苦笑しながら「問題ない」と答えた。
「越智の家は大きいし、ゲストルームは沢山ある。
それに、前田の母親にとっては樹神はジャストタイプだからな。樹神が嫌がっても、離しては貰えないさ」
その自信が何処から来るのかは理解出来ないが、他に方法がないので浩樹は受け入れる事にした。
本日2話目。短いです。




